個人投資家向けIRセミナーを開催する上場会社が増加している。個人投資家にとっては、企業の経営トップから直接話を聞ける貴重な機会だろう。この機会を利用して個人投資家はどのように投資判断を行うのだろうか。実は経営者の「顔」を見て投資判断している個人投資家もいるようだ。この記事では、企業IRや個人投資家のIR活用方法などについて解説する。

企業IRとは

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(写真=PIXTA)

企業IRとは、長期保有の安定した株主作りや、企業が考える適正な株価形成を目指す自主的な広報活動のことを指す。

・事業内容
・財務・業績動向
・経営戦略・成長シナリオ
・株主還元方針
・CSR (企業の社会的責任) 活動
・リスク要因
・コーポレート・ガバナンス

主に上記のような経営全般に関して、投資家が適切な投資判断を行うために必要な情報を「適時・公平・継続」の3原則で提供する。

有価証券報告書のように法律で定められたディスクロージャー (情報公開) だけではない。投資家向け説明会の開催や、アニュアルレポートや統合報告書の発行、決算説明資料や月次売上の公表のように、企業が自主的に行う広報活動である。

「どんな種類の情報を」「どんな方法で開示するか」は企業に一任されており、企業によっては広報部や総務部ではなく、IR部を設けている場合もある。近年はIRセミナーを開催したり、大規模なIRイベントに出展して個人投資家へ企業のことを認知してもらう動きが活発に行われているようだ。

機関投資家はファンダメンタルズ分析を基本としている

アナリストや機関投資家は一般的に、伝統的なファンダメンタルズ分析を基本として投資判断を行っている。つまり、アナリスト向け説明会や、個別ミーティング、公表された各種詳細データを活用してファンダメンタルズ分析を行っている。

さらに、「企業の成長シナリオが合理的に説明できる内容か」「中期計画の目標値が達成可能な妥当な水準か」「それに対して現在の株価が割高か割安か」などを検討して投資するかを判断する。また、ROE (自己資本利益率) などの資本効率や、企業の環境や社会的責任への取り組み状況を意識したESG (環境・社会・ガバナンス) 投資を重視する機関投資家も増えている。

個人投資家は経営者の「顔」を見る

これに対して、個人投資家は企業IRをどのように活用しているのだろうか。IRセミナーに参加する個人投資家の中には、お土産が目当ての人もいれば、驚くほど詳しく下調べしている人もいる。しかし、一般的には多くの人がその企業の事業内容を漠然としか知らず、ファンダメンタルズ分析やESG投資に対して、機関投資家のように専門知識を持っているわけではない。

そんな個人投資家にとってIRセミナーは上場会社の経営トップから直接話を聞ける貴重な機会のひとつだ。その証拠に、多くの人が真剣なまなざしで説明に聞き入っている。そして、機関投資家のように「成長シナリオが合理的かどうか」が判断できなくても、経営者の表情や話し方から、「経営に対する熱意や自信を感じ取れるかどうか」などを洞察できるのである。

つまり、意外と単純に経営者の「顔」を見ているのだ。企業のサポーターとして自分の大切なお金を預けるのだから、投資判断する際に投資先が信頼できる経営者であることは重要なポイントのひとつだといえる。

質疑応答の際にも、事業内容や成長シナリオではなく、経営者の経歴や趣味など人柄に関する質問が多く飛び出すこともある。個人投資家の場合は経営者の「顔」が見えることが信頼感につながることが多いというわけだ。

重要なのは投資家の信頼を得ること

企業にとって重要なのは投資家の信頼を得ることだが、特に上手な話術が必要というわけではない。個人投資家には理解が難しい専門用語を連呼するのではなく、投資家が知りたいことを上手にくみとって、適切にわかりやすく説明できる経営者は好感度がアップする。

機関投資家でもアクティブ型運用で銘柄を選択する場合には、ファンドマネージャーが経営者の熱意などを感じて投資判断することもある。経営者の「顔」が投資家の信頼を得ることが、長期保有サポーターの獲得に繋がるといえるだろう。(提供:大和ネクスト銀行


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