人々が投資や資産運用の本を読むのは「投資で資産を増やすには何が重要か?」についてヒントをもらいたいからです。今回は非常に対極的なアプローチながら、資産運用の極意や資産を増やす本質を学べる不朽の名作2作をご紹介しましょう。

資産運用・株式投資の名著
(画像=Koson _shutterstock)

「サルでもできる株式投資」で一大論争

ウォール街のランダム・ウォーカー-株式投資の不滅の真理
(バートン・マルキール著・ 井手正介訳、日本経済新聞出版社 原著第11版 2016.3.10)

『ウォール街のランダム・ウォーカー-株式投資の不滅の真理』は1973年に初版が発売されて以来、40年以上にわたって新版を重ねる、分散投資とインデックス運用の教科書のような本です。著者のバートン・マルキール氏は、株価の値動きには規則性がなく、過去の値動きから未来を予測することはできないという「ランダム・ウォーク理論」や「市場効率化理論」を提唱したことで有名な経済学者です。

本書の中でも、どんなに有能で成績優秀なファンドマネジャーでも長期間の運用成績を見ると、結局はS&P500やNYダウ平均といった株価指標(インデックス)のパフォーマンスに負けると主張しています。本書の中で極めて有名なフレーズは、「目隠しをしたサルに新聞の相場欄めがけてダーツを投げさせ、それで選んだ銘柄でポートフォリオを組んでも、専門家が注意深く選んだポートフォリオとさほど変わらぬ運用成績を上げられる」という一文です。

「サルでもできる株式投資」という過激な主張は、ウォール街に一大論争を巻き起こしました。

あれこれ予想せずインデックス投信に分散投資せよ!

本書では、これまで発生したバブルとその崩壊の理由を丹念に考察することで、投資家たちが自らの裁量で投資に走ると、どんな結果が待っているかを解明していきます。結局、人間よりも市場ははるかに賢く、すべての情報を瞬時に織り込んでしまうという効率的市場仮説の考え方に立てば、人間があれこれ予想するより、リスクを分散したうえで、インデックスファンドのバイ・アンド・ホールド戦略に徹したほうがよほど儲かることを、著者はさまざまな統計的な事実から証明していくのです。

伝説の相場師たち!資産を増やす極意が満載

マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣
(ジャック・D. シュワッガー著・横山直樹著、パンローリング 2001.8.1)

一方、『マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣』は、株や商品など、さまざまな金融市場で、わずかな元手から巨万の富を築き上げた伝説の相場師たちのインタビュー集です。単なる成功体験本とはまるで違い、気鋭の投資家たちがそれぞれにまったく違う世界観や相場観、投資手法を駆使して、痛恨の失敗から大成功をつかみ取るまでのドラマはどれも鬼気迫るものがあり、「投資とは人生そのものだ」というすごみや迫力を感じることができます。

16人の“魔術師”たちの中には、冒険投資家として日本でも人気の高いジム・ロジャーズ氏や成長株投資の大御所ウィリアム・オニール氏など、そうそうたる著名投資家が登場します。そんな本書には、「一つのトレード・アイデアに対しては常に資金の五パーセント以下の金しか使わないということだね」といった具体的アドバイスから、「負けるトレーダーが勝てるトレーダーに変身できることはほとんどない。負けるトレーダーは彼自身を変えたいと思ってはいない」といった精神論まで、投資や投機に役立つ金言がまるで宝石のように散りばめられています。

人間の判断など頼りにならずしょせん間違いだらけなのだからインデックスファンドに長期投資するのが一番と説く前者、投資の世界で巨万の富を築いた億万長者たちの人間臭いドラマを収録した後者。180度、正反対の角度から「投資でお金を稼ぐ極意」を論じた必読の名著といえるでしょう。

(提供:フィデリティ投信