睡眠が疲労回復や健康長寿にとって必要不可欠なのは誰しもが実感しているはずです。書籍の世界でも睡眠に関する本がベストセラーになるなど、最高の癒しとなるような睡眠に対する人々の欲求は高まるばかり。「スリープテック」という言葉が生まれるほど、良質な眠りを実現するためのテクノロジーも進化しています。その最前線を見てみましょう。

進化するスリープテック。スマートベッドの実力とは?

スリープテック
(画像=Andrey_Popov_Shutterstock.com)

米国では「スリープテック」という名の、ITを駆使した睡眠改善テクノロジーが日夜、開発されています。その中には、睡眠中ブランケットの上から装着することで呼吸の回数や長さをセンサーで感知し、安眠につながる呼吸リズムをガイドしてくれる睡眠導入ベルトもあるのです。

また、睡眠時の寝返りなどに対応して、睡眠に最適な形に変化し、温度管理も行うスマートベッドも開発されています。このベッドには、夫婦が寝ているとき、相手のいびきを感知し、いびきをかかないように態勢をコントロールしてくれる機能もついています。最高の寝覚めにつながる覚醒時間を計算して、起こしてくれるIT目覚ましなどもあるようです。

快適で良質な睡眠につながるベッドやモニター装置など、ITを駆使したスリープテック商品の開発は始まったばかりといえるかもしれません。

日本では睡眠時間6時間未満の人が増加中

厚生労働省の「国民健康・栄養調査の概要」(2017年)によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満しかない人の割合は増加傾向にあり、男女ともに40代で最も多くなっています。2017年の「睡眠で休養が十分にとれていない人」の40代の割合は30.9%で、世代間においてもっとも高い割合です。

なかなか安眠できない理由になっているのは、男性では仕事が圧倒的に多く、女性では育児、家事が原因になっており、60代以上の高齢者では健康状態の悪化が睡眠の妨げの最も大きな理由になっています(2015年調査)。働き方改革が進んだとはいえ、多くの日本人は仕事や家事、育児に追われて、眠たくても自由に寝られないのが現状なのです。

そんな中、日本でもスリープテックに特化したベンチャー企業が立ち上がり、大手携帯電話会社と組んで社員に対する睡眠改善ソリューションの実証実験を始めています。就寝中も枕元に置いて寝ることが多いスマートフォンは、睡眠計測デバイスの最有力候補といえるでしょう。携帯電話会社が睡眠改善ソリューションの研究に力を入れているのは、そのせいかもしれません。

最高の眠りを実現する技術革新が今後も進むはず

医療の分野ではこれまでも、睡眠障害や不眠症、睡眠時無呼吸症候群など、睡眠にまつわる病いに関して、さまざまな研究や治療が行われてきました。しかし、質が高く快適で、最高の癒しになり、明日の活力にもなる睡眠がどのようなメカニズムで生まれ、どうコントロールすれば快眠、安眠を実現できるかについては、まだ研究が始まったばかりです。

安眠をもたらす脳の働きを解明する脳科学や、睡眠にかかわる遺伝子を発見してコントロールするバイオデジタルといった研究分野が、ますます発達していくでしょう。

お金を払えば、睡眠中に見たい夢を見ることができる技術が開発されているかもしれません。寿命を伸ばしたり、病いを治癒させたりするような”冬眠(長期睡眠)”テクノロジーが進化するかもしれません。日本でも米国でも、あらゆる分野のイノベーションが企業の業績向上や新産業の誕生、ひいては経済の成長につながっていくのは今も昔も変わりないのです。

(提供:フィデリティ投信