2008年9月に米金融大手リーマン・ブラザーズが経営破綻したことから、全世界的な金融危機と世界同時不況が起きました。他方、この状況の中で、プラス成長を確保し、世界にその存在感を見せつけた国がありました。

3回シリーズでお届けしている本連載では、第1回はリーマン・ショックが投資市場に与えた影響について紐解きました。第2回では経済危機後に注目される有望市場について紹介します。

世界で存在感を見せつけた国々

注目される有望市場
(画像=William Potter_Shutterstock.com)

リーマン・ショック以降、世界が注目したのが、ブラジル、ロシア、インド、中国の「BRICs」諸国でした。新興国も世界同時不況の影響は確かに受けたのですが、それでも4ヵ国の2008年の国内総生産(GDP)伸び率はいずれも5%を超えていたのです。

その上、2009年のGDP伸び率はインドが4.5%、中国に至っては6.5%を確保し、世界的な経済危機の中でもプラス成長を果たすというそれぞれの「底力」を見せつけました。

経済産業省の2009年の報告書によれば、世界の名目GDPに占める新興諸国11ヵ国のシェアは1998年に14.4%であったものが、2008年には21.8%に上昇しています。現在においても、経済の急速な伸びから、新興国の世界経済におけるプレゼンスがさらに拡大するとみられています。(報告書内で触れられている11ヵ国は、アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ)

「人口」と「資源」がキーワード

ではどのような新興国が有望視されているのでしょうか。キーワードは「人口」と「資源」です。

ご存じのように約13億人の人口を抱える中国のように、インドやインドネシア、ブラジル、バングラデシュ、パキスタン、ナイジェリア、ロシア、メキシコ、フィリピンなど、新興国の中には人口大国も少なくありません。

こうした新興国はその人口規模から国内市場の規模も巨大です。新興国というと、かつては賃金の相対的な低さから製品を安く生産する生産拠点としてみられる傾向がありましたが、それは昔の話。経済成長を続け、購買力が高まっている新興国は、消費部門をはじめとする「市場」としての注目を集めています。

同時に、先進国ほどにさまざまな産業が成熟しているわけではないため、今後の成長余地が大きく、さまざまな投資やビジネスのチャンスが存在していることも魅力なのです。

さらにビジネスパーソンから熱い視線を集めるのは新興国の資源です。ロシア、中国、メキシコ、アラブ首長国連邦(UAE)など、原油や天然ガスといった豊富な資源を持つ新興国が注目されています。

資源はこうした国にとって重要な輸出産品となっていますし、資源輸出で得た利益などを運用する政府系投資ファンド、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)の活動も活発です。UAEや中国、シンガポール、サウジアラビアなどを中心にSWFによる投資が実施されており、その資金力から世界経済に与える影響は決して無視できるものではありません。経済危機に直面した時、その国々の危機を支えるか否かは、こうした「人口」や「資源」が大きくかかわってくるでしょう。

資源需要は今後も世界的に拡大するとみられていることから、資源国が得る資源収入に加え、SWFの動向には、今後も目が離せません。

消費市場への注目が高い中国

もはやその経済規模からとりわけ消費市場への注目が高い中国で、各国企業は中国の消費者の取り込みに向けた事業競争を激化させています。

2008年の北京オリンピックで内外にその経済成長ぶりを示した中国ですが、最近では、中国が主導する国際金融機関である「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」や現代版シルクロード経済圏構想といわれる「一帯一路」構想など、自国にとどまらない活動を活発化しています。

この構想は東アジアとヨーロッパそれぞれの経済圏をつなぐことを目指すもの。特に政策、インフラ、貿易・投資、金融、民間協力の5分野について、交流や協力を促進することを目指すといいますから、なんとスケールの大きなことでしょうか。

新興国の「面白さ」とは

こうした中国のように経済にとどまらず、多方面において国際社会で圧倒的な存在感を示す国があることもまた、新興国の面白さと言えるでしょう。

日本が少子高齢化の時代を迎え、経済を爆発的に成長させるファクターが不足する中、成長の真っ最中である新興国は、投資やビジネスの場としてより存在感を増しています。リーマン・ショックなどの金融危機に耐えうる「底力」があるのかどうかという視点も持ちつつ、可能性に満ちた新興国を注視していくことは有益であると言えるでしょう。

(提供:フィデリティ投信