中国ではこのところ高速鉄道のニュースが相次いでいる。上海協力機構首脳会議で訪中したロシアのプーチン大統領が、高速鉄道に乗車する様子を大きく報じた。さらに無人走行実験に成功した。中国鉄路総公司の子会社に、IT大手、自動車大手が出資した――などである。「央視網」「界面」など多くのメディアが伝えた。これらは連動しているのだろうか。

プーチン大統領が乗車

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(画像=PIXTA ※写真はイメージです。)

ロシアのプーチン大統領は6月上旬、北京から天津行きの高速鉄道に乗り込んだ。時速300キロの感想を求められると、一種のロマンチックな感覚だと述べたという。中国におけるプーチン大統領の人気は高い。強腕は頼もしさであり、マイナス要素ではない。これ以上望めない強力な宣伝マンとなってくれた。

そのロシアでは、現在モスクワ―カザン間に中国の参与する初の高速鉄道を建設中である。将来その路線は、北京まで延伸されるはずだ。中国には技術があり、ロシアには需要がある。中露高速鉄道提携の未来は大きく開けている。

現在の中露関係では、長年の風雨は収まっている。米国の経済制裁等の圧力による、いわば当然の結果である。米国に感謝すべきかもしれない。中国の高速鉄道にとって国内外への強力なアピールとなったのは間違いない。

無人運転テスト

無人運転もそうした宣伝活動の一環かもしれない。6月上旬のほぼ同時期に、京沈(北京-瀋陽)高鉄の瀋陽-黒山間で走行テストが行われた。テスト用の編成は、試験区間各駅の停車、扉の開閉、発車等を自動制御で行った。最高速度は350キロに達した。中国鉄路瀋陽局の運転士は乗車していた。しかし無人運転と変わらなかった。操作は何もせず、計器を監視していただけ、両手は解放されたと語っている。

中国鉄路総公司の責任者は、無人運転テストは9月末まで継続する。テストの成果は、北京-雄安新区(北京の南100キロ、今最も注目を集める国家級新区)間に建設するスマート高速鉄道に生かされる予定だ。

そしてすでに中国高速鉄道では、広東省の東莞ー恵州間、佛山ー肇慶間では、時速200キロレベルの自動運転を実現している。目下の運行状況は良好という。

吉利自動車、テンセントが出資

同じく6月上旬、IT大手の騰訊(テンセント)と吉利控股(GEELY、自動車大手)は、中標動車網絡有限公司の株式49%を取得したと発表した。投資額は43億元(約740億円)吉利39%、騰訊10%の比率である。

同社は、中国鉄路総公司の傘下で、唯一の列車Wi-Fiを扱う会社である。総公司が中央政府の鉄道改革要求にこたえ「インターネット+鉄路」の発展戦略を推進するため、昨年末に設立したばかりだ。

何しろ中国の高速鉄道営業キロ数は、2万5000キロ(2017年)に及ぶ。これは全世界の66.3%を占める。旅客数は17億1000万人に達した。

騰訊と吉利控股は連合体として、高速鉄道のインターネット業務を請け負う。そしてインターネット接続の安全性、ビッグデータ、AIなどの能力を高度化させていく。鉄路総公司と協力して新しいプラットフォーム建設を目指す。乗客にはまったく新しいWi-Fi体験を提供するという。

騰訊の創業者兼首席執行官・馬化騰は、デジタル・チャイナの建設、時代を変革する機会を得た、と手放しの喜びようである。

中国の高速鉄道は、宣伝活動、AI化とも、順調に進化しているようだ。無人運転はパフォーマンスとしても、それなりのインパクトはある。輸出のライバル日本は、座視しているわけにはいかないだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)