(本記事は、金川顕教氏の著書『いつの間にか稼いでくれるすごいチーム』KADOKAWA、2018年9月29日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
仕事で「何がやりたいの?」と聞いてはいけない
結果が出ていない人に対して上司や人事が面談のときに聞きがちなのが、「君は(仕事で)何がやりたいの?」という質問です。
私は結果が出ていない人に対して、いちばんしてはいけない質問です。なぜなら、その人はその時点では絶対に明確な答えなど持ちあわせていないからです。
社会人経験の乏しい人が、「どんな仕事がしたい?」「仕事の目標は?」と聞かれて、困ってしまうのと同じです。
私も会社員時代を思い返すと、上司に「仕事で何を達成したい?」と聞かれても、すぐには答えられなかったと思います。しかし、プライベートでの目標は強烈なものがありました。
だいぶ前の話になりますが、私は最初のアルバイトで、うどんやラーメンを作っていました。
ところが、自ら強く望んでそのアルバイトをやっていたわけではありませんでした。お金のためにやっているだけでした。
ですので、当時は仕事に対してかなりのやらされ感を持って働いていました。
つまり、私の仕事に対する最初の印象は、とてもネガティブなものだったのです。当時は、仕事そのものを楽しむことなど考えられませんでした。
仕事とは人がやりたがらないことをやる代わりにお金がもらえる、そんなふうに割り切っていました。
一方で、私は親の離婚の影響でお金に苦しんでいた時期があったため、お金持ちになりたいと強く切望していました。
そして、お金持ちの象徴が「タワーマンション」でした。
年収の高い人がいる同じマンションに住むと、エレベーターやエントランスなどで、彼らを毎日見かけることになります。その雰囲気に触れることで刺激を受ければ、絶対に自分は変われると思っていたのです。
そういう個人的目標があったため、会社員になったときのやる気は高かったと思います。
実際、会社員になって1年目にタワーマンションに引っ越しました。そこは下層階だと家賃がだいたい10万円ぐらい、いちばん上の階だと70万円くらいするところです。
70万円を毎月払える人はなかなかいません。
当時、私は下層階に住んでいたのですが、エレベーターを待っていると、上層階で止まります。
すると「上の人が乗ってくるな」と予想がつくので待ち構え、扉が開くや否やお金持ちを観察するのです。
「ああ、こういう感じになったら、上層階に住めるんだ」。そういう人間観察を毎日やっていました。実際、上層階の内見にも行ってみました。
当時は車も欲しかったので、フェラーリを試乗しに行ったこともあります。
販売員さんから「いかがですか?」と聞かれますが、当時の私の月収ではとうてい買えません。「もう少し考えます」と言って退散するのは、悔しかったものです。
しかし、私はこのように、家や車が欲しいといったプライベートな目標を仕事とリンクさせることで、それらを達成してきました。
おおむね達成して思うことは、やりがいを持って仕事に励んでいる人は、仕事そのものが大好きだということです。
そしてそういう人は、「仕事=人生」であり「仕事=幸せ」です。
仕事が、やりたいことや欲しいものにつながっていれば、仕事そのものが楽しく人生ハッピーなのです。
・最初は不純な目標でいい
私のような考え方をしていると、「プライベートの目標を達成する」=「仕事の目標を達成する」ということになります。
裏を返せば、仕事に対してやる気のないメンバーには、まずプライベートの目標を掲げさせて、それを達成するための仕事の目標を設定すべきだと考えています。
最初は不純な目標でいいのです。
モテたい、いい車が欲しい、銀座へ気軽にお寿司を食べに行けるようになりたい……人が聞いたらどう思うかなんて関係ありません。本当に自分が望んでいることなら何でもいいのです。
最近の若い人は、夢を持っていないなどと言われがちですが、私はそうは思いません。
周りに「こうなりたい」と思えるようなロールモデルがいないだけです。
私のチームの報酬はフルコミッションなので、収入が高い人は、一般企業などと比べられないほど高額になります。
月収1000万円の人もざらにいるわけです。
当然、同じチーム内にもいますから、そんな人たちのプライベートを見れば、自ずと、自分もこうなりたいという目標が生まれやすい環境になっています。
