関西に上陸した台風21号が大きなつめ跡を残す中、6日未明には北海道を震度6強の地震が襲った。空港閉鎖や停電など、災害に対する都市インフラの脆弱(ぜいじゃく)さが露呈し、国土強靭(きょうじん)化の必要性が改めて意識される。秋の臨時国会でも議論が深まる可能性が高く、防災関連株への注目度が高まりそうだ。
北海道の胆振地方中東部を震源とする地震は震度6強の揺れを観測し、その後も余震が続いている。北海道電力(9509)管内のすべての火力発電所が停止し、一時道内全295万戸が停電に陥った。新千歳空港はターミナルビル内の天井崩落や漏水の影響で6日は全便が運休。一時道内の全鉄道も停止した。
4日から5日にかけ台風21号が通過した近畿地方では、人工島にある関西国際空港が本土との連絡橋の破損などにより閉鎖に追い込まれたほか、強風による電柱の倒壊。相次ぐ災害で、都市部のインフラのもろさが浮き彫りとなった。今後30年間に70~90%の確率で発生するとされる南海トラフ地震への備えも含め、国はこれまで以上に防災対策に本腰を入れるべきだろう。
北海道で起きたような直下型地震は、都市部でも発生する可能性がある。水道やガスなどライフラインを支える設備も多くが老朽化しており、潜在する更新需要は膨大だ。また、人的・経済的な被害を抑制するための街づくりも喫緊の課題となっている。臨時国会で補正予算が組まれる可能性も高まってきた。
株式市場でも、年終盤の最大の物色テーマとなりそうだ。この日は早速、建設セクターの一角に資金が向かった。海洋土木の東洋建設(1890)や五洋建設(1893)のほか、直近株式新聞でも取り上げたゼネコンの前田建設工業(1824)や消波ブロックの日建工学(9767・(2))が高い。建機レンタル大手のカナモト(9678)など、北海道の復興銘柄の思惑買いも目立った。
有力な対策の一つが道路の無電柱化だ。地中に電線を埋めることで、切断した電線に人や自動車が接触する被害や、電柱が倒壊するリスクがなくなる。景観にも優れ、国土交通省では来年度予算案でも無電柱化を後押しする方針だ。代表的な関連銘柄は、コンクリート製品のイトーヨーギョー(5287・(2))やゼニス羽田ホールディングス(5289・(2))、地中埋設用ケーブル防護管のタイガースポリマー(4231)などが挙げられる。
株式新聞では特に、大盛工業(1844・(2))に注目している。同社は地中工事に強みを持ち、独自技術の「OLY工法」を展開する。
同技術は、地下に構造物をつくる際に掘削した側面を保護する「鋼製L型山留(OLY)」と呼ばれる特殊な鋼材を使い、工期を短縮する工法。従来は繰り返し行う必要があった埋設の作業の回数を減らせる上、安全性も高まる。大盛工が地盤とする東京都の小池都知事は、無電柱化に積極的だ。
大盛工の株価は、200円台の低位ゾーンを推移している。1月高値(328円)から一服して中段もちあいが続く格好。2013年には800円を付けるなどポテンシャルは大きく、この調整局面を抜ければ楽しみだ。東京五輪の聖火台よりも先に炎が灯(とも)るかもしれない。
このほか、災害時の水の備えでウオーターサーバーのプレミアムウォーターホールディングス(=プレミアムW、2588・(2))、OSGコーポレーション(6757・JQ)などをマークしたい。災害に強いプロパンガスでは、サーラコーポレーション(2734)、大丸エナウィン(9818・(2))が浮上。発電機のやまびこ(6250)も外せない。(9月7日株式新聞掲載記事)
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