新卒大学生の求人倍率が高止まりするなど、好景気が続く日本では就職売り手市場が続いています。就職に有利といわれる首都圏の有名大学は、文部科学省による定員厳格化の方針もあって、軒並み難易度がアップしています。学生から見た「大学の人気」と「景気」にはいったい、どんな関係性があるのでしょうか?
好景気だと東京の私立、不景気だと地方の国公立が人気に
厚生労働省の就職状況調査によると、2018年3月に卒業した大学生の就職率は98%で前年比0.4ポイント増となり、過去最高を記録しています。かつて「就職氷河期」といわれた2000年3月の就職率が91.9%だったことを考えると、新卒大学生の就職は卒業時に好景気か不景気かによって、非常に大きな影響を受けることがわかります。
好景気になると、東京都心にキャンパスを構える有名私立大学の人気が高くなる傾向があります。東京都心には東証1部上場の大企業本社が多く、就職活動の情報収集やOB・OG訪問など、なにかと就職に有利といわれることがその要因のひとつのようです。
好景気による給与増で親のフトコロ事情が好転し、高額な入学金を支払ったり、月々の生活費を仕送りする余裕が生まれることも、都市部の私立大学人気が高まる理由の一つです。
一方、世の中が不景気に見舞われ民間企業の求人が激減すると、都市部の私大人気に陰りが見え、逆に、地方公務員の就職などに有利とされる地元の国公立大学が注目されやすくなります。バブルの不良債権処理で多くの企業が淘汰された2000年代前半や2008年のリーマンショック後の数年間は、地方、国公立、理系志向が鮮明になったといわれます。
定員抑制や就職のしやすさで都内私立大学が人気に
2018年の私大志願者状況を見ると、少子化が進んでいるにもかかわらず首都圏・関西圏の6つの私立大学で志願者数が10万人を越えるなど、入試形態が併願制度充実へと転換したこともあり、私立大学の志願者が増加しています。
文部科学省が、東京一極集中の進む大学生を地方の大学に呼び戻そうと、都内の私立大学に対して合格者の定員厳格化を求めていることも、首都圏の有名私立大学の受験戦争が激化している要因になっています。
そろそろ転換期? 4年後の景気循環を見据えた大学選び
とはいえ、来年2019年に入学する学生が就職するのは2022年です。2019年10月に予定されている消費税増税や2020年夏にフィナーレを迎える東京五輪特需など、アベノミクスが始動した2013年以来、長らく好景気が続いてきた反動もあって、2022年頃には景気循環的に見て世の中が不景気になっている可能性がないとはいえません。
最近の私大人気の陰で、地方の国公立大学の合格倍率や偏差値は大手予備校の調査を見てもやや低下傾向ですが、今後、不景気になると、かつての就職氷河期時代のように人気が再燃する可能性もあります。
株式市場でも学習塾など教育関連株は不況に強いディフェンシブ株といわれています。不景気になって将来不安が高まると、子供の行く末を案じた親が少しでもいい大学に入ってもらおうと塾代など教育投資を増やすはず、という思惑が広がるからです。大学の人気動向や塾代など教育費の伸び率は、実際の景気より多少遅れて変化する遅行指数といえるかもしれません。
いずれにしても、大学を卒業するのが不景気の時期か好景気の時期かは誰も選べません。大学受験を控えた子供を持つ親世代には頭の痛い話ですが、大学選びはある意味、将来への投資です。入学してから4年先の景気動向も見据えた決断が大切なのです。
(提供:フィデリティ投信)