働き方改革を掲げながら、本当の意味で働き方を変えられる企業は国内に一体どれだけ存在しているのでしょうか。
2017年、厚生労働省が企業向けに行ったセミナー「働き方改革の背景と取組の実際」の参考資料によると、国内企業では年間所定外労働時間は平均132時間、年次有給休暇取得率は約48%となっています。
いまだに多くの企業で残業が強いられ、有給休暇も気軽に取得できないのが当たり前。そんな現代の労働事情に逆行する企業が岐阜にありました。社員は日本一幸せといわれる「未来工業株式会社」の取り組みに迫ります。
未来工業は当たり前が通じない
岐阜にある未来工業株式会社は、電設資材や管工機材を製造・販売している企業です。製品は高いシェアを誇り、創業から赤字なしという優良企業。
そんな同社では、国内企業で習慣とされていることを強制していません。例えば「ホウレンソウ」。上司に報告、逐一連絡、何かあったらすぐに相談、入社初日に先輩や上司から口酸っぱく言われた新入社員も多いことでしょう。しかし未来工業では、ホウレンソウは禁止されています。そして「部下への命令」と残業も、この会社ではよしとされません。
とはいえ、報告・連絡・相談がなく仕事は進められません。あくまでも社内キャンペーンとしてのホウレンソウは禁止し、社員が自主的に動ける環境を作り出している、ということです。残業も完全にゼロではありませんが、極力残業にならないよう社員は努力しなければいけません。
残業をする社員はいい社員、という風潮がいまだ国内企業に多く見られる中で、未来工業は以前から「効率を上げて残業を減らす」という方向に進んだのですから、とても先進的な考えを取り入れていた企業だったことが分かります。
未来工業創業者の名言とおもしろい制度
残業なしで経費を削減し、利益が出れば社員に還元する。未来工業の創業者である故・山田昭男氏は、「社員をコスト扱いするな」「会社は社員を幸せにする場」「日本人の正直さを信じる」などさまざまな名言を残しています。
同社では、社員が業務やサービスの改善提案を行うことで1案あたり500円支給するという制度を採用しています。現代では嫌われる社員旅行も、ここでは5年に1度開催され、行先は海外、もちろん費用は全て会社が支払います。
また未来工業には、タイムカードがありません。出張の計画も社員が自分で立て、社員食堂の利用料も自己申告制です。社員の正直さを信じ、自主性を重んじる未来工業の社風は、一朝一夕で作られたものではなく、社長は社員のことを考え、社員は会社のことを考える、その努力の結果によって生まれたものなのでしょう。
新社長が描くこれからの未来工業
「日本一のホワイト企業」と呼ばれる未来工業株式会社は、最初からホワイト企業になることを目指していたわけではありません。企業にとって何がベストなのかということを、経営陣だけではなく社員一人一人が考えてきたことが今に繋がっています。
2013年、それまで未来工業の子会社で社長を務めていた長男の雅裕氏が新社長に就任しました。社長が変われば会社も変わる。ところが企業にとって大きな転機となる代表の交代後も、未来工業のスタイルは変わりませんでした。これからも未来工業らしさを貫き、独自色を深化させるため、新社長はこれまでと同じように「ほかにはないもの」を追い続けています。
1965年、先代社長が劇団仲間と立ち上げた未来工業。「よそにはない、工夫を必ず加えよう」を合言葉に独自路線をひた走った同社は、今でも「常に考える」をスローガンにすべてのアイディアを大切にしています。
失敗を恐れずチャレンジし、トライ&エラーを繰り返す、その中で生まれた成功の集大成こそが同社を「社員が日本一幸せな会社」へと築き上げていったのでしょう。(提供:JIMOTOZINE)