メールやインターネット、SNSやスマートフォンの普及に続き、最近では自動運転やFintech(フィンテック)、VR(仮想現実)、AI(人工知能)など、ITの技術は人間の生活を激変させてきました。

「日本の社会を激変させる」という意味で今後注目したいのは、マンガ『ドラえもん』にも登場した「ほんやくコンニャク」の実現でしょう。果たして、翻訳ITの普及で、外国語を勉強したり話したりする必要はなくなるのでしょうか?

AIが外国語を流暢に自動翻訳してくれる世界は目前!?

外国語がない世界
(画像=cybrain/Shutterstock.com)

将棋や囲碁といったボードゲームの世界では、いまやAIに勝てる人間がいなくなりました。今年の家電市場では、人工知能の技術で会話ができる、グーグル・ホームやアマゾン・エコーといったAIスピーカーが話題になっています。

ここまでAIが進化すると、次に期待されるのはドラえもんの「ほんやくコンニャク」でしょう。食感や外観は本物そっくりのコンニャクを食べると、外国語を自国語として理解でき、自分が話す言葉を自動的に外国語に変換してくれる夢の自動翻訳機です。

すでにグーグル翻訳などのサービスは普及していますが、英語を入力して和訳しても、日本語を入力して英訳しても、自然で流暢な翻訳には「あと、もう一歩」といった状態です。

強いAIでないと自然で流暢な翻訳は難しい!?

よく言われるのは、AIが人間と同じように心や意識を持って自ら推論や試行錯誤を行なえるのか、それとも人間が決めたルールの中で機械的な計算しかできないのか、という「強いAI/弱いAI」の議論です。 外国語の翻訳は単純な言語解析では終わらず、会話の裏にある国民性や文化、歴史的な背景、会話や文章が交わされる以前の文脈や状況の理解が必要なため、強いAIでないと自然で流暢な翻訳は不可能という考え方もあるようです。

とはいえ、音声認識サービスに強みを持つフュートレック、音声の文字起こしソフトで高い技術力を発揮するアドバンスト・メディア、専門性の高い英文翻訳で95%の精度を達成したロゼッタなど、日本でもすで自動翻訳関連の成長企業が多数、株式市場に上場しその翻訳技術は年を追うごとに進化を遂げています。

「言葉の壁」が消えたら生まれる仕事、なくなる仕事

もしAI翻訳機が普及して、外国語を勉強したり、通訳する必要がなくなったら、どんなビジネスが生まれるでしょう。

言語の壁が完全になくなったら、世界中の誰とでも会話やチャットができるようになるので、国境や言語を越えて、趣味・趣向や主義・主張などを基準に友達の輪が世界中に広がるかもしれません。ネット広告ビジネス、世界を股にかけた趣味系通販サイトなどが立ち上がる可能性もあります。外資系や日系企業といった隔たりもなくなり、すべての企業やビジネスがグローバル化する世界になるかもしれません。

一方、国内のマスコミやエンターテインメント、教育、人材派遣業など、自国の言葉をある種の「文化障壁」「産業障壁」にして生き延びてきた企業は廃れてしまう可能性もあります。

AI翻訳機の普及は、英語という「世界共通言語」をしゃべっているだけでよかった英語圏の人々より、日本語という一つの言語しか持たなかった日本人にこそ有利に働きそうです。内向き志向の強かった日本人が、苦手な外国語を習得することなく世界中の人々とコミュニケーションできることで、ビジネスチャンスが飛躍的に広がることに期待したいものです。

(提供:フィデリティ投信