それぞれにキャリアを築きあげてきた男女が結婚して生まれる「パワーカップル」。互いに経済的自立を果たしてきた二人が家計を共にするとき、どのような点に配慮すればよいのでしょうか。全国で講演活動・執筆活動、相談業務を行い、多くの女性にお金の知識を伝えている株式会社 Money&You取締役の高山一恵さんに、“共働き夫婦のお金の考え方”についてお聞きしました。
お金の悩みの奥底には人生の悩みもある。ファイナンシャルプランナーになってわかったこと
――高山さんが、ファイナンシャルプランナ―(以下:FP)のお仕事を始めたきっかけを教えていただけますか。
高山さん:元々、大手人材系会社に勤めていて、どちらかというと、お金を使うことが好きなタイプでした。結婚をすることになって、私の友人が「結婚するなら、ちゃんとお金の使い方を考えたほうがいいよ」といってくれたんです。それがFPの勉強を始めたきっかけとなりました。
勉強を始めてみると、保険や年金、資産運用のことって知っているようで知らなかったので、すごく新鮮だったし、結局、“お金を使うのが好き”ということは、“お金を増やすのも好き”だということなのかなと思いました。徐々に学んだことを自分の家計で試してみたり、工夫したりするようになりました。
とはいえ、FPを職業にするつもりはなかったのですが、FPのお友達が欲しくてFPが集まるサークルに顔を出すようになり、そこでの出会いから会社を立ち上げることになったのです。
ですから、学生時代の友人は、今の私の姿をみて、“あなたもできるんだ”、“講演とか本を出しているのをみると面白い”などといわれます(笑)。過去の私を知っている友人たちだから、こういってくれるのかもしれません。そんな私ですら変わることができたのですから、みなさんに勇気を与えることができるのかなと思います。
というのも、この仕事をやってみてわかったのが、結局、みなさん、お金の相談をしにいらっしゃるようにみえて、人生相談にいらっしゃるんです。お話を聞いていると、ご自身の心の奥底にある悩みを明かしてくださったり、話していくうちに本当の課題のようなものがみえてきたりするようです。そういった気づきがあって、人は変わっていくのかなと実感しています。
――それは高山さんのお人柄の良さですよ。いろいろ、ご相談したくなってしまうのでしょうね。
高山さん:いやいや。元々、私がダメダメだったから(笑)、失敗談をお話すると、親近感をもってくださるみたいですね。FPの方って、金融出身者とか、きっちりして優秀な人が多いというイメージがあるじゃないですか。私みたいなタイプはけっこう珍しいんですよね。
パワーカップルのお金管理の2つのポイントとは?
――なるほど。そんな高山さんに今回うかがいたいのが、パワーカップル、いわゆる共働き夫婦のお金の貯め方・増やし方というテーマになります。そもそも、これまで働いていた男女が結婚するときには、それぞれに収入や貯金があると思うのですが、どうやって家計として統一して管理していくべきなんでしょうか。
高山さん:共働きの方がよく相談にいらっしゃいます。ただ、お話をお聞きしていると、お金のことはどうしても隠したがるというか、夫婦といえどもオープンにする人は少ないようですね。お話を探っていくと、オープンにしたくない理由は、結局、お互いにお小遣いを侵食されたくないってところにあるようです。自分の領域を守りたいという気持ちが働くので、どうしてもすべてを明らかにしたがらないようですね。
ですから、私がみなさんにお話ししている、家計管理を決める際のポイントとしては、次の二つがあげられると思っています。
① まずはお小遣いの満足度について、それぞれにコンセンサスがとれていること
② 貯蓄の見える化
自由が奪われると、不満が噴出してしまいますから、そこは夫婦で納得して決めていかないと……後々、お金のことで家庭不和を引き起こす原因につながっていく可能性があります。
ポイント1.お小遣いの満足度のコンセンサスは
――給与明細を見せあって、家計の収入はわかりますと。それで、その中で具体的に小遣いどのくらいほしい?と話をするのですね。
高山さん:そうです。本当は、そうしたほうがいいのですが、ただ最初は、とりあえず決められた生活費だけをお互いに出し合って、あとはお互いが自由にお金を使いあってというパターンが多いのが現実的な話だと思います。
それで、問題なく家計が回っているうちはいいのですが、問題なのが貯蓄の額です。お互いに貯蓄していると思っていたら、実は蓋を開けてみたらなかった……というのは、夫婦げんかが勃発する原因のひとつになっていますね。
