(本記事は、金川顕教氏の著書『いつの間にか稼いでくれるすごいチーム』KADOKAWA、2018年9月29日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「本業」は作るな

いつの間にか稼いでくれるすごいチーム
(画像=GaudiLab/Shutterstock.com)

私は一緒に働く人の能力には、あまり関心がありません。

それよりも、努力することを当たり前だと思ってくれる人であることが、一緒に働く前提条件です。

天才的に能力の高いカリスマは、私のチームには必要ありません。

そもそも、努力できる人たちを凌駕がするほどの、圧倒的な結果を出せる人は、ほとんどいないと思っています。

実際、今まで300人ぐらいの人と一緒にチームを作ってきましたが、そのような天才は、ほとんどいませんでした。

たとえば不動産の営業を例に挙げると、月に10件コンスタントに売ることができる人はほぼいません。1件から5件がせいぜいです。

天才はカリスマですから、周りに大きな影響を及ぼします。しかし、チームの体制としては、特定のカリスマに頼るようでは、いつか行き詰まってしまうのです。

偉大な創業者が退いた途端に傾いてしまう企業がありますが、まさにそれです。

カリスマレベルとまではいかなくても、超「できる人」の存在がないと成り立たないようなチームではいけないのです。

それよりもチーム全体の平均値を上げていくほうが、はるかに現実的です。それが結果として、チームとしての売上を伸ばしていくことになるのです。

私の父はカメラマンでした。職人といいますか、カメラ一筋というタイプの人間です。

今風に言えば、「プロフェッショナル」です。

私は、幼い頃から父の働き方を見ていて、プロフェッショナルのこだわりに限界を感じていました。

実際、父の仕事の売上はみるみる下がっていきました。デジカメや、スマートフォン搭載のカメラが高性能化し、誰もがある程度のクオリティを確保できる写真を撮れるようになったからです。

これからの時代、父のように1つの仕事に固執していては、満足のいく収入を得ることができないと考えています。

もちろん趣味として楽しむのならいいのです。しかし、仕事としては1つのことに精通する必要はないのです。

プロフェッショナルな働き方など、私は無用だと思います。

私たちのビジネスは本業もないし、これからも作りません。分業と副業、いろいろな事業を回すということに特化しています。

そういう意味で「チーム」という存在は、私の考えに合致した働き方なのです。現在、私は約100の事業に関わっています。

携わる事業数が多いことをよく驚かれますが、私自身はそんなに大変だとは思っていません。

というのも、一から事業を立ち上げるわけではなく、すでにうまくいっているスキームを継承する形で事業を行うからです。

たとえば不動産業を例にとると、物件を持っている業者と組むことができれば、こちらは見込み客を集める集客チーム、集めた見込み客に物件を売る営業チームを用意すればいいのです。

そのため、1つの事業を始めるのに必要な準備期間は、1カ月程度ですみます。

そこに求められる資質は、目の前の仕事に地道に取り組める人かどうか、だけです。

つまりチーム作りで大切なのは、プロフェッショナルやカリスマに頼るのではなく、メンバー1人ひとりとしっかりとした信頼関係を築き、研修や勉強会を通じてその人たちのスキルを伸ばせる仕組みを構築することです。

チームバランスは「男性性」「女性性」で考える

チームには、生物学的性差ではなく、性質としての「男性性」と「女性性」のバランスが必要だと考えています。

男性性を表すキーワードは「リーダーシップ」「競争心」「影響力」「人を巻き込む力」「熱量」です。

一方、女性性は「つながり」「和なごみ」「癒し」「共有」「チームワーク」といった言葉で表されます。

これらの性質がバランスよく組み合わさると、そのチームはいい仕事ができます。

そのため、チーム構成を考えるうえでは、この男性性と女性性がうまく融合し、リーダーシップを発揮しつつ、良好なチームワークが築けるメンバーかどうか、ということを意識しています。

男性性の強い人が女性性を身につけるには、うまくいったことを教え合うとか、助け合うということを意識することです。

これについては、食事をともにしてつながりを作ることを奨励するとか、1人が売上を出したら他の人にもフィーが入るというような仕組みで補うことができます。

ちなみに、筆者のチームではこれらの仕組みがうまく機能しているため、メンバー同士で助け合わなきゃとか、全員で情報を共有しなければと特別に意識しなくても、自然とチームに女性性が備わるようになっています。

