バフェット
(画像=Krista Kennell / Shutterstock.com)

ウォーレン・バフェットの投資の考え方

【第5回】まででウォーレン・バフェットの投資実績について紹介してきたが、今回【第6回】ではそれらの投資の共通点、いわばバフェット氏が投資に際して持っている根本的な考え方について解説する。

バフェット氏の投資実績を知ることはもちろん重要だが、根本的な考え方を知ることで、「なぜその投資を行ったのか」「どのような根拠を基に利益を確信したのか」といったバフェット氏の思考原理を自分なりに解析できるようになるだろう。

企業ブランドの価値とは

「ブランドのマネタイズ」について考える前に、バフェット氏が重視する、企業のブランドとはいったいどのようなものか考えてみる。

消費者行動分析やブランドマネジメントに詳しい青木幸弘氏の論文「ブランド研究における近年の展開」によれば、ブランドの概念が確立されたのは、輸送や通信が発達し物流と情報の拡散が始まった19世紀末である。

それまで地域ごとに移動が限定されていた市場が広く地域や国境までも越えて拡大していく中で、製品の標準化と大量投入によって市場を創造するために必要とされたのが商品、企業のブランド。

現代に至るマーケティングに結びついたブランドの考え方は、米国で1980年代に登場した「ブランド・エクイティ」(brand equity)の概念が基になっている。これは、イメージや顧客ロイヤリティといったもともとのブランドの概念に、マーケティングによって得られた市場・顧客情報の結果を統合し、資産的価値を与えるというものだ。

1990年代になるとマーケティングにおけるブランドの重要性はますます高まり、ブランディングの強化戦略へと関心が向けられていく。どの企業も「どうやって強いブランドを作り上げるのか」、「自社のブランドの『本質的意味と価値』とは何か」を追求し始める。

企業のブランドを理解するには、ブランドが構築されるための段階的な構造を知らなければならない。基本となるのは優れた製品力、つまり製品の競争優位性だが、そこに消費者の感覚的な価値が上乗せされていき、さらに商品の価値が企業のイメージも高めていく。こうして企業は強力なブランドを確立していくのだ。

コカ・コーラを例にすると、最初は単なる美味しい炭酸飲料だったのが、大勢の消費者の中で良いイメージの飲み物となり、最終的にはコカ・コーラの商品価値がコカ・コーラ社の企業ブランドを強化していった。

つまり、企業のブランド価値とは、消費者に支持され、受け入れられる競争力のある商品によってできあがっていくものなのだ。ブランド価値の源泉は製品やサービスそのものではなく、消費者の体感や経験から生まれ強化される。

消費者の体験が生み出す企業ブランドは、長期的に永続力がある。消費者に価値を認めてもらう商品の価値を維持できればブランド価値が失われることもない。バフェット氏は、このような企業を「深くて大きいモート(堀)がある」企業と呼び、参入障壁が高く他社が簡単には追随できない競争力のある企業として賛美している。

「深くて大きいモート(堀)がある企業」に集中投資