日本株とドル円相場に大きな影響を与えていた外部要因は落ち着き始めた。先週は、トランプ大統領が輸入制限の関税案に署名やコーンNEC委員長の辞任などのネガティブ要因があったが、株式市場は下値抵抗力が出てきたのか下落せず、むしろ朝鮮半島のデタントと雇用統計を好感してリスクオン、NYダウは週間で797ドル高と3.3%上げた。ドル円も5日には一時107円台を回復した。

ただ、日本の政治的混乱という新たなリスク要因が浮上した。「森友文書」を財務省が書き換えていたことを認める方針が決まったとの報道があった。事件との関連性は不明だが、国税庁長官は辞任、財務省近畿財務局の森友担当者が自殺している。

週初からの国会は混乱が必至だ。外国人投資家は政治的な混乱を嫌うため、内閣解散や重要閣僚の退任といった事態に発展すれば株式市場も混乱する可能性が高い。

米株に比べて日本株の戻りは明らかに出遅れている。原因は外国人投資家や国内機関投資家の売り圧力が強いからだろう。今週の日本株は外部要因の改善を受けて出遅れ修正となるか。

政治懸念で上値が重い展開になるかを見極める週となるだろう。為替は株価を見ている状況なだけにまずは株の動向を見極めたい。

株式展望(3/12〜3/16)

経済見通し,経済統計
(画像=PIXTA)

今週(3/12〜3/16)の日経平均は2万1300円から2万2000円のレンジを想定している。

米国株が堅調に推移していること、ドル円が107円をうかがうレベルであること、北朝鮮の地政学リスクの改善など外部環境の好転から、9日夜間の日経平均先物は300円以上上げており、週初の日本株はギャップアップして始まるだろう。

波乱要因とされた3月のメジャーSQを9日に無事終え、日本株も2月14日と3月5日でダブルボトムが入った可能性が高い。下値は5日移動平均線である2万1300円がサポートとなりそうだ。上値は25日移動平均線の2万1752円がレジスタンスとなる。しかし上に抜けたとしても、2万2000円から上値は重い展開を予想する。

先週(3/5〜3/9)の日本株は反発、日経平均は週間で287円56銭(1.4%)高の2万1469円20銭で商いを終えた。ただ、米株に比べて日本株の戻りは遅い。NYダウは、27日に一度下げ幅の75%戻しを達成し、2番底を3月2日に付けた後、9日の引けで61%の戻りとなっている。ハイテク比率の高いナスダック総合指数は9日に1月26日につけた過去最高値を更新し、すでに2月前半の急落を埋めた。 一方、日経平均は9日引けでの戻りはまだ17%に過ぎない。

先週の日経平均は、5営業日のうち6日、8日、9日と3営業日で前日比プラスだった。ただ、堅調なNY株式市場を反映してギャップアップして始まっても、寄り付きと引け値を比較すると6日に唯一27円だけ上げ陽線となったが、残り4日は引け値が寄り付きを下回る陰線となっている。

繰り返しになるが、売り方は外国人投資家と国内機関投資家だろう。つまり、海外外部要因で上げ、国内の需給要因で下げる展開となっている。3月2日の週は、外国人投資家が8週連続の売り越しで3484億円売り越し、国内投資家では年金運用の手口が出る信託銀行が267億円の売り越しだった。先週も、外国人と3月期末を迎えた国内機関投資家の決算対策の売り観測がでている。安値をつけた5日の午後には日銀のETF買い735億円が執行されたが、それでも陰線となり、押し上げるだけのパワーはなかった。

2月の米国発の株価急落は、2月2日に米長期債利回りが4年ぶりの2.8%まで上昇したことがきっかけだった。それに拍車を掛けたのが2月3日発表の米1月の雇用統計で、平均時給が前年同期比2.9%増と09年以来の高い伸びとなり、米国S&P500指数のボラティリティ指数であるVIXが急騰したことがリスクオフに拍車を掛けた。それだけに9日発表の米2月の雇用統計に注目が集まった。

