高度経済成長やバブル期に盛んに謳われた「脱サラ」や「独立」という言葉。これらの響きには背水の陣で臨む、一種の気概が窺えたものだ。時代背景をかんがみるに、安定した終身雇用を投げ捨てて起業するのだから、一度失敗したらもう取り返しがつかなかったことが覚悟の最たる理由だろう。しかし近年、スモールビジネスを展開するための環境やインフラはますます充実し、起業のハードルはより低くなってきている。

働き方や消費者の嗜好が多様化してきた現代、独立はもちろん、会社員でも本業を続けながら起業ができるようになってきた。会社員の方々も「自分は勤め人だから」と投げることなく、より果敢に起業にチャレンジしてみる価値はあるだろう。そこで、本稿では会社員の起業について考えてみたい。

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(写真=PIXTA)

アイデア不要! どんな人でも起業はできる

起業というと、まずは、今までにない暫新なアイデアありきで始まると思っている人は少なくないようだ。確かにメディアなどは新規性を大事にしているため、そのようなものばかりがクローズアップされがちである。しかし、実際には従来からあるビジネスをうまく運営している人もたくさんいる。会社員であれば、これまでの勤務経験から何かしらの得意分野があるはず。それは人事しかり、営業しかり、経理しかりである。まずはそうしたスキルをどう活かすかを考えるのも一法だ。

・クラウドソーシングを利用する
スキルを持った人と仕事を依頼したい人をWEB上でマッチングするクラウドソーシングのサイトを利用するのも起業の足掛かりとして適している。ライティングやイラストなどのほか、ホームページ作成、クラウド会計ソフトを使用した記帳代行など幅広い依頼が掲載されているので、どのような需要があるのか参考にすることも可能だ。

・フランチャイズや代理店という方法も
興味のある分野はあっても、ビジネスの形に持って行くのが難しいという人にはフランチャイズや代理店の精度を利用するという選択肢がある。一般的なフランチャイズ契約では、加盟金や毎月のロイヤリティーを支払うことで店やサービスの商標を利用できるほか、集客のノウハウや運営に関するアドバイスを受けられるものも多い。収益モデルが確立しているので、事業計画を立てやすいという利点もある。

また、代理店制度では、商品やサービスを自前で用意することなく、ビジネスを始められる点が優れている。つまり、販売することにだけ集中できるため、営業が得意な人には向いている形態といえる。

・後継者を求めている会社がたくさんある
中小企業の経営者の平均年齢は増加の一途をたどっている。事業承継は多くの企業にとって関心事となっているが、後継者不足に悩んでいる経営者が多いのも事実だ。サラリーマンが小規模なビジネスを買い取って起業するというのも有望な選択肢といえる。

サラリーマンが起業する際に気をつけておくべきこと

・独立する際には資金繰りに気をつける
サラリーマンは毎月安定的な給与をもらえる点が最大の魅力だ。起業すれば、売上や利益は自分の努力や才覚次第で大きく変動する。ビジネスをスタートさせて、いきなり黒字になることは少ないため、数ヵ月から1年程度は赤字が続いても生活できるだけの資金計画を立てておきたい。

・事業計画を立てることが重要
企業の際、まずは事業計画の策定をする必要がある。事業計画は、経営者である自分への報酬も含めた上で策定し、初期投資と運転資金を合わせて、大まかにでもどれくらいの資金が必要になるのかを把握するべきだ。また、創業時に活用できる補助金や融資などの情報も収集しておくと良いだろう。

・副業から始める方法も。ただし、副業禁止規定に注意
いきなり「脱サラ」や「独立」を目指さなくても、副業としてビジネスを開始して、軌道に乗りそうなところで本業に切り替えるという方法も考えられる。2018年1月に厚生労働省が公表した「モデル就業規則」も副業できることを前提にした文言になっている。ただし、まだまだ副業を禁止している企業も多いため、自社の就業規則をよく確認することが大切だ。

サラリーマンが起業したとき、はたして税金は?

サラリーマンが個人事業主として起業した場合には、原則として2月16日から3月15日までの期間に所得税の確定申告を行うことになる。確定申告をするためには売上や経費について記帳することが必要となるため、申告時期になって慌てなくて良いように準備をしておこう。

なお、副業をしているサラリーマンも給与所得以外の所得が20万円を超える場合には確定申告が必要となるので合わせて注意されたい。