前日の海外時間では、東京時間にトランプ大統領が「対中貿易で素晴らしい取引を見込んでいる」と発言したことにより株式市場がリスク選好の動きを強めたことで、NYダウは一時460ドル超の動きを見せ、ドル円については113円台を回復し、113.081円まで上値を拡大しました。本日においても、日経平均株価が300円超の動きになっていることからドル円は113.30円台までさらに上値を拡大しています。
メルケル独首相の退任というショッキングなニュースから一夜明けた欧州市場では、注目されていたユーロ圏・第3四半期GDP(季調済)が市場予想よりも悪化した内容になったことから、イタリアの予算案問題、ブレグジット問題、そしてここに欧州の経済不安が加わったことで1.1380ドル付近から1.1340ドル付近までユーロ売りが強まりました。独・10月消費者物価指数(速報値)が市場予想を上回る内容になり、ユーロドルは再度1.1380ドル付近まで値を戻す場面も見られましたが、ユーロの先行き不透明感が強まるなか、積極的にユーロを買い進める動きには至りませんでした。
前日のマーケットはユーロ中心になるかと思われましたが、ユーロ以上にショッキングだったのがポンドです。メルケル独首相の退任により難しい舵取りになったブレグジット問題ですが、S&Pが「英国の合意なきEU離脱の可能性は同国の格付けに影響するほど高まっている」と指摘したことを受けてポンド売りが強まりました。来年3月までの離脱プロセスのなかで、いよいよ「合意なき離脱」が目前に迫ってきており、ポンドのネガティブ報道には今後一層マーケットは敏感に反応するのではないでしょうか。
今後の見通し
本日は、日銀の金融政策決定会合結果、展望レポート、および、当面の長期国債等の買い入れの運営についての公表が予定されています。今回の会合で政策変更は予想されていませんが、輪番オペレーションの実施方法の変更等の微調整が行われるかどうかが注目されており、この点においては15時30分に予定されている黒田日銀総裁の定例会見の方が重要視されそうです。ただ、輪番オペレーションの実施方法の変更等があり、日本の長期金利が上昇しても、同様に米国の長期金利も上昇する可能性がたかいため、円絡みの通貨への影響は限定的になりそうです。
米中通商協議については、トランプ政権から「米中首脳会談が不調に終わった場合、対中制裁関税第4弾(約2570億ドル規模)を発動する」と示唆されたものの、トランプ大統領からは「中国との通商協議で【素晴らしい取引】を見込んでいる」と発言するなど一貫性がないことから、11月末の米中首脳会談までは、引き続きポジティブサプライズもネガティブサプライズも両方の側面を持ち合わせている材料になります。ヘッドライン一つで株価が大きく変動することは直近の動きで確認されているため、この点には注意が必要になりそうです。
そろそろ意識せざるを得ないのが、11月6日に投開票が予定されている米中間選挙です。「上院は共和党、下院は民主党が過半数を取る」との見方が有力でしたが、ここへきての共和党の追い上げで接戦の度合いは非常に深まっています。この共和党の追い上げにより、再度株式市場が上値を追うのではないかとの期待があります。この「ねじれ」議会は通常であればリスク回避要因ですが、多くの重要法案は既に成立していることもあり、今回のイベントはドル買いになるのではないかとの見方もあり、イベント前にどの程度織り込まれていくのかを注視する必要がありそうです。
損切りは回避、ユーロの状況を考えるとショート維持は問題なしとの公算
株式市場の急速な反発により、ユーロ円もドル円に連れるように上昇しましたが、テクニカルポイントである128.70円の損切りラインは回避しています。ユーロドルの動きを見る限りでは、決してユーロが買われている状況ではないため、引き続きユーロ円ショートの戦略を継続します。損切りは128.70円上抜け、利食いに関しては126.70円付近を想定しています。
海外時間からの流れ
ユーロについては、コンテ伊首相、サルビーニ副首相から予算案の変更を改めて否定する発言が相次いだ一方で、欧州委員会からは「イタリアが計画する財政拡大と債務削減とは両立し難い」との見解が示されるなど、引き続きユーロの先行き不透明感が強まっています。格付け会社S&P以外にも、ハモンド英財務相が「合意なき離脱は英経済にとって打撃となり、財政刺激策が必要」と発言しており、欧州通貨については、ポジティブサプライズがない以上は上値が重くなると考えられます。
今日の予定
本日は、独・9月小売売上高指数、ユーロ圏・10月消費者物価指数、米・10月ADP民間雇用者数、米・10月シカゴ購買部協会景気指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。