韓国でキムチの貿易赤字が拡大している。2017年の輸入量は27万5631トンで、輸出量2万4311トンの10倍を超え、貿易赤字は関税庁が統計をはじめて以来最大となる4728万5000ドル(約52億円)に達している。
安価な中国産キムチの輸入が拡大する一方で、最大の輸出先である日本向けの落ち込みが大きく、キムチを漬けずに購入する消費者も増えており、「キムチ」文化は縮小傾向にあるようだ。
輸入増加も日本向けが激減
キムチの貿易収支は韓国関税庁が統計をはじめた2000年は7864万5000ドルの黒字だったが、中国産キムチの輸入が伸びて、06年にマイナスに転じた。09年には黒字となったが、翌10年には再びマイナスとなり、赤字の拡大が続いている。09年は中国産粉ミルクにメラミンが混入した事件が発生し、食の安全に関する関心が高まった年だ。10年に365万9000ドルだった貿易赤字は、16年には11.6倍の4258万5000ドルとなっている。
07年以降20万トンから22万トン前後で推移してきた輸入量は、16年に25万トンを超え、韓国農水産食品流通公社は(aT)は、韓国の外食や給食業者の間で安価な中国産キムチが広がったためと分析する。
韓国産キムチの17年の輸出単価は1キロあたり3.35ドルで、輸入単価は0.47ドル。韓国の飲食店は、キムチは無料サービスが基本で、何杯でもおかわりができる。売上が減少する一方で、食材や人件費などのコストが増加している飲食店が安価な輸入キムチを選ぶのは自明の理である。
輸出の減少は、最大市場である日本向けの落ち込みが大きい。2万トン台で推移してきた日本向け輸出は、10年には輸出全体の84.2%を占めていたが、16年には1万4000トンを割り込むまで激減した。米国、香港、台湾、オーストラリア向けが増えてはいるものの、日本向け輸出の減少には及ばないのが現状だ。
キムチを漬けない主婦が増える
キムチを漬けない人たちも増えている。キムチは韓国の食事に欠かせない醗酵食品で、韓国文化財庁は17年11月、キムチ漬けを国家無形文化財第133号に指定した。
キムジャンと呼ばれる10月後半から11月に、家族などが集まってキムチを漬ける風習があり、ソウル市などの自治体は福祉施設に提供するキムチを漬けるイベントを開催している。GSカルテックなど韓国企業はもとより、韓国トヨタも社員が漬けたキムチを福祉施設に提供するボランティア活動を実施する。
キムチを漬けるキムジャンは韓国人にとっては一大行事だが、この時期の販売量が増えており、インターネット通販大手TMONが17年10月1日〜11月19日の販売データを分析したところ、キムチの売上が前年同期と比べて25%増加していたという。
購入者は40代が全体の36%で、30代34%、50代14%、20代13%の順と続いており、キムジャンを主催する中心世代の40〜50代が半数を占めていた。
キムチ作りは重労働な上、費用もかさむ。韓国農水産食品流通公社によると、4人家族の目安とされる白菜20玉のキムジャン費用は、食材を市場で購入すると22万4160ウォン(約2万9000円)で、大型スーパーで購入する場合は24万5340ウォンかかる。TMONの20玉分に相当するキムチの販売額は16万7500ウォンで、自ら漬けるよりはるかに安い。
市販キムチは400〜500グラム入りの売り上げが最も大きく、小容量製品の増加率は97%に達している。1〜2人世帯が増え、大量に漬けこんで高額なキムチ冷蔵庫を買うより、必要なときに必要な分だけ買うほうが経済的と考える人が増えているのだ。(佐々木和義、韓国在住CFP)