ソフトバンクグループ <9984> の中核会社であるソフトバンクが東京証券取引所に上場予備申請を行った。上場が認められれば、ソフトバンクグループとともに、親子上場を果たすことになる。今回の上場にあたり、親子上場のメリット・デメリットについて、あらためて考えてみたい。

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(画像= MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com)

親子上場のメリットは?

まず、親子上場のメリットから見てみよう。

親会社から見た親子上場のメリットは、資金調達ができることであろう。子会社を売却し、資金を得ることで、親会社自身が新たな事業に投資することができる。さらに、子会社自体が市場に出て、価値を上げることで、親会社の価値を上げることもメリットといえるだろう。

もちろん子会社から見てもメリットはある。1つは、子会社が上場することにより、ブランド価値があがることだろう。上場しているということは社会的信用も高い。そのため、子会社自身の資金調達や採用などで有利に働くことも多い。加えて、上場し、独立性があがることで、子会社の裁量権が増えることも上場のメリットといえそうだ。

さらに、投資家目線でもメリットはある。上場するということは、株式を自由に売買できるということだ。魅力的な企業が増えることは、投資家にとっても大きなメリットだろう。

親子上場のデメリットは?

もちろん、親子上場はメリットだけではない。デメリットは以下の通りだ。

親会社側のデメリットとして挙げられるのが、子会社への裁量権が弱まるということだ。上場企業の原則として、「すべての株主に平等である」ことが求められる。特に少数株主に配慮するよう求められている。つまり、親会社の意向を必ずしも反映できるわけではなくなるのだ。また、子会社の独立性を重視するあまり、グループとしての経営判断が遅れる、経営判断にぶれがでることも考えられる。

子会社側のメリットとしては、管理コストの増加だろう。上場するには、上場企業に求められる透明性などを維持していかなければならない。もちろん開示も四半期ごとに行う必要があるため、そういった管理コストが増加することがデメリットだ。また、親会社への依存度が下がるため、営業コスト等が上がる可能性もある。

投資家にとってのデメリットは、株主の権利が制限される可能性がある、ということだ。株主には配当などを受け取る以外にも、経営に参加できるという権利がある。しかし、例えば親会社が引き続き過半数の株式を持つ場合、実質議決権等を他の株主が持つことはできない。そういう意味で、投資家にとってもデメリットはあると言えるだろう。

証券取引所自体も親子上場には慎重

証券の上場を行うJPXグループ自体も、親子上場は「少数株主の利益の制限」という観点から慎重な姿勢を見せている。現時点では制限をしていないが、望ましい資本政策ではない、という見解を見せており、株主の権利や利益への一層の配慮や、投資者をはじめとする市場関係者に対する積極的なアカウンタビリティの遂行を求めている。

もともと親子上場は、少数株主からの訴訟リスク等もあり、欧米ではあまり見られない制度であるが、日本は親子上場が多い市場だった。しかし、証券取引所がこのような姿勢を見せてから、親子上場は減少している。2006年には最大400社近くの親子上場があったが、そこから11年連続で減少しており、2017年は270社なっている。

個人投資家目線ではメリットもある親子上場

親子上場は、少数株主の利益が制限されるというデメリットはある。しかし、売買や配当で利益を得たいだけ、という個人投資家であれば、必ずしもデメリットと言えない。魅力的な投資対象が増えるという点では喜ばしいことだろう。今後、世界のトレンドに合わせてルールが変わる可能性はあるが、現時点ではメリットを最大限享受しよう。(ZUU online 編集部)