非農業部門雇用者数は31万3000人とコンセンサス予想の20万5000人を大幅に上回り、16年7月以来の大きな伸びとなった。焦点の平均賃金は前年同期比2.6%増と前月の2.8%増から減速した。17年の株式市場を上げる要因となった理想的なゴルディロックス(適温)相場が戻ってきた。9日はリスクオンで、NYダウは連騰で440ドル高、ドル円は一時107円台、日経平均先物の夜間取引は2万1690円と9日の大阪引け値から340円上げている。

週間為替展望(3/12〜3/16)

今週(3/12〜3/16)のドル円は106円27銭から107円67銭のレンジを想定している。

海外外部要因が改善してきており、大きなリスクオフ局面は落ちつきつつある。今週は日米金利差拡大の思惑で円安を試しに行く可能性が高そうだ。ドルのサポートは5日移動平均の106円27銭、レジスタンスは2月27日の戻り高値107円67銭だろう。もっとも、今の為替市場は株式市場の動向を見ながら動いているだけに、米国株や日本株が波乱の展開となればリスクオフの円安が再開する可能性もある。その場合は3月2日のドル安値105円25銭が次のターゲットとなるだろう。

先週(3/5〜3/9)の東京為替市場で円は反落、東京インターバンクの9日17時のレートは前週末比95銭の円安で106円70銭だった。

5日にドル円は105円35銭の週間安値をつけた。トランプ大統領が鉄鋼やアルミに対する輸入関税を36年ぶりに課すとの報道から、ユーロや中国の対抗措置などで世界の保護貿易化が進むとの懸念が広まり、有事の円高となった。

イタリア総選挙で与党が議席数を減らし、どの政党も過半数を維持できなかったことも円高要因だった。もっとも5日のNY市場では、米2月ISM非製造業総合景況指数が予想を上回り、米議会が輸入関税計画を進めないようトランプ大統領に進言したとの報道もあって警戒感が薄れ、6日の東京市場ではドル円は106円47銭まで戻した。

7日にはトランプ大統領の側近で鉄鋼とアルミの輸入制限に反対していたコーン米国家経済会議(NEC)委員長の辞任の意向が伝わり、円は午前中には105円45銭まで買われた。 だた、午後に日銀副総裁となる若田部候補と雨宮候補の所信表明があり、黒田総裁が2日に「2019年ごろに物価目標達成なら出口を検討」と発言したテーパリングとも思える発言に対する火消し的な発言を行ったため、円安となり106円17銭まで戻した。

7日には、輸入制限からカナダやメキシコを除外する可能性があると伝わった。米2月ADP雇用統計が予想を上回ったこともあって、円は反落8日の東京市場では一時106円21銭をつけた。

9日の東京為替市場ではトランプ大統領の輸入制限がカナダとメキシコを外し、日本など同盟国についても適用除外に拡大するとの報道があり、日本株が一時500円高とギャップアップして始まった。東京為替市場でも円は106円43銭の円安で始まり、トランプ大統領が米朝首脳会談を受諾、5月までにも行うとの報道で円は一段安となり106円99銭と週間安値を付けた。

9日の米雇用統計では非農業部門雇用者数が予想を上回り、平均時給の伸びが鈍化したことでNY為替市場では一時107円05銭と3月1日以来の107円台を回復し、106円85銭で商いを終えた。前日比では60銭円安、東京為替市場の17時比では15銭の円安。株高の割にはそれほど円安の反応は限定的だった。今週も株式市場を見ながらの展開になりそうだ。13日のCPIや国債入札になど、金利を左右するイベントには注目したい。

今週のイベント・経済指標】

日本 12日 法人企業景気予測調査、工作機械受注 13日 国内企業物価、5年国債入札 14日 1月の日銀金融政策決定会合議事要旨、機械受注 15日 首都圏新規マンション販売、20年国債入札

海外 11日 米サマータイム入り 12日 米財政収支、米3年、10年国債入札 13日 米消費者物価、米30年国債入札 14日 米小売売上高、中鉱工業生産、中小売売上、中固定資産投資 15日 米フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、NY連銀製造業景気指数、失業保険申請件数 16日 米住宅着工、米鉱工業生産、米ミシガン大学消費者マインド指数

(ZUU online 編集部)