金利とは金融取引における資金の使用料、つまりお金の貸借の値段である。金利には、一年以内の貸し借りに対する短期金利と一年超の長期金利がある。

国内金利と海外金利の連動性が低下

増税, 財政, 再建
(画像=PIXTA)

短期金利の中でも最も期間が短い「無担保コール翌日物金利」は、日銀によって操作される。具体的には、金融機関が短期資金を取引するコール市場で資金の供給量を調整し、短期金利を動かす。

貸し手が資金の供給量を絞れば需給が引き締まることから金利が上昇し、企業など借り手の資金需要が減退するため資金の需給は緩和に向かう。このように、日銀は金利を操作することで経済をかじ取りする役割を担っている。無担保コール翌日物の目標水準は誘導目標と呼ばれ、マイナス金利の影響もあり、現在は▲0.05%前後となっている。

一方、長期金利は国債10年物の利回りが代表的指標であり、マイナス金利の影響で2016年3月からはマイナスに沈んだが、その後は日銀のイールドカーブ・コントロール導入により2016年12月からプラスに転じた後、現在は+0.0%台の水準にある。

長期金利の水準は、短期資金の借り換えを繰り返せば長期借り入れとなるため、基本的には短期金利とその変化の予想から決まるが、それ以外にも先行きの景気見通しや物価上昇期待、長期の賃借に伴うリスクなど様々な影響を受ける。2016年9月から長期金利が上昇したのは、日銀がイールドカーブ・コントロールを導入したことと、トランプラリー等により景気が回復しそうだとの観測を反映した面が大きい。基本的に景気が良くなる期待が高まれば、物価上昇期待も高まり、金融緩和の出口の可能性が出てくるため、長期金利の上昇要因となる。

ただ、近年では日銀のイールドカーブ・コントロール導入により日本と海外の間で長期金利の連動性が低下しており、海外の金利が国内の長期金利に及ぼす影響が小さくなっている。海外の景気が悪くても、日銀の長期金利の操作目標が変わらなければ、景気が悪くても日本の長期金利が下がらない可能性もある。

こうしたイールドカーブ・コントロールの枠組みは、世界経済がよいときは緩和効果が増幅されるが、世界経済が悪いときは金融引き締め効果にもなりうるため、金融緩和の効果を見通す上で海外の景気や物価、金利動向などの注視が必要だ。

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景気拡大と財政再建の両立が課題

こうした中、日本の財政は深刻な状況にあるといわれている。経済協力開発機構(OECD)によれば、日本における一般政府(国と地方自治体など)の債務残高は名目国内総生産(GDP)比で200%を超え、主要先進国中で最大である。時系列で見ると、リーマンショックに伴う世界金融危機とともに急速に膨れ上がったことがわかる。

ただ、新規国債発行額は2013年度以降減少に転じ、2018年度には33.7兆円まで低下する見込みだ。これは歳入面で企業収益増加により法人税収入が大幅に増えて税収が増加したことに加え、歳出面では社会保障の効率化効果が表れたためである。

財政破綻を回避するには、名目GDP比で上昇が続く政府債務残高の持続的な上昇を止める必要があり、政府は2020年度に国と地方の基礎的財政収支の黒字化を目標としている。基礎的財政収支とは、債務返済や利払い費を除いた歳出と、国債などの借金を除いた歳入との収支を指す。

基礎的財政収支が均衡すれば、その年の政策に必要な経費を税収で賄え、必要な公債発行は過去の債務の元利払いに充てる分だけになる。さらに名目GDP成長率と債務の名目金利の水準が等しくなれば、債務残高はGDP比で一定となる。

2018年度の国と地方を合わせた基礎的財政収支は当初予算ベースで約10兆4000億円の赤字となっている。これをもって、日本の財政は依然永続的に維持できる状況になく、赤字解消のために歳出削減や増税が必要であるとする向きもある。ただ、歳出削減や増税は景気を抑制する効果があり、現在のように先行き不透明感が高まっている中での増税は、税の大幅な自然減収に結びつく可能性もある。

事実、日本は橋本政権時の1997年に景気が底割れし、増税にもかかわらず財政構造改革自体が頓挫した経験を持つ。同じ過ちを繰り返さないためにも、政府は景気動向を慎重に判断し、景気拡大と財政再建が両立するような政策運営が求められる。

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永濱利廣(ながはま としひろ)
第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト
1995年早稲田大学理工学部卒、2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年4月第一生命入社、1998年4月より日本経済研究センター出向。2000年4月より第一生命経済研究所経済調査部、2016年4月より現職。経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事兼事務局長、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使。