主に株式投資で世界第3位の富豪になったウォーレン・バフェット氏は間違いなく史上最強の投資家といえそうです。彼の投資スタイルは「いい会社の株を割安な株価で買って、あとは長期投資に徹する」という極めてシンプルなもの。会社の価値に比べて株価が割安に放置された銘柄への投資は「バリュー株投資」と呼ばれますが、バフェット氏の投資哲学には単なるバリュー重視を越えた、株式投資の本質にかかわる深遠な考え方もあるので、ご紹介しましょう。
バリュー株投資の始祖グレアムの薫陶を受ける
若き日のバフェット氏に多大な影響を与えた人物といえば、バリュー株投資の理論家として知られるベンジャミン・グレアム氏です。バフェット氏はコロンビア大学でグレアム氏の教えを受け、同氏の投資会社で投資家としての輝かしいキャリアをスタートさせました。
グレアム氏は、株価と会社の本質的な価値の差を「安全域」と呼び、株価が本質的価値より割安に放置された、安全域の広い株に長期分散投資すべきだと主張しました。また、自社の著書内でPBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下、PER(株価収益率)が15倍以下の銘柄に投資すべき、といった具体的な選別基準も示しています。
「PBR」は株価がその会社の持つ純資産の何倍かを示したもの、「PER」は株価がその会社の1株当たり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示したもので、会社の資産や収益から株価の割安度を測ろうとする、今でも非常にポピュラーな株価指標です。
バフェットはROE(株主資本利益率)を重視
バフェット氏は、グレアム氏のバリュー株投資をさらに一歩進めました。彼は「グレアム氏が企業の持つ財産に注目するのに対して、自分はその企業が将来稼ぎ出す現金に注目して割安かどうかを判断する」と述べています。そんなバフェット氏が特に重視したのは、「ROE(株主資本利益率)」という株価指標です。ROEは「会社が上げる利益÷会社が持つ純資産(株主に帰属するお金)」で計算します。
バフェット氏は「ROEが15%以上ある限り、四半期の業績についてあれこれ心配する必要はない」と説いています。バフェット氏にとって、優良な株式とは、株主が投じたお金から毎年15%以上の利子(=利益)を生み出してくれる「疑似債券」のようなものです。しかも、単なる債券と違って優良な企業は、内部留保として蓄えた利益を再投資に回すことで、複利効果で雪だるま式に株主のお金を増やしてくれるのです。
株価が数千倍になったバークシャー・ハサウェイ
たとえば、1株あたりの株主資本が10ドル、利益が2ドルの会社のROEは20%です。もし10年間、毎年の利益をすべて新規事業拡大など再投資に回して、コンスタントにROEが20%に相当する利益を上げ続けることができれば、複利効果で株主資本は4年で2倍、10年で6倍に増えます。
そんな雪だるま企業の典型例といえるのが、バフェット氏自身がオーナーを務める投資会社バークシャー・ハサウェイです。同社の株はバフェット氏が経営権を握った1960年代後半から約50年間で実に数千倍まで値上がりしました。その大きな要因の1つは、株主配当を一切行わないことでムダな税金を払わず、稼いだ利益をすべて再投資に回すことで株主資本を増やし続けたことにあります。
バフェット氏が教えてくれる優良企業とは、ROEが高い会社です。みなさんも、収益力や利益率が高く、しかも、その利益を元にさらに事業を拡大・発展させ成長を続けているような企業に長期投資して、和製バフェットを目指してみてはいかがでしょうか。
(提供:フィデリティ投信)