「ポイントやマイルが貯まるから」「オンラインショッピングで使いやすいから」などの理由で、日本でも保有率が85%を超えるクレジットカード(2017年9月JCB調査)。調査に協力した3500人の平均保有数は3.2枚だという。

日本のクレカは分割払いやリボ払い、ボーナス一括払いなど、利用者の経済状況に見合った豊富な返済オプションが特徴だ。APR(年換算利回り、実質金利)や利用状況などを世界のクレカと比較してみよう。

同じ国・地域やブランドでもARPに差?

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(画像=Kite_rin/Shutterstock.com)

金融情報サイト「Deposit」2018年7月のデータ によると、世界で最もAPR(実質金利)が低いクレカは英大手スーパーマーケットTESCOの銀行事業Tesco Bankで、5.9%という驚きの低さだ。同じく英大手銀行LloydsやBank of Scotlandのクレカは6.45%。それでは英国はクレカの金利が低い国なのか?というと、一概にそうとは言えない。これらはあくまで各社が提供する「最低APR水準」で、誰もがここまで低い金利で利用できるわけではない。

たとえば米国でも、Navy Federal Credit Union「Platinum Credit Card」のAPRは7.49%~18.0%とかなり差が開く。また同じ国やクレカブランドでも、利用者の審査条件次第で金利は大きく変動するので一概には言えないが、金利10%以下のクレカを提供している国・地域は、英国・米国・台湾の他、アイルランド・オーストラリア・カナダだ。

アジアで金利が低いのは台湾銀行のクレカ?

アジアの国・地域で金利が低いのは台湾銀行のクレカで、8.80~10.80%程度。シンガポールの Maybankは15.0%の「Platinum Visa Card」を発行しているが、American Express Singapore の「Airlines KrisFlyer Gold Credit Card」は25.90%、Citibankの「Dividend Credit Card」は26.90%など、ブランドによって差がある。

マレーシア のMaybankやCIMB Bank は、それぞれ15%のクレカを提供しており、インドネシアのBank Mandiriの「VISA Gold」は30.53%、HSBC Indonesiaの「Visa Signature Credit Card」は26.95%と、高めに設定されている。

アフリカ、香港など、クレカの金利が驚くほど高い地域

同サイトの調査によると金利が最も高いのは、ARP46.78%というフィリピン最大の商業銀行BDO Unibankの「UnionPay Gold」。同国で発行されているMetrobank「Gold Mastercard」も42%と非常に高い。他にも、ルアンダのBanco Angolano de Investimentosのクレカは40.53%、ケニアのNational Bank of Kenyaのクレカも38.48%とかなり高い。

香港もHSBC HK「Classic Visa」が36.43%、DBSのクレカが32.00%など、即返済するのでない限り、気軽にクレカを利用できる環境とはほど遠い。

米国--年利が2007年以来の最高水準に

米国と英国のクレカ事情を詳しく見てみよう。

クレカ情報サイト「CreditCards.com」のデータによると、米国のクレカの年率(APR)は10週間連続で上昇し、2018年5月の時点で16.71%に達した。同社が金利動向の調査を始めた2007年以来の最高水準だ。

連邦準備銀行の利上げの影響から、米新規クレカのAPRは過去2年間で1.5ポイント以上上がっている。しかし大手個人信用情報機関TransUnionの調べからは、2018年第1四半期、クレカ利用者1億7500万人弱、発行数4億1600万枚という過去最大の数字を記録したことが明らかになっている。

2012年には5299ドルだった平均残高は2018年には5472ドルに、平均利用限度額も4704ドル から5283 ドルに増えた。信用限度額が高くなったという事実は、カード発行会社間でが消費者への信頼が増していることを示唆しているが、負債が増えて返済に苦しんでいる消費者も多い。2015年には1.38%だった90日以上の延滞率は、1.78%に上がっている。

英国--クレカ乗り換えで金利0%

金融情報サイト「Moneyfacts」のデータ によると、2018年6月の英国のクレカ年率(APR)は23.1%。1月から0.3ポイント増えた。

クレカに依存する生活を送っている利用者や負債額の大きい利用者にとっては、わずか0.3%の金利上昇が致命傷となりかねない。

クレカ乗り換えで一定期間金利0%という特典付きクレカも多い。たとえば大手スーパーマーケットTESCOの銀行事業Tesco Bankのクレカに乗り換えると 、最長28カ月間金利0%になる。

米国同様、英国でもクレカに依存する消費者が増えている。Money Charityのデータによると、2018年4月の時点で、英消費者のクレカ負債総額は711億ポンド、一世帯2613ポンドに達していた。平均的な金利のクレカで毎月最低額しか返済していない場合、完済に26年以上かかることになる。

クレカによる貸し倒れ償却総額は2018年第1四半期だけで、3.18億ドルだった。貸し手は乗り換えで一定期間金利を0%にすることで貸し倒れのリスク縮小を狙っているが、「乗り換えた途端、さらにクレカで買い物してしまう」という消費者も少なくない。

金利が高い・低いに関わらず、クレカはかしこく上手に利用したいものだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)