中国の国家統計局は4月中旬、公式サイトを更新し、サービス産業こそ中国経済発展の原動力となっっていると強調した。2017年、中国サービス産業(第三次産業)のGDPは、42兆7032億元に達し、全体の51.6%を占めている。第二次産業の40.5%を11.1%上回る。また数字(デジタル)経済規模は32.9%に達したという。これに対し、ニュースサイト「易網」「中国経済網」などさまざまなサイトが、分析記事を載せた。

国民経済に貢献するサービス産業

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(画像=PIXTA)

2017年、サービス産業のGDPの伸びは8.0%と、全体の伸び6.9%を1.1ポイント上回った。これで5年連続して第二次産業の伸びを超えたことになる。経済成長率への貢献度は58.8%と昨年比1.3ポイント増加した。

サービス産業の中では、ソフトウェア並びに情報技術サービスが26.0%、レンタルとビジネスサービスが10.9%と高い伸びを示している。

また一定規模以上のサービス企業の売上は13.6%、利益は16.1%と順調に伸びている。また100元の収入を上げるためにかかるコストは93.62元となり、2016年比で0.47元のダウン、ここ3年では最低の水準となった。

この結果、サービス業の国民経済に対する貢献は、突出することとなった。サービス業の全税収に占める割合は56.1%となり、前年比9.9%と大きく伸びた。

“三新”経済が15%を占める。

工業(第二次産業)は40.5%で、依然としてかなりのGDP比を占めている。しかし各メディア、工業に関する記述は極めて少ない。

13~17年、工業高度技術産業の年平均伸び率11.7%
15~17年、工業戦略性新興産業の年平均伸び率10.5%
13~16年、高度技術製造業への投資、年平均伸び率14.8%
13~16年、装備製造業への投資 年平均伸び率13.4%

などの数字が紹介されている。いずれも2ケタの伸長率が並び、順調のように見える。一方7.9%を占める農業(第一次産業)への言及は、全く見られない。

その代わり、今回国家統計局が初めて測定したという、新産業、新業態、新模式の“三新”経済を取り上げている。それによれば2016年の“三新”経済規模は、11兆3719億元で、GDPの15%に相当する。三新経済に占めるサービス産業の割合は52%だという。具体的な構成には触れられていない。

経済統計に新しい概念を盛り込もうということだろうか。

サービス業は投資と貿易の“主陣地”

国家統計局は、サービス業の勢いについても言及している。2017年、新たに登記された企業は、1日平均1万6600社だったが、そのうちの80%はサービス業だった。2013~2016年、サービス業の新登記企業は、1283万社におよび、年平均31.5%も増加している。今やサービス業こそ、固定資産投資の“主陣地”である。2017年サービス業への投資は9.5%増加し、全固定資産投資の59.4%を占めた。

さらに輸出入においてもサービス業は比重を増している。2017年には輸出入総額に占めるサービス業比率は14.5%に達した。2012年に比べ3.4ポイント上昇した。それにより技術関連サービスの輸出は30%、知的財産権の使用料は316.6%も伸びた。

中国の対外投資、外商の中国投資ともサービス業は50%を超えた。今年のボアオ・アジア・フォーラム(海南島)でも中国は、将来のサービス貿易の成長のため、明確に金融市場の開放の意志を示した、と強調している。

最近、中国人民銀行(中央銀行)の易網新行長が、金融業の対外開放に触れたのもこの流れにある。金融の次はサービス業であり、ここが対外開放にとっても本丸なのだ。産業の主役に躍り出た中国のサービス業は、世界貿易の中心にすわる可能性まで秘めている。日本にとっては小さな動きといえども、決して見逃すことはできないだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)