女性性の強い人が男性性を身につけるポイントは、自分1人で何かやってみる、あるいは人に何かを教えてみることだと思います。

その他、競争心を身につけるために、営業成績ランキングで1位を取ることを目標にする、影響力を身につけるために事業のトップをやってみる、などもあるかもしれません。

結局、何事もバランスが大事ですので、男性性が強いチームは女性性を身につける必要があり、女性性が強いチームは男性性を意識する必要があります。

つまり、どちらかに偏っていてはいけないわけです。

突っ走る勢いも大事ですし、周囲と足並みをそろえることも大事なのです。

・競争にも「いい競争」と「悪い競争」がある

男性性と女性性の話に関係しますが、私は競争にはいい競争と悪い競争があると考えています。

競争は男性性が司ります。

競い合いながらも、協力し合える状況なら、それはいい競争です。

悪い競争とは、単に競い合うだけで、協力や共有といった女性性がないことです。

悪い競争が行われているチームは、うまくいきません。

業績が上がらないチームは、男性性と女性性のいずれかが欠けているのです。

ですから、チームを上手に構成するには、まずメンバー1人ひとりが持つ男性性、女性性を見極め、バランスよく配置することです。

そのうえで、それぞれ足りない部分を個々人の中でバランスがとれるよう、成長させることが大事です。

「場の空気」を読める人が生き残る

メンバー集めのために多くの人と接してきましたが、ごくまれに空気が全く読めない人がいます。

私はそんな人のことを「キャッチ力の弱い人」と言っています。

たとえば「小麦アレルギーなんです」と言っているのに、「パスタを食べに行きましょう。がんばれば食べられますよ!」と平気で言うような人のことです。

相手が「アルコールはダメなんです」と言っているのに、無理やりに飲ませて急性アルコール中毒にさせてしまうような人間も、キャッチ力の弱い人です。

私たちが楽しそうに仕事をしているからか、たまに勘違いして、ふざけてしまう人がいます。

このタイプもキャッチ力の弱い人です。

ふざけを大目に見るリーダーもいれば、生真面目なリーダーもいます。ですから、そういう人を見ると真面目なリーダーがたまに怒ります。「ふざけるところじゃないから」と。

リーダーの人柄を理解できていないがゆえのことでしょう。

何度も同じことを言わせる人も、キャッチ力の弱い人です。

たとえば、タマネギとジャガイモとニンジンと肉とカレーのルーを買って、「こういう手順で作ればカレーができます」と、カレーの作り方を教えたにもかかわらず、なぜか肉じゃがを作ってしまうタイプの人です。

「作り方、さっき説明したよね……」
「……ああ、そうでした」

1回ならいいのですが、また同じことをして、

「作り方、前に説明したよね……」
「……ああ、そうでした」

こういう人は目標設定をリーダーと一緒に行うときも、

「○○さんは、今、月平均の成約件数が2件だけど、今度はもっと大きな目標にチャレンジしてみない? たとえば8件とか10件とか。同じ目指すなら目標は高くしようよ」

「では、4件を目指します」
「……」

となります。

リーダーにしてみたら「ちゃんと話を聞いていた? 目標は高くと言ったのに、どうして?」と、がっかりしてしまいます。

私の経験上、極端にキャッチ力の弱い人はほとんどいませんが、それでもキャッチ力の強い人と比べると、弱い人はどうしても成長速度が鈍くなりがちです。

では、キャッチ力の強い人の特徴は?というと、言われたとおりのことを実行できる人です。

仕事ができる人が言うことを、きちんとそのとおりにやれるかどうか。素直な人という見方もできるでしょう。ですので、そんなに難しいことではありません。

本質までつかんでいるかどうかはさておき、自分に言われていることを、おぼろげながらも感じ取り、すぐさま修正できる。こういう人がキャッチ力の強い人です。

結局のところ、ビジネスは理屈だけで成り立っているわけではありません。空気=周囲の感情と状況を読む力、すなわちキャッチ力の強い人が有利だと思います。

メンバーにも一瞬で自分の置かれた立場を読み取り、自分のとるべき行動を正しくとれる人を迎えたいと思っています。

いつの間にか稼いでくれるすごいチーム
金川顕教(かながわ・あきのり)
経営コンサルタント、ビジネスプロデューサー、投資家、事業家、作家。大学卒業後は有限責任監査法人トーマツに勤務し、不動産、保険、自動車、農業、飲食、コンサルティング業など、様々な業種・業態の会計監査、内部統制監査を担当。数々の成功者から学んだ事実と経験を活かして経営コンサルタントとして独立し、不動産、保険代理店、出版社、広告代理店など様々なビジネスのプロデュースに携わる。「量からしか質は生まれない」という信念を多くの人に伝えるために執筆活動を開始し、ビジネス書をはじめ多岐にわたるジャンルでベストセラーを連発。
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