父親は母親と同じく、子どもに大きな影響を与える存在だ。ミシガン州立大学の調査では、父親が幼児期の言語・認知能力の成長から社会的スキルまで、子どもの発達に大きな役割を果たすことが明らかになっている(SienceDaily.com2016年7月14日付記事) 。

父親の教えを最大限に活かし、巨額の富を築き上げたお金持ちもいる。ウォーレン・バフェット氏やビル・ゲイツ氏、ジェフ・ベゾス氏など、7人のビリオネアを成功に導いた父親の教えから、学びとれるものがあるかもしれない。

ウォーレン・バフェット「信用を築くのは20年、それを失うのは20分」

「自分にとって人生最高の贈りものは、父の息子として生まれたこと」「人生最高の先生」とバフェット氏が尊敬してやまない父であるハワード・バフェット氏。

バフェット氏の名言として有名な「信用を築くには20年かかるが、失うのはたったの20分」という言葉は、実は最も印象に残っている父親からの教えだったという。

投資家だった父親の事務には、投資に関する本が山積みになっていた。バフェット氏は毎週土曜日、昼食を事務所に食べにいく度にそれらの本を読みあさり、投資への関心と知識を高めていったそうだ。

バフェット氏は「父が靴のセールスパーソンだったら、自分も靴のセールスマンになっていただろう」と、父親の影響がいかに大きかったかを認めている(CNBC2017年9月29日付記事 )。

ビル・ゲイツ「苦手な分野に挑戦する」

ゲイツ氏にとって父ウィリアム・ゲイツ氏は、「人生で出会った中で最も温厚で賢い人 」だ。特に父の高潔さを賞賛しているという。

子どもの頃は苦手な分野に挑戦するよう励まされ、無意味に感じたこともあるそうだが、「リーダーシップの機会に慣れることができたと同時に、自分には苦手なことがたくさんあると認識できた」と語っている(CNBC2018年6月15日付記事 )。

ジェフ・ベゾス「機知の才を養う」

意外なことに、父親よりも、祖父の教えに影響されたというベゾス氏。2018年4月28日のビジネスインサイダーの取材 で、祖父の存在が自分の人生にあたえた多大なる影響について語っている。

ベゾス氏は4〜16歳、夏休みを祖父の牧場で過ごした。祖父は牧場の手入れから病気の家畜の世話まで何でも自分でこなす人で、ベゾス氏に風車の修理の仕方や水道管の導入、小屋やフェンスの建て方などを教えこんだ。

数々の体験を通し、ベゾス氏は「問題があれば解決法もある」ことを学ぶ。機知の才を養う習慣は、後にベゾス氏に大きな成功をもたらすこととなった。

因みに父、ミゲール・ベゾス氏は、ベゾス・ファミリー・ファウンデーションの共同設立者兼ヴァイス・プレジデントを務めている。

ジョージ・ソロス「経験を役立てる」

ハンガリー系ユダヤ人としてナチスから迫害を受けたソロス一家は、偽の身分証明書を用意するという父親ティヴォドア・ソロス氏の機転で命を救われた。父親は偽の身分証明書を迫害のリスクに身を置くほかの人々にも用意し、裕福な者には高く、貧しいものには安く販売するという闇事業を立ち上げた。

ソロス氏は多大なる影響を受けた父親について、「父は自らが人生で学んだ経験を活かし、予期せぬ未来から息子たちを守った 」と自身の自伝で述べている(traderlife2018年1月12日付記事)。

マーク・キューバン「若さを忘れない・人に敬意を持って接する」

キューバン氏は「今日のお前は、今まで生きてきた中で一番若くなる。毎日、若々しい生き方をしなければならない」という父ノートン・キューバン氏の教えを守り、現在も毎日若々しさを保つ努力を続けている。

ほかにも、「自分を特別な存在だと思わず、敬意を持って人と接する」ことなどを学んだ。時に傲慢な言動にでることもあるが、常に「人からこう扱われたいと自分が思うやり方で、自分も人に接するように心がけている」そうだ。「いくらお金を持っているかで、人の価値は判断できない」(ビジネス・インサイダー2014年3月12日付記事)。

マイケル・ブルームバーグ「社会への還元」

ブルームバーグ氏は子どもの頃、NAACP(全米黒人地位向上協会)に50ドルを寄付する父に、なぜそんな大金を寄付するのか? と問いかけたことがある。「誰かに対する差別は、全ての人々に対する差別だから」と答えた。

社会へ還元する 「Giving Back」の博愛主義を両親から学んだブルームバーグ氏は、後にブルームバーグを創設し、第108代ニューヨーク市長に就任。築き上げた巨額の富を数多くの慈善活動を通して還元している(Town&Country2017年5月9日付記事)。ブルームバーグ氏の二人の娘も、熱心な慈善活動者だ。

サラ・ブレイクリー「失敗することも大切」

矯正下着メーカーSpanxを創設し、女性ビリオネアとなったブレイクリー氏。子どもの頃、食卓でよく父親から聞かれた質問は「今日はどんな失敗したか?」だった。

「父は私たち子どもに、失敗するように教えた」というその意図は「失敗=挑戦成果への挑戦」ではないと、子どもに伝えることだった。この教えのおかげで、ブレイクリー氏は失敗を恐れず、自由に挑戦することができたという。

同氏はファックスのセールスパーソンを7年間続けた後、起業して大成功を収めた。失敗は時として知識や経験の浅さに起因する。しかし同氏は「無知はその気になれば、最大の資産になる」 とポジティブにとらえている(CNBC2013年10月16日付記事 )。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)