(本記事は、藤本壱氏の著書『株初心者も資産が増やせる高配当株投資』自由国民社、2018年7月12日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
高配当株でも投資に適さない銘柄や注意すべき銘柄
高配当株投資をする上で、配当利回りが高くてもあまり投資すべきではない銘柄や、投資する際には注意が必要な銘柄もあります。
●株価や配当が大きく下がりそうな銘柄は避ける
高配当株投資は、中長期にわたって株を持ち続け、高い配当をもらいつつ、株価の大きな値上がりも狙うという手法です。
しかし投資期間が長期にわたるほど、株価が下がったり、配当が減ったりするという場面に遭遇する可能性が高くなります。
どのような銘柄であれ、多かれ少なかれ株価が下落する局面はあります。
ただ、頻繁に大きく下落するような銘柄もあれば、そうならない銘柄もあります。
投資する前に候補銘柄の業績や財務、過去の株価などを良く調べ、株価や配当が大きく下がりそうな要因がある銘柄はなるべく避けておくべきです。
以下に、注意点を挙げていきます。
●企業の実力以上に配当性向が高すぎる銘柄は要注意
株式会社の基本は、事業で利益を出し、それを株主に配当として還元することです。
したがって、利益が出ているのにろくに配当が出ないような銘柄は不適切です。
ただ、利益の大半を配当する(=配当性向が高い)銘柄が無条件に良いかというと、そうともいい切れません。毎年安定して利益が出ていれば、そこから高い配当を出し続けることも可能です。
しかし、利益が安定していないと、配当が年によって大きく変化することにもなります。そのような銘柄は株価が変動しやすくなり、長期保有にはあまり適さないことになります。
また、利益の大半を配当に回し、成長のための投資が不十分な場合もあります。そのような銘柄では長期的な成長は望みにくく、これも投資対象としては適切ではありません。
●利益を超えた配当を出している銘柄は要注意
配当の原資は利益ですから、基本的には配当はその年の利益の中から出すものですが、これまでに蓄積した利益の中から出すことも可能です。
そのようなケースでは、利益を超えた配当になることがあります。
例えば、これまで毎年安定した配当を出していた企業が、何らかの理由で利益が落ち込んだとします。
その場合、配当を減らす(減配する)と株価に悪い影響が出ますので、過去の利益の蓄積を一部取り崩して、配当を据え置くことがよくあります。
このような状況が1年だけなら特に問題はありません。しかし、利益が落ち込んだ状態が続いているにも拘わらず、配当を維持している銘柄は、リスクが高いといえます。
そのような企業は、いずれは配当を維持することができなくなり、減配や無配に追い込まれる可能性があります。
減配は株価に悪い影響を与え、株価急落の原因になります。
●利益を超えた配当を出している高配当株の例(SANKYO)
例えば、パチンコのメーカーであるSANKYO(6417)は、過去10年間にわたって1株150円の配当を続けています。
しかし、近年では売上や利益が減少傾向で、利益を超える配当を出すことが増えています。
SANKYOは現金をかなり持っているので配当を維持できていますが、この傾向が長く続けば、いずれは減配や無配になる可能性があるとも考えられます。
●配当利回りが高めだが割高な銘柄は避ける
基本的に、PERやPBRが高い銘柄は伸び盛りで成長性が高い銘柄に多く、利益を成長のために投資することが多いため、配当は出していないか、出していても少額なので、利回りは高くありません。
そのような銘柄が高配当株投資の対象になることは、あまりありません。
しかし、配当利回りがそこそこあるにも拘わらず、PERやPBRが高い銘柄もあります。こういった銘柄では、あまり成長性がないにも拘わらず、株主をつなぎとめるために高めの配当を維持していて、配当利回りの良さで買われている面があります。
配当を維持している間は株価も高値を維持しやすいですが、いざ減配になると、配当狙いをしていた投資家が一斉に売りに走り、株価が急落する恐れがあります。
●減配の発表で一気に急落した高配当株の例
