(本記事は、藤本壱氏の著書『株初心者も資産が増やせる高配当株投資』自由国民社、2018年7月12日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

景気循環の長期化と株価下落要因を考えておく

株初心者も資産が増やせる高配当株投資
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

近年、景気循環が長期化してきている傾向があります。今後の投資を考える上で重要なポイントですので、この点も考慮に入れて考えてみます。

●景気の波は上下動を繰り返す

株式市場はさまざまな要因から影響を受けますが、最も大きな要因は景気の動向です。

景気が良くなれば株価も上がり、逆に景気が悪化すれば株価は落ち込みます。

景気は拡大し続けることはありませんし、逆に悪くなり続けることもありません。景気の良し悪しは波のように上下動を繰り返します。

2012年月に第2次安倍政権が発足し、翌年から「アベノミクス」と呼ばれる経済政策がとられました。また、2013年4月から日本銀行が異次元金融緩和を始めました。

これらによって円安が進み、輸出企業を中心に業績が改善しました。

しかし、その前の2008年から2012年にかけては、リーマンショックや東日本大震災の影響で、景気が低迷する時期がありました。

●景気循環のサイクルが徐々に長くなっている

第二次世界大戦後の過去の景気拡大局面を見ると、2002年1月~2008年2月の73ヵ月間が最長でした。

この頃は、BRICsを中心に世界的に景気が拡大しました。

また、1980年代末のバブル景気の頃は51ヵ月間景気拡大が続いたとされていて、戦後4番目の長さとされています。

現在の景気循環は、戦後では16回目の途中です。すでに景気拡大局面が70ヵ月近くになっていて、戦後2番目の長さです。

今の状況が続けば、戦後最長になる可能性もあります。

●東京オリンピックの前年(2019年)から景気後退?

そろそろ景気拡大が終わり、景気後退に入る可能性も十分にあると考えられます。

日本では、2020年に東京オリンピックが開催されます。

この東京五輪が景気の転機になる可能性があるといわれています。

1984年以降の過去の9回の夏のオリンピックで、オリンピックの前後で開催国の経済成長率がどのように推移したかを調べてみました。

すると、9回のうちの6回で、オリンピック開催年より翌年の方が、経済成長率が下がっていました。また、前年→開催年→翌年と経済成長率が連続して下がったことが5回ありました。

オリンピックが近づいて建設が一段落すると、景気が悪化することは十分に考えられます。

ちなみに、日本では1964年にも東京オリンピックが開催されましたが、1964年から1965年にかけて、オリンピックの反動で「昭和40年不況」や「証券不況」と呼ばれる不況が起こりました。

●消費税増税も懸念材料

景気に対するもう1つの大きな懸念材料に、消費税の増税があります。

当初は2017年4月からの予定でしたが、2年半延期されて、2019年10月に10%へ引き上げられる予定です。

消費税は1989年4月から、税率3%で導入されました。

その年は年末まで日経平均株価が上昇して市場最高値をつけましたが、翌年以降はバブルが崩壊して、株価が大幅に下落しました。

また、1997年4月に消費税が5%に引き上げられましたが、株式市場は増税前の1996年6月から下落し始め、1998年月頃まで下落トレンドが続き、日経平均株価はその時点でのバブル後最安値をつけました。

2014年4月に税率が8%に引き上げられたときは、株式市場にはさほど影響は出ずに済みました。

しかし、1989年と1997年には大きな影響が出ていることや、本書執筆時点で株価が好調な状態が長く続いていることから、オリンピックの影響と合わせて、2019年10月の消費税増税が、株式市場の転機になる可能性があります。

●株価の大幅下落の恐れも

バブル崩壊以降の日経平均株価の動きを見ると、下落し始めると、底を打つまでに大きく下がる傾向が見られます。

「山高ければ谷深し」という相場格言がありますが、まさにその通りの動きをしています。

ちなみに、2003年4月に株価が底を打ったときは、その前の2001年9月11日に米国同時多発テロが起こり、10月からは米英などがアフガニスタンを攻撃して、アブガン戦争が起こっています。

さらに、2003年3月19日から米英などが軍事介入してイラク戦争が起こり、1ヵ月程で大規模戦闘が終結するという経過をたどりました。また、2008年10月の底は、リーマンショック(2008年9月15日)の影響によるものです。

