保険の満期保険金や解約返戻金には税金がかかる。税額は受取人によって大きく異なる。保険については、ほかの金融商品と資産形成という側面から比較している人も多いだろう。税制上どうすれば有利なのだろうか。

満期保険金には税がかかる

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(画像=PIXTA)

生命保険のうち、保険の対象者が一定期間後に生きている場合に保険金が支払われるものには、満期が来ると満期保険金が支払われる。これは「生存保険」と呼ばれるもので、代表的なものに養老保険と学資保険がある。

養老保険や学資保険は、将来の老後資金や教育資金として保険料を支払い、一定の利率で増えた金額を満期保険金として受け取る。

しかし、この満期保険金には税金がかかる。必ずしも満額を老後や教育費に充てられるとは限らない。

これらの保険商品には「万一の保障」という保険機能もあるが、資産形成という目的を重視するならそのコストを他の金融商品と比較するべきだ。満期保険にかかる税は、場合によっては他の金融商品より有利であることもあるし、不利になることもある。

なお貯蓄性が高い保険として「終身保険」に加入する人もいるかもしれない。これなら元本より返戻金が高くなった時点で解約して一時金を受け取ることができる。正式には「満期保険金」とはいわず「解約返戻金」というが、一時的な収入として課税関係は同じように扱われる。

また、保険の外交員に「満期が来たら年金形式で受け取れますよ」という説明を受けた商品の場合も、「満期保険金」といわず「年金」といい、別のものだ。 ただし、一時的な収入ではなく定期的な収入源であることから、税の扱いは満期保険金や解約返戻金とは異なる。

受取人次第で「所得税・住民税」か「贈与税」のどちらかになる

一時金として受け取る「満期保険金」と「解約返戻金」は、受取人が保険料の負担者本人かどうかでかかる税金が異なる。

保険料を支払っている本人が受け取る場合は、所得税と住民税の対象となる。所得税の対象となる所得は10種類に分類され、その性質によって納税額の計算も異なるが、このケースでは「一時所得」となる。

保険料を支払っていた本人と別の人間が受け取ると、それは「贈与税」の対象だ。「ある人が積み立て運用した財産を、別の人がプレゼントされた状態」とイメージすると分かりやすいだろう。学資保険で子供を受取人にしたような場合だ。

所得税は国税で、住民税は地方税、納付先が異なりどちらも所得に対して課税される。

しかし、「贈与税」は相続税法に規定されている税金で、所得税の対象とならない。これは所得税法に明記されている。「所得税+住民税」と「贈与税」とで二重に課税されることはなく、このどちらかとなる。

それぞれ異なる税額の計算法

受け取った満期保険金がどのような性質のお金かによって、納税額の計算が変わる。一般的には、本人が受け取る場合の「一時所得」のケースの方が納税額は低い。課税対象だが実際に納税額を計算してみたらゼロ円だったということもよくある。反対に、贈与税は納税額が高くなりやすい。

「所得・住民税」の計算法

満期保険金にかかる税金が、所得税だと有利になるのは、所得税が対象とする「所得」があくまで「利益」だからだ。満期保険金を受け取るため、それまで払い込んだ保険料は課税対象額から差し引くことができる。増えた分だけが課税対象だ。

さらに一時所得については50万円の特別控除額が認められており、この金額も差し引くことができる。この時点で課税対象額がゼロ円になるケースが多い。

もし、ここまで計算していてゼロ円にならずいくらかの金額が残ったとしても、実際に課税の対象とされるのはその2分の1で済む。一時所得というのは、一回ぽっきりの「たまたま手にしたお金」なので、税金を担う力があまりないと考えられており、課税対象となる額が小さくなるように配慮されるからだ。

税率は、この一時所得を含め納税者の総所得金額で決まる。所得税は所得が多いほど税率が高くなる。この一時所得で課税額が増え税率が変わるケースもありうるが、多くの場合、普段20%の税率の人はそのまま20%の範囲内か、上がっても一段階上の23%になるかだろう。

住民税のうち所得に比例してかかる税率は10%だ。ただしこれも課税対象額は所得税同様に計算するので、そもそもの課税対象額がゼロか少額で済む。

注意が必要なのは、養老保険などの一部が「金融類似商品」と見なされて、利子所得などと同じく、20.315%(所得税15.315%、地方税5%)を源泉徴収される場合があることだ。

「金融類似商品」となるのは、契約者と受取人が同じで、保険期間が5年以下(5年超の契約期間があっても、5年以内に解約した場合も含む)で、払込方法が一時払いであり、普通死亡保険金が満期保険金以下の契約などを指す。

金融類似商品においても、課税対象は「所得」なので、受取金額から払込保険料を差し引いた差益のみが課税対象となる。しかし、一時所得と異なり、50万の特別控除もなく、課税対象額を2分の1にすることもない。

なお、年金で受け取るときは「雑所得」となる。本人が受け取る場合は、その年に受け取った年金額から、払込保険料のうち、その年の年金額に対応する分を差し引いた額が課税対象となる。本人以外が受け取る場合、最初の年は「年金受給権」が贈与されたとして贈与税の対象となり、2年目以降は雑所得として所得税の対象となる。雑所得にも基礎控除はあるが、課税対象額を2分の1にするしくみはない。

贈与税の計算法(一般贈与の場合)

