訪日外国人の数は2016年に年間2,000万人を突破したあとも増え続けています。2018年は8月15日時点で早くも2,000万人を突破し、東京五輪が開催される2020年の4,000万人突破も視野に入ってきました。最新の訪日外国人の内訳(2018年7月)を見ると東南アジア、インドを合わせたアジア圏からの来訪者が84.6%、なかでも中国の31%、韓国の21.5%が突出して多く、この2ヵ国に台湾、香港を加えた東アジア圏で実に76.8%に達しています。中国などアジア圏の来訪者はいったい何を求めて日本にやってくるのでしょうか?
アジア圏の訪日リピーターが日本に求めるもの
訪日外国人の4人に3人は東アジア人という中、大きな特徴といえるのがそのリピート率の高さです。観光庁が行う訪日外国人の消費動向調査(2017年)によると、1度ならず2度、3度と繰り返して日本を訪れる外国人の割合は実に6割以上に上り、その9割弱は東アジアの人たちです。
何度も繰り返して訪れるというのは、最初の旅行に不満を感じることなく、「また来たい」という思いが強くなっていることの表れです。観光庁が東アジア4ヵ国の訪日リピーターを調査した結果では、訪日回数が増えると旅行で使う支出も増加傾向になり、地方訪問、ひとり旅、個別手配の割合が上昇して、「日本のお酒を楽しむ」「温泉入浴」といった滞在行動が増えるようです。
特に中国人の場合、訪日観光客の実に半数近くがリピーターになっています。「爆買い」という言葉が流行したように、訪日中国人といえば、買い物にお金をかけることが有名です。実際、2018年4~6月期の観光庁の調査によると、1人あたりの買い物金額は約10万円で、訪日旅行客全体の平均値である約4万7,000円の倍以上になっています。
日本の生活環境のよさもリピート率の高さの理由?!
確かに買い物は訪日中国人にとって日本訪問の一番の目的かもしれません。しかし、買い物のためだけに何度もリピートして日本を訪れるものでしょうか? ある中国メディアが特集した「中国人が日本を好きになる理由」で挙げられた一番の要因は、「環境のよさ」です。大気汚染や交通渋滞に悩まされる中国の人々にとって、空の青さや街の静かさやきれいさなど都市部の生活環境のよさが大きな魅力になっている傾向です。
確かに、アジアの各国を旅して日本に帰ってくると、車やバイクの騒音が抑えられた静かな街、ゴミひとつ落ちていないきれいな道、晴れた日には青く澄み切った空などを日本人でも再発見するでしょう。大都会にもかかわらず緑も豊富で、建物の美観も一定以上に保たれ、段差の少ない街の通りはとても歩きやすく快適です。
東京五輪に向けてさらに磨きをかけたい居心地のよさ
世界中を魅了する食文化や四季折々の美しい自然、アニメ、漫画などオタク文化に代表されるクールジャパンも確かに、日本の大きな魅力です。ただ、急速な経済成長で大気汚染や騒音など数多くの環境問題を抱えるアジア圏の人々にとって、日本の都市環境のよさは、何度も訪れたくなる理由のベースになっている可能性はあるでしょう。
2020年の東京五輪開催年には多くの訪日観光客が世界中から日本を訪れます。オリンピックで日本を訪れた人々がその後もリピートして日本を訪れてくれることこそ、東京五輪を開催する意義のひとつといえます。
通勤ラッシュの緩和や外国人にもわかりやすい鉄道案内、安価なホテルの提供など、より快適な旅行ができるような環境整備はこれからも必要です。そして、何より訪日外国人を歓待するホスピタリティの意識の強化などが、五輪まであと2年に迫った日本に求められていることといえるでしょう。
(提供:フィデリティ投信)