定額料金を支払うことでモノやサービスを利用し放題になるサブスクリプション経済が今、日本でも急速に普及しつつあります。元来は、雑誌などの「予約購読」「定期購読」の意味だったサブスクリプション(subscription)ですが、最近は毎月、定額制で飲み放題の居酒屋や月額制で1日1杯食べ放題のラーメン店が話題になるなど、実体経済にも広がりつつあります。サブスクリプション経済は私たちの生活を今後、どのように変えていくのでしょう?
クラウド時代のネットサービスは定額制が当たり前に
データやソフトをネット経由で提供するクラウドコンピューティングの普及もあり、雑誌や書籍、音楽や映画といったコンテンツをネット上からいつでも好きなときに閲覧できる時代になりました。月額1,000円以下の格安な定額料金で、音楽が聴き放題になったり、映画が見放題になったりするサービスが続々と生まれ、多くの人が利用しています。
ネット上にデータを置いて、オンデマンドで配信できるコンテンツやソフト関連ビジネスは、もともとサブスクリプション方式の販売方法と、非常に相性がいい組み合わせといえます。利用するたびに、お金のやり取りをするより、「月額いくら」という形でまとめて課金したほうが、利用者も面倒な支払いの手間をかけずにサービスを楽しむことができるためです。
今後は、利用者の嗜好をAI(人工知能)で分析するレコメンド機能の進化や「月額定額制」だけでなく利用者のニーズにあった、よりフレキシブルな課金システムが進化し、映画から漫画、アニメまでコンテンツ産業の多くが、一度きりの購入から、従量課金や定額制に変わる可能性もあります。
ITだけでなくリアルエコノミーも定額制の時代に
サブスクリプションサービスは本来、商品を販売したらそれで終わりだった物販ビジネスの世界にも広がっています。化粧品や健康食品の定期送付に始まり、ブランド品のバッグや新品の洋服が毎月定額制で借り放題のサービスまで、その内容は実に多様で、品ぞろえも豊富になってきました。いまや、サービスだけではありません。モノに関しても、所有するのではなく利用することにお金を払う時代に移行してきているのです。
最近では、大手牛丼チェーンとファミレスチェーンが手を組み、数百円の「定期券」を購入すると期間中、何度も割引サービスを受けられるキャンペーンを展開して話題になっています。飲食店といえば無料のクーポン券を配布して客寄せに使うスタイルが一般的です。話題作りとはいえ、そこに「定期券」という“演出”を加えたところが斬新といえるでしょう。
「一定料金で〇〇し放題」というビジネスモデルは飲食店だけでなく、スーパーやコンビニといった流通業界、ホテルなど旅行業界、レンタルオフィスなど不動産業界などにも導入される可能性があるでしょう。
サブスクリプションの発展でモノを所有する時代は終わる?!
サブスクリプションビジネスでは、一度売ったらそれきりではなく、人々を飽きさせず、定期的に何度も使いたくなるような仕掛けや演出が必要になります。これまでの資本主義は「モノを所有する」ことで成り立ってきました。しかし、今後は「必要に応じて利用した分だけ支払う」ことが一般的になり、モノを極力、所有しない時代が到来するのかもしれません。
「今の若者は車を買わない、家を買わない、ブランド物を買わない…」などと言われるように、確かにかつての高度成長期と比べて「物欲」のみをモチベーションにする若者は減っているように思えます。そんな彼らにとって、サブスクリプションサービスはとても心地よく映るのではないでしょうか。今後も様々な企業がサブスクリプションビジネスに取り組み始めることでしょう。投資家としては、そういった企業の動向に注目してみるのも面白いかもしれません。
(提供:フィデリティ投信)