(本記事は、藤本壱氏の著書『株初心者も資産が増やせる高配当株投資』自由国民社、2018年7月12日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
東証二部や新興市場からも高配当株を探す
日本株での投資は東証一部銘柄を対象にすることが多いですが、高配当株はそれ以外の市場にもあります。
●東証一部以外にも市場がある
日本の株式市場の中では、東証一部が圧倒的な存在です。日本を代表する企業が約2100銘柄上場していて、売買の9割以上が東証一部で行われています。
ただ、東証には他にも東証二部・JASDAQ・マザーズの3つの市場があります。これら3市場を合わせると約1500銘柄が上場しています。
東証二部には、東証一部に次ぐような規模の中堅どころの企業が上場しています。古くからの上場企業もありますが、JASDAQやマザーズから上がってきた企業もあります。
一方、JASDAQとマザーズは主に新興企業向けの市場で、伸び盛りの銘柄もあります。
●東証二部や新興市場にも高配当株がある
東証二部や新興市場というと、若い企業が多く、配当はあまり出さないようなイメージがありそうです。
確かに、上場してからまだあまり時間がたっていないような成長中の企業だと、利益を一切配当せずに、成長のための投資に回すことが多いです。
しかし、ある程度の成長企業になると、利益を配当に回すことも出てきます。
また、東証二部やJASDAQは古い市場なので、成長が止まったまま上場を続けている企業もあり、そうした銘柄は配当を出していることもあります。
実際、配当利回りの平均を出してみると、東証二部やJASDAQの平均は、東証一部の平均よりはやや低い程度でそん色なく、中には配当利回りが高い銘柄もあります。
●二部・新興市場銘柄は一部銘柄と違った値動きもある
東証二部や新興市場の銘柄も、日本の景気動向など、市場全体に関係がある要因から影響を受けるため、値動きの傾向は基本的には東証一部と同じようになります。
ただ、ときによってはそれと違う値動きをすることもあります。
例えば、東証一部の主要な銘柄に手詰まり感が出ると、「小型株」に物色の矛先が向いて値動きが良くなることがあります。小型株とは大まかにいえば、発行済み株式数が少なく、またさほど売買されていないような銘柄のことです。
小型株が物色される状態になると、ほとんどが小型株である東証二部や新興市場の銘柄も物色されやすくなります。
例えば、2017年の5月から8月にかけて、日経平均株価はほぼ横ばいの動きになっていた一方で、東証二部指数やJASDAQ平均株価は上昇を続け、異なる値動きになりました。
高配当をもらいながら東証一部昇格を待つ
東証二部や新興市場の上場企業は、東証一部への昇格を目指すところが多いです。
一部上場はステータスであり、社会的な信用が上がるなど、メリットが大きいからです。
なお、東証二部から一部に進むことを、正しくは「一部指定」、JASDAQやマザーズから一部に進むことは、正しくは「市場変更」と呼びます。ここでは、両者をまとめて「昇格」と呼ぶことにします。
東証一部に昇格すれば、より多くの投資家に注目されますし、TOPIX(東証株価指数)に連動する投資信託などから買いが入ることも期待されます。
これらのことから、東証一部に昇格した銘柄は、株価が上がることがよくあります。
そこで、東証二部や新興市場の中で配当利回りが高く、一部昇格の条件をほぼ満たしている銘柄を買い、東証一部へ昇格するのを待ちつつ、保有を続けるという手があります。
●東証二部・新興市場の高配当株選びと注意点
東証二部や新興市場の高配当株を選ぶ際の考え方は、基本的には東証一部銘柄の場合と同じです。
配当利回りが高いということだけで判断するのではなく、その他の指標も組み合わせて判断します。
ただ、東証二部やJASDAQならではの注意点もあります。まず東証一部銘柄と比べて流通している株数が少ないため、売買がしづらいときがあります。
買おうと思っても買えない(逆に、売ろうと思っても売れない)こともあります。
特に、何か材料が出ると株価の動きが一方的になりやすく、ストップ高やストップ安が連続することもあります。
もし、持ち株に悪材料が出てストップ安が連続すると、売り注文が数日にわたって約定せずに、株価だけがどんどん下がることも起こり得ます。
そこで、銘柄選びの際は、高配当に加え、「成長性を見つつ、安定した業績の裏付けのある厳選銘柄に絞る」「出来高が少なすぎる銘柄は避け、まずは東証一部に近いようなサイズの銘柄に絞る」といったことに注意します。
また、多くても投資金額全体の2~3割に留め、過度に投資しないことをお勧めします。
投資しすぎると値動きが大きくなり、安定した運用がしにくくなります。