富裕層,トマ・ピケティ,r>g,21世紀の資本
(画像=jesterpop/Shutterstock.com)

目次

  1. はじめに
  2. ピケティが明らかにした資本主義の本質
  3. 努力のベクトルを正しい方向に向ける
  4. 政策を待つよりも今すぐ始められる自衛策が有効

はじめに

「お金持ち」になれる人となれない人には、どのような違いがあるのだろうか。確かに資産家の家に生まれるかどうかの差はあるだろうし、運もあるだろう。しかし、お金を上手く使い、増やせるかどうかの違いは全く別のところにある。豊かな人生を送るために必要な「お金力」を身に着けるための考え方を紹介しよう。

ピケティが明らかにした資本主義の本質

「r>g」という式を見たことがあるだろうか。これはフランス人経済学者トマ・ピケティ氏が2013 年に発表した著書『21世紀の資本』に出てくる不等式である。2014年に英語版が出版されると世界的なベストセラーとなったので、覚えている人も多いだろう。この著書のすごいところは、資本主義経済で問題になっている経済格差問題を、膨大な量の歴史的データを元に検証したことだ。

「r>g」のrは資本収益率、gは経済成長率を示している。つまり資本が生み出す年間の平均収益率は、経済の年間成長率よりも大きい、ということである。ピケティ氏の主張によると、古代以降現在に至る平均収益率は約4〜5%、経済成長率は約1〜2%となる。

これを日々の経済活動に置き換えると分かりやすい。資本収益率rは資本を運用して得る収益、つまり株式配当や不動産収入などの不労所得のリターン率である。一方で経済成長率gは、日々の労働で得る給与所得などの上昇率のことである。つまり、働いて得る賃金よりも、株や不動産に投資して得られる収入の方が多いということだ。

資本主義経済では本来「努力した分だけ豊かになれる」と信じられていた。ところが経済格差はどんどん広がっていき、頑張って働いていても格差は縮まらない。なぜなら富裕層が手持ちの資本を運用して得るリターンの方が、一般層が働いて得る所得の上昇率よりも大きいからだ。お金持ちはずっとお金持ち、庶民は頑張ってもずっと庶民、しかも差は広がるばかり。私たちがなんとなく感じていたことが、これだけの式で表されてしまったのだ。

「r>g」の意味を知らないままだったら、開いていく富裕層との格差を歯がゆく感じるだけだったかもしれない。だがその意味を知ると、格差を打開するための対策が見えてくる。

努力のベクトルを正しい方向に向ける

働くだけで格差が縮まらないのは、労働だけでは不十分だからだ。ならば日々の努力のベクトルを、より多くの収益を得る方向に向けていけばいい。つまり、資本を作り運用していくということだ。運用する資本がなければ、まず労働で得た収入を貯めて資本を増やしていく。そして投資や運用を行って収益を生み出し、さらに資本を増やしていくのである。

資本を作り出す金銭的余裕がない場合には、家計におけるキャッシュフローの見直しや、副業なども視野に入れて、とにかく運用するための元手を作り出すことが最優先となる。日々の経済活動におけるすべての努力を、r側に向かうように行うのである。 そしてもう1つ大切なことは、少しずつでもなるべく早く始めることだ。これは長期運用による複利効果を活用して、収益率を最大限に増やすためである。リターンがリターンを生む状況を作り、さらに収益率を増やすことが可能となる。

政策を待つよりも今すぐ始められる自衛策が有効