中国では、中国移動、中国聯通、中国電信の3社を、電信の“三大運営商”と呼ぶ。日本のNTT(ドコモ)、au(KDDI)、ソフトバンクに相当する。経済サイト「中商情報網」が、三大運営商の2017年の成績評価と今後も見通しを報じた。5G時代を見据えた中国の電信界を見てみよう。
三大商の運営状況
中商産業研究院のデータによると、直近の成績は、以下のようになっている。
17年12月(カッコ内は17年)…… 中国移動/中国聯通/中国電信
移動用獲得顧客数…… 325.3万(8.872億)/282.4万(2.842億)/212万(2.499億)
4G獲得顧客数…… 1561.6万(6.495億)/443.8万(1.749億)/474万(1.82億)
ブロードバンド獲得…… 254.8万(1.127億)/96.4万(7654万)/66万(1.335億)
固定電話獲得数…… ――/61.7万(5999万)/53万(1.218億)
中国移動にはその名の通り固定電話設備はなく、身が軽い分は有利である。そして固定電話は2億にとどいていない。日本人には考えにくいが、固定電話が低所得層まで拡がる前に、携帯時代が訪れたためだ。以下各社別に分析してみよう。
2018年それぞれの課題
中国移動……4G顧客の増加スピードが速い。12月の1561.6万は、11月の3倍である。しかしブロードバンドでは中国電信にまだ2000万の差を付けられている。そしてこの部門では低価格競争になると、すでに設備のある聯通や電信に逆にかなわない。しかしネット全体の品質とサービスを向上させるにはブロードバンドは不可欠だ。中国移動の固定ネットワーク建設がどう進展するかは、2018年の電信界焦点の1つである。
中国聯通……12月の4G顧客獲得数は前月比で下降し、勢いがなくなってきた。騰訊(テンセント)と組んだ流量がお得になる「王カード」は威力を発揮し、5000万の顧客増につながった。しかし基礎的設備の弱さは、克服されていない。それは12月のブロードバンドの獲得顧客数が、前月比減少しているところにも表れている。5G建設投資の負担があるにしても、設備の脆弱(ぜいじゃく)さはいただけない。
中国電信……激烈な市場競争の中にあって、比較的安定している。いずれの部門も緩やかな拡大を継続中だ。中国電信は、4Gの市場シェアを2014年の7.1%から、昨年は18.1%にまで上げた。また6種の規格に対応する“六模全網通”の展開には最も熱心で、通信流量の減少に貢献している。ブロードバンドでは、開発、サービスの強化で、トップの地位を固める。
5Gへの戦い
5Gの実用化は、2020年後半に予定されている。三大運営商にとって、ここでの出遅れは命取りとなる。現時点でのネットメディアの短評を見てみよう。
中国移動……2つの取組がある。提携7社とともに、5大都市で500カ所規模の中継ステーションを建設する。もう一つは提携20社とともに12都市でやはり500ステーションの計画だ。計画は最も進展している。
中国聯通……北京、天津、上海、深セン、杭州、南京、雄安、の7都市で5G試験が進行中である。上海と深センではすでに拠点の建設が終わった。しかし、工信部と国家発展改革委員会からは、試験都市を増やすよう叱咤されている。
中国電信……中国電信の5G試験は“18歳成人”一歩手前の第三段階に達している。専門家集団が計画に沿って試験と検証している。試験には自前のハードとプラットフォームを使用している。
中国移動が関連各社とチームを組み、開発を先行させ、中国電信は、自前設備を利用してそれを追う、という感じだろうか。中国聯通は何かにつけ中途半端イメージのようだ。いずれにせよここ3年で、三大運営商の運命が決まるのだろう。注目すべき桁違いの大激戦である。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)