保険料を支払った人(通常は契約者)と受取人が異なる場合、保険料負担者が積み立てた財産を他の人が「贈与」された状態となり、「贈与税」が課せられることになっている。

この贈与税には年間110万円の基礎控除しかない。もし1000万円の満期保険金を受け取ったとしたら、1000万円-110万円=890万円が課税対象となる。

贈与税の税率は、受取人が配偶者などの場合には一般贈与財産用の税率が適用され、親や祖父母から子孫が受け取る場合(直系尊属からの贈与)は特例税率を適用する。

贈与税は課税対象が高くなるにつれて、税率が高くなる。基礎控除後の課税価格が200万円以下なら税率は「10%」、200万円超300万円以下なら「税率15%、控除額10万円」、300万円超400万円以下なら「税率20%、控除額25万円」とだんだん上がり、3000万円超で「税率55%、控除額400万円」まで8段階ある。

養老保険は過去に利率が高かった時代に人気があった。この時期に加入し、そろそろ満期を迎える人も多いだろう。もし、妻への愛情だと思って受取人を妻にして夫が1000万円の保険を契約していた場合、890万円が贈与税の課税対象で、この金額だと税率は40%、控除額は125万円となり、納税額は231万円となる。

契約者本人が受け取った場合と比較してみよう。この場合は所得税と住民税だ。

1000万円の満期保険金のために800万円の保険料を支払ったとすると、一時所得は(1000万円-800万)-50万円=150万円。この2分の1の75万円が課税対象となる。

所得税の税率が20%の人は75万円×20%=15万円。住民税は10%なので7万5千円。合計22万5000円だ。

保険料800万円という例は、バブル期などの金利が高い時期(数%程度)ならありうる額だが、金利が低くなるにつれ払込保険料の比率も変わる。1000万円のために950万円の保険料という例もあるだろう(1%程度のころに加入した場合など)。すると、課税対象額はゼロになる。

受取人が誰かでこれだけの違いが生じてしまうのだ。

贈与税の計算法(特別贈与の場合)

親から子、祖父母から孫の場合の贈与税の特例税率も、課税対象額が大きくなるにつれて税率が高くなる。ただ一般贈与に比べると税率の上昇は緩やかだ(子どもが20歳以上である必要がある)。

基礎控除後の課税価格が200万円以下で「税率10%」、200万円超400万円以下で「税率15% 、控除額10万円」、400万円超600万円以下で「税率20%、控除額30万円」で、一般贈与より低率の税率が適用される幅が大きい。

しかし、特例税率でも「贈与税」は「所得税・住民税」を払うパターンより納税額がたいてい高くなることはお分かりだろう。所得税なら払込保険料と特別控除50万円を引いた額をさらに2分の1にするのに対し、贈与税の基礎控除は110万円しかないからだ。

現在、学資保険と関係がある世代は購入時に既に低金利だった人も多いだろう。その場合、所得税ならそもそもの課税対象額がほぼゼロ円に近い場合が多い。

受取人を妻子など契約者と別人にして「贈与税」を払うのは損な選択だ。特別な事情でもないかぎりなるべく避けたほうが良い。

保険受取人は契約後に変更できる。被保険者は変更できないが、契約者と受取人は契約期間中に変更することができる。昔に入ったもので、受取人が保険料負担者と異なる場合は、変更を検討しよう。

税務署への申告の有無には要注意

サラリーマンやOLは勤め先企業で給与所得について源泉徴収されるので、確定申告など税の申告を行った経験があまりないかもしれない。しかし、まとまった金額の満期保険金や解約返戻金を受け取ったら必ず税務署へ申告しなければならない。

勤め先企業は、社員の払った保険料の保険料控除については税の手続きをしてくれる。そのため毎年、年末調整前にサラリーマンは生命保険などの加入状況を報告することになっている。

だが個々の社員が保険金を受け取っていても勤め先は把握できないし、税の手続きももちろんできない。満期保険金を受け取ったなら、個人で税務署に届け出なければならないのだ。

所得税については、満期保険金を含め給与所得以外に20万円を超える所得があれば、翌年2月16日から3月15日までに確定申告しなければならない(20万円以内ならしなくてもよい)。贈与税の申告期限は翌年2月1日から3月15日までだ。基礎控除額の110万円を超えた場合に申告が必要となる。

税の申告は国民の義務だ。さらに、保険金については税務署が既に把握済みでごまかすことができない。保険金額が100万円を超える場合は、保険会社から税務署に支払調書を提出するよう定められているからだ。

申告しなかったり過少に申告したりすればペナルティとして「加算税」が加わる。悪質な場合だと「重加算税」が課せられる。

これらとは別に「延滞税」がかかる。これは期日から遅れた分の利子で、別に「ズルをしよう」という気が全くなくても「遅れたという事実」だけで自動的に発生する。保険金と税についての正しい知識に基づき、翌年3月15日までに、税務署への申告を済ませたい。

満期保険金や解約返戻金は、「金融類似商品」を除き、一時払いならば「所得税・住民税」か「贈与税」のどちらかの課税対象となる。これは、受取人が保険料負担者(契約者)か否かで決まる。計算式からみて、本人以外が受け取る「贈与税」が不利であることが多い。納税すべきであれば税務署への申告は必須だ。そして、老後や教育資金が目減りしてしまわないように十分注意を払いたい。(ZUU online編集部)