例えば、京都きもの友禅(7615)は、2010年から2015年にかけて、株価は1000円前後で安定していました。
配当が年42円あり、配当利回りが4%程度あるために、配当狙いの買いに株価が支えられていたと考えられます。
しかし、着物需要の減少や、社員の定着率が下がったことなどから、2015年3月期に売上や利益が大きく減り、その後も減少傾向になって、PERが高い状態になっていました。
それでも株価は比較的高い状態を維持していましたが、2017年10月16日に年42円から24円に減配することを発表し、株価は700円台まで一気に急落しました。
●記念配当や特別配当で維持している銘柄は要注意
これまで「配当」という言葉を単純に使ってきましたが、配当には「普通配当」「特別配当」「記念配当」などの種類があります。
なかには、特別配当や記念配当の影響で配当利回りが高い銘柄もあり、注意が必要です。
特別配当は、何か特別な利益が出たようなときに行われる配当です。
また、記念配当は、「創立周年記念」や「東証一部上場記念」など、節目の際に行われる配当です。どちらも一時的に出る配当であり、毎年出る配当(普通配当)とは異なります。
ネット証券などのランキングの機能で配当利回りが高い銘柄を探すと、特別配当や記念配当も含んだ配当利回りの結果が出てきます。
そのため、特別配当などで一時的に配当利回りが上がっている銘柄が、ランキングの上位に出てくることがあります。
●特別配当で配当利回りが高い銘柄の例(丸三証券)
株価が1000円強であるのに対し、2018年3月期の配当は65円で、単純に配当利回りを計算すると6%を超えています。
しかし、65円の配当の内訳をみると、普通配当は35円で、特別配当が30円になっています。
また、特別配当は2019年と2020年も出る予定ではあるもものの、額は20円→10円と減らしていく予定になっています。
そのため、今後は配当利回りが下がっていくでしょう。
●高配当株でも業績変動が大きい銘柄は要注意
景気の影響を受けやすい銘柄では、業績が大きく変動しがちです。大きな利益を出すこともあれば、一転して大赤字に陥ることもあります。
そのような銘柄では、株価や配当の変動も大きくなります。
高配当株投資では、株価や配当が安定的に推移する銘柄が理想的です。
景気の影響を受けやすい業種として、金属、化学、機械、旅行・レジャーなどがあります。このような銘柄に投資する際は、世界的に景気が悪かった2009年~2011年頃の業績・配当の状況や、当時の株価水準などを調べて、どのぐらいまで落ち込む可能性があるかを確認しておくようにします。
●景気低迷期に落ち込んだことのある景気循環株の例(三晃金属工業)
株価が3500円近辺であるのに対し、今期予想配当は年150円で、配当利回りは約4%あります。
しかし、リーマンショック後の2010年や2011年には、三晃金属工業の株価は1500円程度まで落ち込んだこともありました。また、当時の配当はわずかに年15円で、現在の10分の1しかありませんでした。
したがって、例えば三晃金属工業に投資する場合は、景気が悪くなるとこれぐらい落ち込む可能性もあることを頭に入れておくといった必要があります。
●高配当株でも有利子負債が多い銘柄は避けたい
企業の資金調達の方法の1つに、借り入れがあります。銀行などの金融機関から借り入れたり、あるいは社債を発行したりなどの方法があります。
通常の借り入れには利子が伴います。
利子は費用の一種であり、企業の利益を減らす要因になります。利子が発生するような借り入れのことを、「有利子負債」と呼びます。
市場金利が上がったからといって、有利子負債の金利も連動してすぐ上がるわけではなく、固定金利で借りていれば、その金利は返済が終わるまで一定です。
しかし、現状で大きな有利子負債を抱えているような企業だと、今後も借り入れを行うことが考えられます。
市場金利が上がると、その後の新規借り入れでは高い利子を支払う必要が生じます。
現時点で有利子負債が多い企業は、将来的に利子の負担が高くなり、それによって利益が減ることが予想されます。
高配当株投資では、買った株を中長期的に保有することもあります。有利子負債が多い銘柄はあまりお勧めできません。