前日の海外時間では、NYダウの急落を受け急速にリスク回避の動きが強まりました。高止まりする米長期金利が嫌気され、NYダウが830ドル超下落したほか、ナイト・セッションの日経平均先物が790円下げたことにより、ドル円を筆頭としたクロス円は急落、本日の東京時間でも日経平均株価が900円超の下落を演じていることから、ドル円は112円割れの水準まで下落幅を拡大しています。NYクローズ後、トランプ大統領が「市場の急落は長い間待たれていた調整だ」との発言もあり、さらに急速な調整を後押ししたものと考えられます。

ムニューシン米財務長官が中国の為替操作の可能性に言及したことにより、今週の金曜日に予定されているのではないかと言われている米財務省半期為替報告書にて中国が為替操作国に認定される可能性が高まり、さらに日米交易摩擦が混乱する恐れをマーケットは懸念しており、トランプ大統領がさらに過激な発言をするようであれば、もう一段調整のドル売り、円買いという動きになるかもしれません。ただ、今回の一連の動きを受けて12日金曜日ではなく来週15日前後に報告書が挙がってくるのではないかとの思惑もあり、マーケットが疑心暗鬼になる以上、トランプ大統領の一挙手一投足が大きく影響してきそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今週金曜のNY時間に発表される可能性が高い米財務省半期為替報告書が来週になるのではないかとの思惑により、より中国が為替操作国に認定される可能性を意識する時間が増え、リスク回避の動きを誘発しやすい地合いとなっています。

ドルの急落により、ユーロドルは1.1570ドル台、ポンドドルでも1.3240ドル台まで回復しているものの、ユーロドルは14日のドイツのバイエルン州議会選挙での政権与党の苦戦懸念、15日までに欧州委員会へ提出される予定のイタリアの2019年度予算案への警戒感から伸び悩む展開が予想されます。ただ、ポンドドルについては15日までに英国のEU離脱条件で合意が得られる可能性、英国とEUがアイルランド国境のハードボーダーを回避するための協議で前進、16日のメイ英内閣閣僚会議でアイルランド国境問題を巡る妥協案、関税同盟に留まる案が協議されることが予定されており、ユーロとポンドについてはそろそろ方向感がバラバラになってくるかもしれません。

ユーロドル一時的に上昇も、下値材料の方が依然として多い

想定外のドル売りの動きがあったものの、1.1580ドルの損切りのラインはなんとか死守しています。1.1550ドルの売りポジション、利食いについては1.1430ドル付近を理想としていましたが、1.15ドル割れである1.1480ドル付近に引き上げ、当面様子見とします。

海外時間からの流れ

NY時間については、NYダウ急落によりドル売りが主導しましたが、欧州時間ではサルビーニ、ディマイオ両イタリア副首相が相次いで予算案の変更を否定したことからイタリア株が売られ、ユーロの上値が意識されたことから、ユーロの上昇についてはユーロの買い戻しというよりはドル急落による副産物と考えた方がよさそうです。

今日の予定

本日は、トルコ・8月経常収支、米・9月消費者物価指数、米・新規失業保険申請件数(前週分)などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。