果物の産地として全国的に有名な長野。ワインの産地としても知られており、ワイナリーを巡るツアーは観光客の人気を集めています。県ではそんなワイン産業を地方創生にいかそうと、さまざまな取り組みを行っています。

地方創生への取り組みとしてワインを選んだ長野

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(画像=View Apart/Shutterstock.com)

地方創生が叫ばれている昨今、長野が地域活性化のために着目したのがワイン産業でした。長野の気候と土壌はワインづくりに向いているとされ、これまで数々の上質なワインがつくられてきました。近年では国内だけでなく世界からも高い評価を得るようになり、長野のワイン産業はますます発展すると考えられています。

また、ワイン産業は農業や観光業といった他の産業とも関連が深い分野です。日本では、数少ないワイナリーやワイン用ブドウ農地を観光地として一般公開するなど上手に連携することで、地域全体のさらなる活性化につなげることができます。

長野ワインによる地方創生を成功させるため、長野は2012年に信州ワインブランド化構想研究会を発足。多くの関係者から意見を集めた結果、2013年「信州ワインバレー構想」をスタートさせました。

ワイン産業の振興から長野全体の振興へ

信州ワインバレー構想は、長野ワインブランドの確立とワイン産業の振興による長野全体の活性化を目指して始動します。

地域ごとの特色を地方創生にいかすため、この構想では長野にあるワイナリーを地域別に分類することから始まりました。県北東部・県北西部・県中心部・県南部にある4つの地域のワイナリーをそれぞれ「日本アルプスワインバレー」、「千曲川ワインバレー」などと称し、長野全体を「信州ワインバレー」と命名しました。各ワインバレーの現状を明確にし、ブランド力強化・ワイナリー誘致といった、地域ごとに異なる課題への取り組みを実施することが目的です。

そして長野ワインと信州ワインバレーをブランド化するために発足したのが、信州ワインバレー構想推進協議会です。産学官が連携しつつ、長野ワインのプロモーション活動や新規ワイナリー経営希望者に対する支援など多方面への働きかけを行っています。

策定時に期間をおよそ10年と定めた信州ワインバレー構想は、2013年にスタートしてから約5年の間にさまざまな成果を上げました。

2016年5月、三重で開催された第42回先進国首脳会議、通称「伊勢志摩サミット」にて長野産ブドウを使ったワイン2種と東御市産ワイン一種がランチとディナーに提供され、2017年11月には、米・トランプ大統領の訪日時に開催された晩餐会においても小諸市産ワインが供されています。さらに、ワイナリー数も25社から36社と、構想策定時から10社以上増加しました。信州ワインバレー構想は、信州ワインバレーの発展、そして長野ワインの国際ブランド化に向けて着実に歩みを進めています。

栽培から経営までを受講できる新アカデミー

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(画像=romul014/Shutterstock.com)

2015年5月、ワインづくりに関する新たな取り組みが長野で始まりました。その名も「千曲川ワインアカデミー」は、ワイナリー経営やワイン用ブドウの栽培などに関する知識と技術を身につけることを目的とした、民間では日本初となるワインアカデミーです。

本物のワイナリーを利用しながら学習を行うため、実践的な講義を受けられるのが特徴です。もともとワインづくりに関わっていた人はもちろん、ワインづくりへの新規参入を考えている人向けともいえます。

アカデミーの開設者は、信州ワインバレー構想推進協議会会長かつ日本ワイン農業研究所株式会社代表でもある玉村豊男氏で、ワイナリーを長野に集結させることでライフスタイルの創出を図り、地域活性化につなげたいとの想いを抱く一人です。

千曲川ワインアカデミーは、2016年度までの間に156人の卒業生を輩出。2015年度にかけて卒業した生徒のうち3人がワイナリーを設立し、15人がブドウ栽培をはじめるなど、実績を重ねています。応援サイトでは、卒業生たちのアカデミーに参加したきっかけや現在の状況などを公開され、アカデミー受講を考えている人々の参考になる情報が多く掲載されています。

ワインが地方創生をけん引!

信州ワインバレー構想と千曲川ワインアカデミーによりさまざまな成果を上げてきた長野。今後は、これまで以上にワイン産業そのものや新規参入者への取り組みを強化することが想定されます。長野ワインは当初の目標であったブランド化を実現することができるのか、今後もその成長が楽しみです。(提供:JIMOTOZINE)