また、何をどれくらい売ればこれくらいの収入になるということがすぐにわかるため、がんばりやすいということも利点です。
不動産だったら、1件物件が売れたら150万円、5件売れば750万円になります。
普通の会社では、どんなにいい結果を出しても、自分の給料が大幅にアップすることはないでしょう。また、やり遂げた仕事の数から給料を予測することなどできないでしょう。
こういうビジネスモデルなので、リーダーたちもモチベーションが低下している人に対して、話がしやすいのです。
「ポルシェが欲しいんだよね、だったらあと5件売れば買えるよ」
「あと5件売るためには、こうすればいいと思うよ」
言われる側も、何をどうがんばれば、どうなるのかがわかるので納得しやすい。加えて、社歴や階級などに応じた賃金テーブルもありません。
収入の限界値がなく、やればやるだけ返ってくるというのは、非常にやりがいのあることだと思います。
メンバーは「感情」で動かす
私は、リーダーたちが営業マンに何かを説明する際、「なぜ」ということを意識して説明するようにさせています。
「なぜ」がないと、動く理由がわからないからです。
もちろん、中には、さまざまな状況から鑑みてそうする理由を自分で見つけられる人や、とりあえず言われたことはやっておこうというタイプの人もいるでしょう。
しかし、それができない人が少しでもいるならば、私は理由を説明してあげるほうが効率的だと思っています。
その際、なぜこれをやらなければいけないかという理由とともに、それをやったらあなたはどうなるか、やらないとあなたはどうなるかまで付け加えて話します。
言わなくてもわかるだろうというケースもあるでしょうが、どこまでわかっているかは人によってさまざまです。
ですから、「何回も聞いた」というような話でも、あえて繰り返すようにしています。
そこまでするとやはり腑に落ちるので、間違いのない行動をするようになります。たとえば単に「コンビニに行け」と言われても、部下はコンビニで何をすればいいのかわかりません。
「ノドが渇いたからコンビニに行って飲み物を買ってこい」と言われて初めて、コンビニで何をすればいいかわかるのです。
・個人を数字で管理しようとすると思考停止に陥る
もう1つ、リーダーが指導する際に心がけてほしいことは、相手の性格や人格などを考慮するということです。
人それぞれ得意な仕事、苦手な仕事があります。
苦手な仕事を無理やりやらせるより得意な仕事を任せてあげると、モチベーションは上がります。そこで、私は人を見てその人に合った業務を振り分けするようにしています。
それは目標数値を決めるときも同じです。
これが一般企業のように、与えられた目標を個人に割り振っていくだけならば話は早いのですが、個人の適性や能力、事情も勘案して決めるので労力がかかります。
そこで私は、チーム全体の目標について話をするときは数字ベースで話をします。
「チームの目標がいくらあって、進捗はいくらで、それに対しての対策は○○○○で……」という具合に、達成に向けてのプロセスは数字ベースで行います。
しかし、個人の目標管理は違います。個人の場合は、あくまで「感情ベース」です。
たとえば、売上目標の未達が続くメンバーがいたとしましょう。
その彼に数字ベースで「先月、君は10件クロージングして1件の成約だった。だから今月は、30件クロージングをかけないと目標達成できないぞ」と言っても全く響きません。
そのメンバーは聞かれた瞬間に思考停止に陥ります。
それよりも、プライベートの目標をリンクさせて「君の今年の目標はハワイに行くことだったね」「なぜハワイに行きたいの?」「ハワイに行ったら何をしたい?」と感情面に訴えかけたほうが断然やる気が出るわけです。
数字は誰にでもわかる共通の指標ですし、目標と現状に開きがあった場合、原因や結果は数字ベースで検証すると把握しやすいことは確かです。
しかし個人の場合は、数字だけで管理してもなかなかうまくいきません。
むしろ「なぜそれをやるのか」「それをやることでどんなことが実現するのか」といった感情を突き動かすことによって、結果は変わってきます。
たとえチーム全体の数字であっても、それは個人の目標の集合体です。
であれば、チームは数字で管理しながら、個人については感情ベースで向き合っていく。
そうするとチームはうまく回っていきます。