全日本コーヒー公正取引協議会とは

ネスレ日本が使用している「レギュラーソリュブルコーヒー」という名称を認めなかった全日本コーヒー公正取引協議会とは、コーヒーに関する表示ルールを自主的に定める業界団体です。同協議会は、消費者庁、公正取引委員会から認定されており、設立の目的を、公正競争規約の適切な運用を図ることとしています。

具体的には公正競争規約の周知徹底を図ったり、不当景品類や不当表示など、公正取引に関する法令への違反防止を行い、違反の疑いがあれば調査するというものです。ただし、同協議会の規約から外れた行為があっても、必ずしも不当表示防止法や公正取引に関する法令への違反になるとは限りません。また、今回のネスレ日本のように、同協議会で認められなかった名称でも、退会すれば使用できるため、拘束力が弱いと言えます。


独自製法の表示への拘り

コーヒー業界では、消費者がコーヒー豆を直接挽いて作った「レギュラー」と、抽出液を乾燥して粉末にした「インスタント」を明確に識別できるように表示する、というルールがあります。ネスレ日本が今回使用することに拘った「レギュラーソリュブルコーヒー」とは、コーヒー豆を微粉砕して、抽出液と混ぜて乾燥させ、コーヒーの粉に封じ込めるという製法です。

そのためネスレ日本では、この製法で製造した製品を、「レギュラー」でも「インスタント」でもない新しいジャンルであると位置付け、「レギュラーソリュブルコーヒー」という呼び方を採用しました。「レギュラーソリュブルコーヒー」という製法名称は2010年から一部の商品に使い始め、現在では主力製品である「ゴールドブレンド」など、「インスタント」と表記してあった商品全てに使用しています。


団体への復帰求める声

ネスレ日本というコーヒー大手が複数の業界団体を退会したことは、業界に波紋を広げました。同じくコーヒー大手の味の素ゼネラルフーヅ(AGF)の横山敬一社長は、「世界のコーヒーのリーダーであるネスレが脱退することは、日本のコーヒー業界の痛手」だとしてネスレ日本の復帰を求めています。AGFもコーヒー豆を超微粉砕してインスタントコーヒーに封じ込めた商品を販売しているが、製法名称は「インスタント」として販売しています。

また、全日本コーヒー協会の関係者は、ネスレ日本が全日本コーヒー公正取引協議会で、反論すること無く突然退会したことに対して、突然の行動であると批判しています。しかしネスレ日本の渡辺正人常務執行役員は、退会したことについて、革新的な技術で開発した商品を消費者に広めるため、と説明しています。最大手であるネスレ日本が独自路線を歩むことになったコーヒー業界は、今後どのように存在感を示していけるでしょうか。

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