資産総額約2.3兆円で日本一の大富豪に君臨する孫正義氏は、これまで数多くの企業への投資で大成功を収めた日本の投資王といえます。その実績を振り返るとともに、孫氏が現在、力を入れている投資分野から、世界の未来、中でもIT産業が今後、どのように進化するのかを考えてみましょう。

孫正義氏がこれまで大成功した投資案件とは?

孫正義氏の動向
(画像=Vasin Lee _Shutterstock.com)

孫正義氏が輝かしいキャリアにおいて初めて投資で大成功を収めたのは、1996年に筆頭株主となった米国Yahoo!への出資。2000年には、まだ無名の中国ベンチャー企業に過ぎなかったジャック・マー氏率いるAlibaba.com(現AlibabaGroup Holding)に出資し、2014年にAlibabaがNY証券取引所に上場したことで、ピーク時には約10兆円もの巨額な含み益を得ることに成功しました。

有望なIT企業をまだ上場前のベンチャー時代に見出して出資し、その後の爆発的な成長で巨万の富を手に入れるのが孫正義氏の投資手法です。それを可能にしているのはITの進歩や新技術の爆発的普及に対する、卓越した「目利き力」といえるでしょう。

時代の二歩、三歩先を行く孫氏の慧眼

一方、孫氏は2006年に携帯電話会社のボーダフォンを1兆7,500億円という巨額資金で買収し、それまでNTTドコモとau(KDDI)の2強が目立っていたモバイル通信業界の一角に食い込みました。日本の携帯電話事業で成功を収めると、今度は米国の携帯電話会社スプリント・ネクステル社を約1.8兆円で買収します。

周囲があっと驚くような巨額資金での買収に打って出るのも、孫正義氏の投資手法のもう1つの側面です。会社の屋台骨を揺るがしかねないほどの有利子負債を背負いながら、当初は無謀とも思える巨額買収を成功に導く経営手腕には目を見張るものがあります。

ブロードバンドの到来を予見してADSLのルーターを街頭で無料配布したり、スマホ普及を見越していち早くアップルiPhoneの独占販売を開始したりするなど、人々の生活を激変させるようなITの普及に対する孫正義氏の読みも的中していきました。普通の人が見る景色の一歩どころか、二歩も三歩も先を見据えるすぐれた眼力の持ち主といえそうです。

孫氏の投資先から見える未来の世界、これからのIT

そんな孫氏が今後の命運をかけるほど力を入れているのが、IoT。すなわち、あらゆるモノがインターネットに接続される技術への巨額投資です。2016年にはIoTの普及に欠かせない半導体技術の特許を多数、持つ英国ARM社を約3兆3,000億円で買収して、またもや世界中を驚かせました。

サウジアラビア政府と組んで立ち上げた10兆円ファンドでも、人工衛星を使ったネットインフラを提供するベンチャー企業や、IoTで生まれる膨大なデータ収集のプラットフォームとなる産業用ソフトウェア開発会社を相次いで買収しています。IoTの普及後に巨万の富を生み出しそうな情報通信インフラに先行投資する姿勢が鮮明です。

IoTといえば、自動運転技術や情報家電、ネットを使った製造業や物流業の効率化などが思い浮かびますが、その普及が一体どんな社会変革を巻き起こすか、まだまだイメージしづらいものがあります。そんなときは、孫正義氏や10兆円ファンドが投資する、まだ名も知られていないベンチャー企業がどんな事業を手掛けているかを見れば、今後の未来、進化の行方がわかるのではないでしょうか。

卓越した選別眼とリスクをいとわない決断力で巨万の富を築き上げた孫正義氏。孫氏の投資動向をつぶさに観察しておけば、「未来に乗り遅れることはない」といっても過言ではありません。

(提供:フィデリティ投信