高いリターンが狙える可能性のある海外の株式や債券は投資対象として魅力的です。外国株や外国債券で運用する投資信託には多くの場合、「為替ヘッジあり/なし」の2つのコースが用意されていますが、その違いはどこにあるのでしょうか?

為替リスクをヘッジする方法とは?

外国投資信託の為替ヘッジ
(画像=Ae Cherayut_shutterstock)

外貨建ての投資では、為替変動によって円建てで見た場合の収益が目減りしたり、損失が出てしまったりするリスクに注意する必要があります。たとえば、1ドル100円のときに100万円=1万ドルの米国株に投資した場合、その株が20%上昇するとドル建てで見た資産残高は1.2万ドルまで増えます。しかし、1ドル80円まで20%の円高が進行すると、円建て換算では1.2万ドルが96万円に目減りするので、4万円の含み損をこうむることになります。

こうした為替変動リスクを軽減するため、外貨建てで運用する投資信託には「為替ヘッジあり」のコースが用意されているのが一般的です。為替ヘッジとは、外貨建て商品に投資するのと同時に、一定の為替レートで日本円と外貨を交換する契約を結んで、保有する外貨建て資産が為替変動による影響を受けないようにする取引のことです。

その方法には、たとえば3ヵ月先に1ドル何円で取引するという先物取引を使った「スワップ取引」や、「3ヵ月後に米ドルを何円で買う権利」を売買する「オプション取引」などがあります。ただし、為替ヘッジしてしまうと、為替レートが円高に振れて損失をこうむるリスクがなくなる代わりに、円安に振れることで、円建てで見た資産が増えるチャンスも手放すことになります。

為替ヘッジには金利コストがかかる

為替の先物取引は、交換する2ヵ国の金利差の影響も受けます。たとえば、直近で円を売ってドルを買い、3ヵ月後に円を買ってドルを売る為替ヘッジの取引を行うのは、ある意味、3ヵ月という期間、ドルを借りて円を貸すことを意味しています。ドルを借りるときに支払う金利と円を貸すことで得られる金利の差額が為替ヘッジの金利コストになるのです。

最近の米ドルの為替ヘッジコストは米国短期金利の指標になる政策金利が2%台まで利上げされたこともあり、2.5%前後まで跳ね上がっています。つまり、たとえ米国の金融商品で3%近い収益を得ることができても、為替ヘッジと投資信託の信託報酬のコストがそれを上回ってしまうと、運用資産が目減りする可能性も高くなってしまうわけです。

ヘッジあり/なしは簡単に変更可能

そう考えると、今後も短期金利の上昇が続きそうな米ドル建て資産に投資する投信を購入する場合、現状、為替ヘッジありのコースを選ぶのはあまり得策とはいえないかもしれません。多くの投資信託では「為替ヘッジあり/なし」のコースを変更(スイッチング)可能なので、状況にあわせてコース変更していくのもいいかもしれません。ただし投資信託を購入する銀行や証券会社によって条件は異なります。

逆に日本と同様に中央銀行がマイナス金利政策を続けている欧州通貨ユーロと日本の金利差は2016後半~2018年にかけて、わずかですがマイナスで推移しています。つまり、為替ヘッジをすることでコストがかかるどころか、逆に日欧金利差の分だけプラスのリターンを得られる状況です。

外貨建て商品に投資する際は、為替ヘッジのコストについてもよく理解したうえで、適切にヘッジをかけたり、かけなかったり、臨機応変に対応できるようになりたいものです。

(提供:フィデリティ投信