医療損保の事例

【第1回】で大手製薬会社への投資事例を紹介したが、比較的近い業界への投資事例としては米医療損保の買収事例がある。ここ数年のバフェット氏の投資実績のなかでは大規模かつ注目されている事例なので、ぜひとも把握しておきたい。

IT業界や金融業界ほどの真新しさやバフェット氏自身の方針転換は見られないが、従来のバフェット氏の投資戦略が色濃く反映された事例と言えるだろう。

買収総額は約2875億円と推定

2016年「オマハの賢人」と称されるウォーレン・バフェット氏が率いる米投資持株会社、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオに、新たな銘柄が加わった。傘下となったのは、医療損害相互保険会社メディカル・ライアビリティー・ミューチュアル・インシュランス・カンパニー(Medical Liability Mutual Insurance Company/MLMIC)。

ニューヨークに本社を置く同社の買収総額は27億ドル(約957億8700万円)と見積もられていた。

メディカル・ライアビリティーは2016年7月18日、両社が正式に買収合意契約を締結したと発表。2017年第3四半期の買収完了を目途に、規制当局と保険契約者の承認後、同じくバークシャーの子会社である、ナショナル・インデムニティー・カンパニー(National Indemnity Company/NICO)に合併されることになる。

買収に関する財務条件は開示されなかったが、2015年12月末に公開されたメディカル・ライアビリティーの保険契約余剰金18億ドル(約1916億4600万円)であるなどを考慮にいれ、米投資会社、KBWは買収総額を27億ドル(約2874億6900万円)前後と推定していた。

バフェット氏はメディカル・ライアビリティーの、40年間にわたる医療損害相互保険会社としての実績を、「ほかに類を見ない偉業」と見なし、バークシャーの傘下に加わえることで「さらなる飛躍を支援する」とコメントしている。

メディカル・ライアビリティーのロバート・メノッティ社長も、バークシャーのような国際的に知名度の高い企業の後ろ盾を得たことが、「自社にとっても顧客にとっても、大きなプラス要素をもたらすだろう」と確信している。

バフェット氏流長期熟成型で安定性を狙う