ポイント2.貯蓄の見える化が大切なワケ
――最初の段階で“貯蓄の見える化”をしておいたほうがいいのですね。
高山さん:それが理想ではあるのですが、でもお互いに働いていて、子どももいなければ、けっこう余裕があるので、あまり深刻に受け止めることができないんですよね。子どもが生まれるとか、家を買うなど、何か大きな出費が必要になったとき、蓋を開けてみたら貯蓄が意外に少ない……!?。“稼いでいる割に貯蓄できていないね”という話になるケースが割と多いのかもしれません。
そもそも個人個人好みも違うので、その好みや価値観の違いから生じる、夫婦間のお金の使い方のギャップはありますね。例えば食費にかけたい人もいれば、ファッションにお金をかけたい人もいます。あとは、高収入な共働き夫婦を見ていると、生活費のすべてが少しずつワンランク上なんですよね。
例えば、日常的なお買い物では高級スーパーを利用したり、ファストファッションは着用しなかったり。そういったものをすべて「見える化」して、どこを、どう削減できるかを話し合い、お互いの興味や価値観を調整していく必要があると思うのです。
基本的には、独身時代と同じように使っていてはダメだと思います。まずは、二人でライフプランを話し合ってみることが大切です。今後の人生において、住宅を買うのか、子どもがほしいのか、何人ほしいのかなど、ある程度でいいですから、二人で意識を共有しておくことが大切だと思います。
晩婚化が進む今、何かのきっかけで人生があっさりかわることを念頭に
――子どもやマイホームがみえてきたら、少し家計を絞っていかなければいけないよねと、見直す必要があるということですね。
そうです。最近は、晩婚傾向にありますから、奥様が40代で出産するケースも多く、そうなると旦那様は50代の場合もあります。晩産の夫婦は、どうしてもお子様を甘やかす傾向があって、必要以上にお金をかけてしまいます。
また、子どもの進学について中学受験をするということになったとします。そうすると、子どもと寄り添っていたいという思いが強くなって、それまで長年頑張ってきた仕事を辞めようと考える女性も多いです。そうなると、奥様の収入がなくなってしまいますよね。これから子どもの学費が増えていくときに奥様の収入がなくなると……どんどん旦那様へのプレッシャーが大きくなっていきます。
子どもが生まれることで考え方が変わってしまったり、さらにそこに親の介護が加わってきたりするなど、いろいろな変化があるのが40代くらいかと思います。40代になって、究極に貧困になっていく人も実は一定数いるのです。人生って、何かのきっかけであっさりと大きく変わる可能性があるということを念頭におくことが大切だといえるでしょう。(提供:お金のキャンパス)
高山 一恵さん(たかやま・かずえ)
株式会社Money&You取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP®)
2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後、株式会社Money&You(http://moneyandyou.jp/)の取締役へ就任。全国で講演活動・執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。
女性向け、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる『FP Café ®』(https://fpcafe.jp/ )を運営。
「東洋経済オンライン」「All About」「Woman Type」「ZUU Online」「OTONA SALONE」等のウェブ媒体での連載、「プレジデントウーマン」「日経ウーマン」「Oggi」「FRaU」などの女性誌にも多数出演。
主な著書に「金融機関が教えたがらない年利20%の最強マネー術」(河出書房新社)、「税金を減らしてお金持ちになるすごい方法」(河出書房新社)「一番わかる確定拠出年金の基本のき」(スタンダーズ)「パートナーに左右されない自分軸足マネープラン」(日本法令)、「やってみたらこんなにおトク!税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)などお金の分野での著書は数十冊に及ぶ。
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