●高配当株も市場の長期下落では低迷を避けられない

高配当株は、株価が下がると配当利回りが相対的に上がって魅力が増すので、下がりにくい(下げ止まる)傾向があります。

しかし、2003年や2008年のような大幅な株価下落が起こると、さすがに下げ止まることは難しいです。

例えば、配当の優等生である花王(4452)でも、リーマンショックでは大幅な株価下落に見舞われました。

市場全体が好調だった2007年夏頃には、3000~3500円程度でした。

しかし、2008年10月には安値で2195円をつけ、さらに2009年3月には1746円をつけたこともありました。およそ半値まで下がったことになります。

当時の日経平均株価の高値からの最大の下げ幅は60%強なので、花王の下げ幅は日経平均株価よりはましですが、小幅な下げでは済んでいません。

その後、2011年3月11日に東日本大震災と福島第1原発の事故があったりした影響で、株価が反転するのにも時間がかかりました。

2007年夏頃の株価水準に戻ったのは2013年に入ってからのことで、6年近く低迷が続きました。

株価低迷期の対処法

今後景気が悪化することによって、株式市場が低迷期に入る可能性もあります。

高配当株投資をする前に、それも頭に入れておく必要があります。

定期的に買い増しして平均買値を下げる市場低迷期の1つの対処法は、有望な高配当株を定期的に買い増し続けることです。

ナンピン買いのような買い方になり、平均買値を下げることができます。

そして、配当をもらいつつ、景気回復と株価上昇を待ちます。この場合、「ドルコスト平均法」がよく使われますが、これは定期的に一定額ずつ買い増していく方法です。

安い時期に多くの株数を買うことになるので、平均買値を下げやすくなります。ただし、買い増しの途中で銘柄に大きな悪材料が出ると、かなりの損失を受ける恐れがあります。

厳選した銘柄であっても複数銘柄に分散して、リスクを抑える必要があります。

●周期のある高配当株は秋に買って春に売る

日本の株式市場の動きを見ていると、秋から春にかけて上がりやすい傾向が見られます。

以下のようなことが重なって、傾向ができていると考えられます。

1)3月決算企業が多いので、5月頃になると「決算発表まで様子を見たい」という投資家が増えて、慎重な動きになりやすい
2)7~8月には夏休みなどがあり、いわゆる夏枯れ相場で、出来高が細くなりやすい
3)外国人投資家が夏場は買いを控えやすい

1990年から2017年の28年間の日経平均株価を対象に、その年の10月末と翌年4月末の株価から、秋から春での騰落率を求めてみると、28年のうち、プラスになったのが19年、マイナスになったのが9年で、秋から春にかけて上がりやすい傾向があるようです。

そこで、過去のチャートで銘柄の動きを見て、秋から春にかけて上昇し、夏頃から下がって秋に底を打つ傾向のある高配当株であれば、次の方法を取ることができます。

1)秋(10月〜11月頃)に買う
2)3月末の決算期末に株を持ち続けて配当をもらう
3)4月頃に売る

この方法だと、3月末と9月末の2回に分けて配当を出す銘柄では、3月末の配当しか得られないというデメリットがあります。

しかし、株価が上がりやすい時期だけ保有することになるので、値上がり益が得やすくなるメリットがあります。

もちろん、春以降も下がらずに上昇が期待できる場合は、そのまま持ち続けることを考えましょう。

株初心者も資産が増やせる高配当株投資
藤本壱(ふじもとはじめ)
1969年兵庫県伊丹市生まれ。神戸大学工学部電子工学科を卒業後、パッケージソフトメーカーの開発職を経て、現在はパソコンおよびマネー関係の執筆活動のほか、ファイナンシャルプランナー(CFPR認定者)としても活動している。著書に「新興市場・2部銘柄で儲ける株」「上手に稼ぐカラ売りテクニック」「個人投資家が勝てる低位株投資」「実戦相場で勝つ!株価チャート攻略ガイド」「FXはチャートで勝つ!」「Excelでできるらくらく統計解析」(以上、自由国民社)、「プロが教える!金融商品の数値・計算メカニズム」(近代セールス社)などがある。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます