増加する訪日旅行者を取り込め

市街地の空港型免税店と言えば那覇市内にはありましたが、東京都心で開店することでより多くの訪日外国人の消費を取り込めると考えられています。免税事業のノウハウを取り入れることで、訪日外国人や出国する国内の旅行者の利便性を高め、新たな消費需要を掘り起こすことが狙いとなります。

「JAPAN DUTY FREE GINZA」の店舗は三越銀座店の8階のフロア全体を利用し、約3,300平方メートルを占めます。主な品揃えとしてはラグジュアリーブランドの衣料品、宝飾時計、化粧品などを予定しており、初年度の売り上げを100億円見込んでいます。また、次年度以降は130億円の売り上げを目指すとしています。

「JAPAN DUTY FREE GINZA」が取り込みを狙っている訪日外国人旅行者ですが、彼らは何故増加しているのでしょうか。特に銀座では、35度を超える猛暑であっても、三越銀座店で外国人観光客が注目していたのは毛皮のムーンコート等でした。同店では全館で「ぎんざみやげ」と呼ぶ催事を行い、外国人観光客への売上を前年比で3倍ほどに拡大しています。

とくに目立ったのは、三越伊勢丹ホールディングスの全百貨店売上高が消費増税の反動で、前年同期比で5.6%も落ち込んだにもかかわらず、外国人観光客で賑わった銀座店だけが2.3%増だったのです。 同店によれば、以前はバッグや腕時計といった高級ブランドが人気でしたが、現在は婦人服や化粧品、ベビー服へと対象範囲が広がり続けています。

このように増加している外国人観光客ですが、1-6月では626万人と過去最高を記録しています。この背景にはビザの緩和、円安、航空便の新規就航や増便が有った他にも、国内での世界遺産の登録数が増えたことや、2020年開催の東京五輪で東京への興味が強くなったことなども影響していると考えられます。そして前述の通り、これまでと外国人観光客が質的に変化しているのは、高級ブランド以外の幅広い商品を購入する傾向が出てきていることでしょう。

例えば靴小売店最大手のABCマートでは、外国人観光客が多い店舗が売上を伸ばしており、特に女性用スニーカーのブームが起きているといいます。また、ドラッグストア最大手のマツモトキヨシに至っては、店自体が中国人観光客の観光スポットにすらなっており、化粧品や日本でしか変えないアイテムが人気となっています。スポーツ用品大手ゼビオの子会社のヴィクトリアでも外国人観光客がゴルフ用品やバドミントンセットなどを一人で複数を購入するまとめ買いが多いといいます。このような増加する外国人観光客と彼らの旺盛な購買意欲を「JAPAN DUTY FREE GINZA」も取り入れるのが狙いとなります。


各社の意気込み

これまでの空港型免税店は、空港会社が運営しているため、市中の顧客を取り込むという展開はしてきませんでした。しかし国が制作として観光立国を掲げたことで、異業種が組むという動きが出てきました。日本空港ビルデングの鷹城氏は、市街地に免税店を設置することが、訪日外国人へのおもてなしの一つになると語っています。

三越伊勢丹の大西氏は、三越銀座店の年間売上約700億円の内、約7%が外国人であることを挙げ、最高の市中免税店を作ることに意欲を見せています。また、観光客が1,000万人を超えたことで、銀座にも多くの外国人観光客が訪れているとし、日本の良い物を買って下さいと誇りを持って言える店作りにしたいとも語っています。NAAリテイリングの蒲生氏は、出国時間に追われること無くショッピングを楽しめることで、訪日外国人の利便性向上に市中免税店が役立つ事を語っています。


銀座という立地

沖縄を除けば日本で初めて市中の空港型免税店となる「JAPAN DUTY FREE GINZA」は、世界に類を見ない市中免税店モデルで、快適かつ趣のある新しい買い物体験を提供することを目的とし、世界最高レベルの品揃えを目指すとしています。デパートの多彩な商品を取り扱うノウハウと、空港会社の複雑な関税処理のノウハウを融合させることで、「JAPAN DUTY FREE GINZA」の出店が可能になったと言えます。

日本を訪れる外国人旅行者の数は、過去最高のペースで増加しており、銀座にも買い物を目的として訪れる外国人が増えているため、関係者らは、ここに空港型免税店を開くことで、外国人の需要が取り込めると踏んでいます。さらに銀座の店舗であることで、空港の免税店での買い物時間の制約や品揃えの制約を受けないため、それらの面でもメリットが大きいと考えられています。

三越伊勢丹の大西氏は、銀座4丁目の角という好立地で商売している以上、売上を現在の700億円から1000億円を目指すべきだと述べ、そのためにも市中免税店で増加している外国人のシェアが10%を超える店作りができると期待していると述べました。

【関連記事】
訪日率トップ!!中国人富裕層が日本を好むワケとは??
外国客を狙え!過去最高を記録した訪日観光と各業界の動き

photo credit: wallyg via photopin cc