「あなたは無人タクシーに乗れますか?」と題する記事が公開された。中国のAI無人技術の進展を検証する内容だ。Google系Waymo(ウェイモ)社が2018年中にも無人運転タクシーを実現させるといわれている中で、中国の進展ぶりはどの程度なのだろうか。ニュースサイト「騰訊網」が伝えたところから検証してみよう。

中国政府のスケジュール

中国経済,AI,人工知能
(画像=PIXTA)

中国では、まもなく国務院から「新一代人工智能発展計画」が発表される予定だ。AI技術発展のスケジュール表である。

2020年
・ 人工智能総体技術と応用で世界先進水準に並ぶ。
・ 人工智能産業を新しい経済成長エンジンとする。
・ 人工智能の技術を応用し、民生の改善への途を開く。

2025年
・ 人工智能の基礎理論の重要部分をブレイクスルー。
・ 部分技術とその応用で世界をリード。
・ 人工智能で産業全体のレベルアップ、経済構造改革の主動力に。
・ スマート社会の建設と積極的進展。

2030年
・ 人工智能の理論、技術とも世界の最先端に立ち、イノベーションの中心に。

という戦略を描いている。もちろん掛け声だけでは、グーグルには勝てない。実際に中国のAI、無人技術はどのようなレベルにあるのだろうか。

ネット通販大手の無人化戦略

●京東(JD)の無人航空物流

2月上旬、中国民用航空局西北管理局は、京東に対し「陝西省無人機航空物流多式聯運創新試点企業」を委託した。これにより京東は、中国初の省域全体で無人機物流配送を行う国家級試点企業となった。逆にいえば、陝西省は世界初の無人機物流のモデル地区となったのである。

京東創業者の劉強東は、ここ2~3年のうちに1万を超える無人機の飛行場を建設する、と表明した。それにより中国は世界最先端の無人機ネットワークを持つことになる。消費者は、あらゆる商品を24時間以内に手にすることができるようになる。

●アリババの無人スーパーと無人物流

販売員もレジ係もいないスーパー。アリババの無人スーパーはすでに多くの人を驚かせた。支付宝(アリババのモバイル決済)をスキャンさせて入店する。帰るときは二つの“決算門”を通過する。第一門で顧客情報を収集し、第二門で決済を行うスタイルである。

アリババは、倉庫物流も無人化の方向を明確化させた。グループ物流の頭脳を担う菜鳥網絡では、入出庫を自動で行う倉庫を稼働させ、無人自動化を実現させている。

百度の無人運転は“苦難行軍”?

●百度の無人運転

百度(バイドゥ)の無人運転Apollo計画は、昨年、国家AIプロジェクトの指定を受けた。しかしウェイモ社がアリゾナ州で、数千台の無人車で公道試験を繰り返している、というような派手なニュースは聞こえてこない。今年に入ってからは、1月にラスベガスで開発者大会を開催したという話題くらいしかない。あとは昨年の報道内容の繰り返しだ。記事は現況を“苦難行軍”と表現している。組織的な反攻が必要、頑張れと呼びかけているのだ。

●滴滴出行とファーウェイは焦慮

さらに記事は、こうした状況に、配車アプリ最大手の滴滴出行やスマホ製造の華為(ファーウェイ)が焦慮中と指摘している。ウェイモ社は無人運転とライドシェアをセットで考えている。もし中国でもグーグル系技術が採用されるようなことになれば、ライドシェアだけでなく、レンタカー、タクシーまであらゆる場面にまで影響が及ぶ。その力はUberの比ではない。新しい機器の供給をもくろんでいたファーウエイにも大きな痛手となる。

世界最大の無人技術実験場?

新技術と新産品の更新は、スピードを増すばかりである。今後は、現在2次元であるQRコードが、三次元、四次元となるような高レベルの競争である。不確定性が充満しており、一歩進めば幸福、一歩退けば黄昏、と取られてしまう。いちいち惑うことなく中国企業は戦略思考を忘れるなと結ばれている。

中国の商業と物流の無人化の進展は、おそらく世界最先端である。大手だけでなく、ベンチャーの手による新しいコンセプトの無人店舗が続々と誕生している。ニュースには事欠かない。

それに対し、無人運転は一歩遅れを取っているようだ。安心して“国内の”無人タクシーには乗る段階ではない、記事タイトルには、そんな意味も込められているのかもしれない。

しかしいずれにしても中国は、世界最大の無人技術“実験場”であるのは間違いない。米国同様またはそれ以上によくウォッチしておくべきだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)