株式投資を株主優待や配当金を目的に始める人も多いだろう。ただ、株主としての権利が確定するのは購入日ではないので、権利確定日の計算の仕方を把握しておきたい。配当や株主優待は株価を動かす一因にもなる。適切な売買のタイミングについても確認しておこう。

権利確定日と購入日との関係

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(画像=PIXTA)

株式投資のために資金を用意し、考え抜いて銘柄を選び、いざ購入を決めたとしても、残念ながら購入したその日から株主になれるわけではない。また株主になっても、企業から株主としての権利を得るには権利確定日を待たねばならない。

売買が成立することを約定と言う。約定すると、その日を含め4営業日目に売買代金の清算と株式の受け渡しが行われる(含めないなら3営業日目)。証券会社の営業日を数えるので土・日・祝日などは含まない。例えば2018年8月24日(金)に約定したなら、土・日は含まず4営業日目を数えて、株式の受渡日は2018年8月29日(水)となる。

株を購入して株主になれば、その企業に出資したことになり、その企業のオーナーとなる。そしてその企業があげた利益を配当金で受け取る権利が得られる。また、その企業が株主優待制度を設けていれば、その優待を受ける権利も得られる。

ただし、これらの株主としての権利は株式の受渡日に得られるわけではない。証券取引所が開いている間に頻繁に株式は売買され、毎日のように株式の持ち主が入れ替わる。株主としての権利を受け取るには、企業の決めた日に株主である必要があるのだ。

株主としての権利は、企業が決めた日に株主名簿に掲載されている人に与えられる。この日を権利確定日という。権利確定日はその企業の決算期末とされる場合が多い。この日に株主名簿に名前が載っている人が、株主として配当金や株主優待を受け取る権利を得ることができる。

購入からの時間の流れを整理しておこう。株式の売買が成立した日は約定日という。この約定日から4営業日目に株式の受け渡しがある。その株式を権利確定日(多くは企業の決算期末)に保有していることで株主として配当金や株主優待が受けられるのだ。

反対にいえば、配当や優待を受けるには株主権利確定日の4営業日前までに株式を購入しなくてはならないことになる。後でも述べるが2018年の8月31日(金)が権利確定日の企業だと、8月28日(火)までに買わなくてはならない。

権利確定日から得られる権利

企業の決算が済むと「株主総会招集通知」や「事業報告書」が送付される。配当金や株主優待がある場合は、株主総会終了後に配当金支払通知書や株主優待品が送られてくる。

法律上で守られている「株主権」は3つある。株主総会の議決権を持ち経営に参加する権利と、配当金などの利益の分配を受ける権利、会社が解散したときに残った財産を受け取る権利だ。

通常時に株主が具体的に受け取ることができる配当金などについて見ていこう。

配当金を受け取ることができる

先に述べたように、株主として企業に出資した分、会社があげた利益の配分を受けるのは法律で保障された権利だ。株主は自分の持ち株数に応じて配当金を受けることができる。

配当金は年1回または2回という企業が多い。投資家向けの情報で確認しておこう。配当金の具体的な額は、もちろん基となる企業の利益に応じて決まる。業績が良ければ、事前に予想されていたよりも配当が増えることもある(増配という)。逆に業績が悪化して配当が減ったりゼロになったりすることもある(減配・無配という)。

ただ、成長期にある企業はあえて資金を株主への配当に回さず、見込みのある事業へと投資することがある。無配であってもこのような前向きな理由もある。株主として今すぐ配当金を受け取りたいか、企業の成長を見守り大きな配当金を後で得たいか、人によって投資スタイルは異なるだろう。企業が発信する無配や減配の理由と自分の投資スタイルをすり合わせておこう。

優待品(サービス)を受け取ることができる

配当金が法律に定めのあるお堅い権利であるのに対し、株主優待は特に法の定めはない。企業独自のサービスで、株主にその企業の商品やサービスをプレゼントしてくれたり、割り引いてくれたりするものだ。

具体例を挙げよう。まず日常で身近な小売業のイオンを見てみよう。権利確定日は2月と8月の末日だ。権利確定日に株主であると緑色の「オーナーズカード」がもらえる。これをイオンのレジの清算時に提示すると、後日保有株式数に応じたキャッシュバックが受けられる。100株以上で3%、500株以上で4%、1,000株以上で5%、3,000株以上で7%だ。

1,000株以上を長期に保有していると2,000円の「イオンギフトカード」ももらえる(ただし2月末日で3年以上保有している株主が対象だ。保有株式がさらに多いとギフトカードの枚数も増える)。

2018年8月末の権利確定日に株主名簿に載るためには、この日を含む4営業日前、つまり8月28日(火)までに株式を購入しなければならない。

イオン同様に2月と8月の末日に株主としての権利が確定し、自社で使える株主優待券を贈ってくれる企業は他にもある。牛丼の吉野家や家電量販店のビックカメラなどだ。吉野家では100株以上で3,000円分、ビックカメラは1,000円分の優待券がもらえる。どちらも保有株式数に応じてより多くの優待券がもらえるし、ビックカメラでは長期に保有することでさらに優待券がもらえるようになっている。

9月に優待が受けられる企業を見てみよう。9月30日に株主名簿に載ることで優待を受けられる企業に航空会社のANAがある。航空運賃や提携ホテルの料金の割引が受けられる。2018年9月30日は日曜日のため、配当や優待を受けるには、土・日曜日を含めず4営業日前を数えて25日(火)までに購入することが必要となる。

ANAでは100株以上保有していると「株主優待番号ご案内書」を1枚もらえる。保有株式数が多くなるにつれて枚数も増えていく。優待券を使うには、この「株主優待番号」を事前に登録することが必要だ。航空運賃は概ね半額になるのだが、繁忙期など料金体系が異なることもあるのでANAのサイトをあらかじめ見ておこう。

どの企業の株主優待にもいえるが、優待を受ける権利を得た後、それを使うのに具体的にどんな手続きが必要か企業の業種などで異なることもある。企業のサイトなどでよく確認しておこう

2018年7月末でイオンの株価が1株2,000円強、吉野家とビックカメラが2,000円弱だ。最低購入株式数(単位株)は100株なのでざっと20万円前後の費用は必要だ。ANAの株価は4,000円代なので40万円以上の費用が要る。株式は値下がりする可能性もあるが、株式を保有していれば配当金と優待券が得られ、株価が上昇すれば売買差益も狙える。自分のリスク許容度と相談してみよう。

上で挙げた以外にも様々な株主優待がある。どんな企業がどのようなもの行っているか、「会社四季報」などにも載っている。優待制度は株式投資の呼び水として雑誌やネットで話題になることも多い。こういった情報を参考にあれこれと選ぶ楽しみがある。

ただ、株主優待は法に定めがある制度ではない。配当金を得られる権利確定日と優待が得られる権利確定日とが必ずしも同じではないこともあるので要注意だ。また、企業側が任意で行っているものなので、変更や廃止も起こりえることに留意しよう。