(本記事は、NightWalker氏の著書『世界一ラクなお金の増やし方』ぱる出版、2018年6月7日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

世界一ラクなお金の増やし方
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

【『世界一ラクなお金の増やし方』シリーズ】
(1)インデックスファンドが長期投資に向いている3つの理由
(2)初心者が選ぶべきインデックスファンド 3つの指数とは?
(3)なぜ「運用実績のないファンド」が投信ブロガーたちに選ばれるのか?
(4)リスク資産が増えたときにする「リバランス」とは?
(5)株で大暴落が起きたら必ずすべき4つの対処法

「となりの人」はもう始めているかもしれない?

世界一ラクなお金の増やし方
(画像=GaudiLab/Shutterstock.com)

これまでも取りあげてきたように、つみたてNISA制度が、2018年1月から始まっています。

このおかげで、これまで、「米国の投資環境はいいなあ」と指をくわえているしかなかった我が国でも、一気に質の良い投資信託が登場するようになりました。激変といっても良い変化です。

●いきなりほぼ完成形の日本のインデックス投資環境

この変化を象徴したのが、2018年1月に発表された、『投信ブロガーが選ぶ!Fund of the year 2017』(2018年1月発表)でランキングの上位に上がったファンドでした。

リストアップしてみましょう。

第1位★楽天全世界株式インデックスファンド
第2位〈購入換金手数料なし〉ニッセイ外国株式インデックスファンド
第3位★楽天全米株式インデックスファンド
第4位★野村つみたて外国株投信
第5位★eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
第6位ひふみ投信
第7位★eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
第8位たわらノーロード先進国株式
第9位Vanguard Total World Stock ETF(VT)
第10位★iFree S&P500 インデックス

同イベントのランキング2017年は、トップ10のうち実に6本が同年に新しくできたファンドでした。(★が新設定のファンド)本来、できたばかりのファンドというのは、運用実績がないわけですから慎重に選ぶべきなのですが、その辺をよく知っているはずの投信ブロガーのみなさんが、あえて選んでいるのです。

しかも、10本のうち9本までがインデックスファンドで、新登場のファンドもすべてインデックスファンドです。

これほど多くの新しい優良ファンドが出てきた理由こそが、つみたてNISA制度です。

新登場のファンドは全部つみたてNISAをターゲットとしていて、信託報酬率は、極めて低廉でした。そこが、投信ブロガーのみなさんの注目を集めたのですね。

これまで、米国でしかなしえなかった水準に、日本のインデックスファンドがあっという間に進化して、一気に完成形に近付いてしまったのです。

しかもつみたてNISAを使えば、最長年非課税です。

「もうインデックス投資を始めない理由を、投資環境のせいにはできなくなった」それくらい投信の世界では大きな変化でした。

●イデコiDeCoとNISAは、なぜ生まれたか?

もう一つ考えたいことがあります。確定拠出年金制度、ことに個人型確定拠出年金制度(iDeCo)そして、これまでも取りあげて来た「つみたてNISA」です。

これらの制度は、なぜ生まれてきたのでしょうか。少し、私なりに過去の個人の資産形成事情を振り返って見たいと思います。

戦争が終わって、日本は戦後復興の時代を迎えました。このときは、個人には投資する余力なんて当然ありません。

なので、国が主導して投資をしていく時代が続きました。象徴的なのが財政投融資です。たとえば、高金利の郵便貯金で国民から資金を集め、国がいろいろなところへ投資をしていく仕組みです。

郵貯の定額預金は、高インフレ下であったとは言え、高金利であったため、国民の資産形成にも大きく寄与しました。

ただ、この仕組みは、官の利権問題などの弊害も出てきます。ですので、日本経済が正常になってきた段階で民間主導の考え方に変革していくべきだったのですが、高度成長期の末期にバブルが発生し、いざ、民間主導の時代を迎えたときに民間の元気がなくなっちゃったのです。

その元気のない時代は長らく続きました。

しかし、誰も投資しない社会なんて成立しません。国際的に見ても日本の金融所得はまだまだ小さい状況です。

「少子高齢化もあって国民の金融所得を増やさなければならない」という苦しい懐事情も出てきました。そのためいよいよ、民間や個人が投資をして経済を良くしよう、国も支援しよう、ということになって来たのではないかと考えています。

iDeCoやNISAという個人の投資を支援する仕組みが登場してきたのには、そういう時代背景があるのだと、私は感じています。

つまり、日本にも「投資が普通の時代」が来ると私は思っています。

●「となりの人」は始めていても言わないだけ

自分の身の周りで投資の話題なんて出ていないけどなあ、と首をかしげる人もいらっしゃるかもしれません。日本人には、お金の話はあまり積極的にしない方が良いという防衛意識があるので、それは当たり前です。

わざわざ「俺って投資してるんだ」と他人に言う人はまだまだ少ないと思います。言わないだけで、「実は投資を始めている人」って案外いますよ。

マーケティングの世界に、イノベーター理論というのがあります。

製品は、イノベーター→アーリーアダプター→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガードの順に普及していくというものです。

素朴な実感論ですが、日本人の世界分散型のインデックス投資はまだ「アーリーアダプター」の段階にいるような気がします。

しかし、変化の兆しもあります。

最近の投資のイベントで会話をすると「生活設計の一部としてインデックス投資を考えている」という人が明らかに増えているのです。「確定拠出年金がきっかけになった」という声もよくお聞きします。

そして、みなさん、すごく地に足の付いた考え方で投資を捉えていらっしゃるのです。

「アーリーアダプター」は変革の手段として、「イノベーター」たちが開拓した新しい手法や製品を取り入れます。そして「アーリーマジョリティ」は、これまでの前2層の実績を踏まえて業務改善の手段として活用すると言われています。

ひょっとすると、インデックス投資もアーリーマジョリティ層が拡大しつつあるのではないでしょうか。

あなたのとなりの人も、もうすでにインデックス投資を始めているかもしれません。誰しもわざわざ「自分が投資をしている」なんてことを話さないものなのです。

長期投資は時間をお金に換えること。少しでも早く始めた方が、その時間は長くなります。早く始めて有利に運用できるならそうするべきです。

NightWalker(ないとうぉーかー)
インデックスファンド、ETFがメインの個人投資家。投資ブログ「NightWalker's Investment Blog」を運営し、「普通の人のための普通の投資」の普及を願って、日々、メッセージを発信中。1984年、普通にサラリーマンになり、39歳の時、ネット証券で株式投資を始め、同時期に投資信託の積立を開始。2015年に退職勧奨を契機に投資で築いた運用資産と優遇退職金で早期退職を決断。