中国鉄路総公司は3月末、2017年の統計公報を発表した。経済サイト「界面」など多くのメディアが分析記事を載せている。基本的には景気のよい数字が並ぶ。しかし事故の多さなど重要な問題は解決されていない。中国鉄道の光と影に迫ってみよう(1元=16.95日本円)。
輸送量、旅客は微増、貨物は横ばい
それによれば2017年の国家鉄路旅客輸送量は30億3800万人、前年より2億6500万人、9.6%のプラスだった。また貨物輸送量は、29億1900万トン、前年比2億6700万トン、10.1%プラスだった。人、貨物とも約10%伸び、これだけを見ている限り順調である。
さらに交通機関の輸送規模を表す重要指標、人キロ(輸送人数×輸送距離)とトンキロ(貨物重量×輸送距離)を見てみよう。2017年の旅客輸送人キロは、1兆3396億9600万人キロ、前年比6.9%のプラスだった。2013年は1兆550億3200人キロだったため、5年間では27.0%の伸びである。1年間で見れば微増のレベルだ。
同じく2017年の輸送トンキロは3兆7488億6600万、2013年は3兆7395億3300万だったため、ほとんど横ばい。それどころか5年ぶりにこの水準を回復したばかりなのだ。
つまり実質は、見出しの印象ほどよい数字ではないのである。
新線建設、複線電化、電車の投入進む
固定資産投資は8010億元、新規開通路線は3038キロ、そのうち新幹線(高速鉄道)は2182キロだった。これにより全国の鉄道営業キロ数は12万7000キロ、前年比2.4%のプラスとなった。そのうち複線区間は7万2000キロ、複線化率は56.5%、前年比1.6%増加した。電化区間は8万7000キロ、電化率は68.2%となり、前年比3.4%増加している。
2013年の営業キロ数は10万3000キロだった。したがってここ5年間の伸び率は23.3%である。旅客輸送量人キロの伸び27.0%は、辛うじてこの数字を上回っている。
保有機関車数は2万1000両で、前年に比べ372両減少した。ディーゼル機関車40.4%、電気機関車59.6%の割合である。また客車は7万3000両、電車は2935編成、2万3480両、前年比349編成、2792両増加した。11.9%伸びている。
新設建設、複線電化、電車の導入が依然として進められている。廃線や第三セクター化の進む日本とはまったく異なる。
非常に多い鉄道事故
鉄道事故にも触れられている。これは各メディアによって扱いの大小に差がある。「中国経営網」から紹介しよう。
2017年に重大事故は発生しなかった。そのため鉄道事故死亡者数は前年比3.9%減少した。しかしその対象となる2016年の数字は恐ろしい。なんと932人である。
旧鉄道部が国家鉄路局と中国鉄路総公司に分離した2013年から事故は減っている。2013年は1336人(5.7%減)、2014年は1232人(7.8%減)、2015年は1037人(15.8%減)、2016年は932人(10.1%減)そして2017年には897人(3.9%減)にまでたどりついた。
これを中国鉄路総公司の社長は、国際鉄道連合(UIC)の統計に照らせば、ここ10年来、中国の各種安全指標は、主要国家の中で最上位であるという。中国の高速鉄道は規模が大きく、運行中に設備の故障が発生するのは避けられない。鉄路総公司は故障の“処理”に重点を置いているという。原因を究明し、積極的な措置を取る。そして世界的には、中国高速鉄道の故障率は低いとしている。
2016年12月上旬、6人が死亡した“安全生産事故”では、国家鉄路局が調査に“介入”し、翌年1月下旬には事故調査結果を公表したという。当たり前のことだが、それまでは当たり前ではなかったのだろう。
その他、技術関係で高い基準を設けていること、緑化や二酸化炭素排出量の削減に努めていることを、強調している。概ね自画自賛色の強い報告だ。しかし輸送量はジリ貧となり、事故は極めて多い。胸を張っている場合ではないはずである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)