2008年のリーマン・ショックから10年。米国発の世界的な金融危機を受け、各国の経済が打撃を受けたことを鮮明に記憶している方も少なくないでしょう。

今回から3回にわたって包括的にリーマン・ショックとその後の世界市場の動きを紐解きます。第1回ではリーマン・ショックが投資市場に与えた影響を考え、第2回ではリーマン・ショック後に注目される有望市場、最終回では経済危機再燃の可能性について解説します。

リーマンショックの正体

投資市場に与えた影響
(画像=Norman Chan_Shutterstock.com)

リーマン・ショックは、米国の大手金融機関であったリーマン・ブラザーズが2008年9月に破たんしたことをきっかけに起きた世界的な金融危機と世界同時不況です。背景にあるのは、2007年にサブプライムローン問題が噴出したこと。サブプライムローンとは低所得層向けの住宅融資を意味します。

経済産業省の2009年の報告書によると、2006年末の米国の住宅市場規模はローン残高ベースで約10兆ドル(当時のレートで約1200兆円)と日本の約7倍にもなっていました。同時に、住宅市場が拡大する中、住宅価格も上昇してきました。こうした住宅市場の拡大を支えたのが、住宅ローンの証券化市場を通じ、国内外から調達される資金でした。

一方、米国は当時すでに持ち家率が高く、融資を受けやすい「プライム層」で新規に住宅を購入する人は減少基調にありました。そのため、これまで融資を受けにくかった「サブプライム層」への融資が広がっていったとみられています。

しかし、住宅バブルが崩壊し、サブプライムローンは不良債権化。さらにサブプライムローン関連の金融商品が暴落し、投げ売りが発生しました。そしてサブプライムローンの証券化商品を大量に抱えていたリーマン・ブラザーズは最終的に経営破綻に至ったのです。

米国の株式市場で起きたこと

米国でも有数の証券会社であり、投資銀行として知られてきたリーマン・ブラザーズの破綻は米国内だけではなく、世界に衝撃を与えました。そして、金融システムへの不安が増大し、米国の株式市場は大混乱に陥ります。

その上、世界最大の経済規模を持つ米国での過去に例を見ないほどの経済の混迷の中、米国では消費が失速し、貿易部門では対米輸出が大幅に後退しました。米国内の混乱は世界に波及し、結果的に全世界で金融収縮が起き、それが世界同時不況へとつながっていきました。

日本に与えた影響

米国にとどまらず、欧州や日本が第二次世界大戦後初めての同時マイナス成長に陥りました。日本では輸出が減速し、米国向け輸出は2007年当初から横ばいだったものの、2008年には前年比マイナスを記録します。欧州連合(EU)向けの輸出についてはリーマン・ショックの後に大幅に減っていきました。

米国発のリーマン・ショックは、サブプライムローンというローカルな金融商品を取り巻く問題が、グローバルな問題へと急速に展開したという意味で、グローバリゼーション時代の金融リスクを象徴する出来事だと言えるでしょう。

一方、リーマン・ショックから10年経った今日、ITやAIといった技術の発展や、企業や投資家の国境を超える経済活動の広がりから、経済のグローバル化は一層の進展をみせています。

経済のグローバル化には、リーマン・ショックのようなローカルの問題が、グローバルな問題へと発展するというリスクがあることは論をまちません。ただし、経済のグローバル化はこうしたリスクをはらみつつも、各国における経済活動の活発化をもたらすとともに、さまざまな人にチャンスをもたらす可能性を秘めていることも事実です。

リーマン・ショックのような金融・経済危機を回避していくことを目指しながら、グローバル金融の発展の中でさまざまな人がチャンスをつかみ取れるよう、新たな道を探り、実現を促すことも重要でしょう。

(提供:フィデリティ投信