iDeCo(個人型確定拠出年金)は、月々積み立てた掛金を投資信託や保険、定期預金といった金融商品で運用し、60歳以降に受け取るいわゆる「自分年金」です。2017年1月に加入要件が緩和されたこともあり、2018年4月時点の加入者が前年同期比で2倍近い89.2万人に達しています。

しかし、専業主婦や年収の低い人は、掛金を運用する金融商品の選び方次第で思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあるので、注意が必要です。

iDeCoで定期預金積立ては本当におトクなのか?

iDeCo
(画像=PR Image Factory/Shutterstock.com)

iDeCoのメリットは大きく3つあります。1つ目は、掛金を運用した成果として得られる運用益に、通常かかる約20%の税金が一切かからないことです。2つ目は、60歳以降、掛金を引き出すときにも退職所得控除や公的年金等控除が適用されるなど、非常に手厚い節税効果があることです。

3つ目は、月々の掛金が所得から控除されるので、結果として所得税・住民税の納税額を減らせることです。月々の掛金や所得状況によって違いはありますが、「年間の節税額÷1年間で納める掛金」で計算した「節税利回り」は、最低でも15%、最大30%前後に達するといわれています。

そのせいもあってか、「iDeCoは、元本割れの心配がない定期預金で運用して「ノーリスクで節税効果だけを享受する」という運用方法が「裏ワザ」として紹介されているほどです。

iDeCoで定期預金運用は確実にコスト負けに

実際、iDeCoに加入した人の掛金全体の運用商品選択状況を見ると、預貯金が38.6%、保険が26%と、圧倒的に元本確保型金融商品での運用が多数を占めています(国民年金基金連合の「確定拠出年金統計資料」2017年3月時点より)。しかし、定期預金に預けても、金利は年率0.01%程度しかつきません。

節税効果が高いといわれるiDeCoですが、国民年金基金連合会に収納手数料・月103円(年間1,236円)、信託銀行に事務委託手数料・月64円(年768円)、合計すると毎月167円(年間2,004円)の手数料を支払う必要があります。

つまり、定期預金など運用リターンがほとんど期待できない元本確保型の商品を選んだ場合、iDeCoでは手数料負けになり、運用損になってしまう可能性があるということです。たとえ所得税・住民税の支払いを減らせる節税効果があっても、長期間、手数料負けした運用を続けるのは効率が悪いといえるでしょう。

専業主婦や年収の低い人ほどアクティブ運用すべき

なかでも注意したいのは、専業主婦です。iDeCoは、年金区分で「第3号被保険者」に分類される専業主婦でも、最低月5,000円以上、最大2万3,000円の掛金で始めることができます。ただ、専業主婦はそもそも所得がないので、所得税を払っていません。

iDeCoに手厚い節税効果があるといっても、所得税を納めていない人は、当たり前ですが、節税措置も受けられません。そんな専業主婦が元本割れリスクを嫌って定期預金で運用すると、毎月167円の手数料を徴収されることで、結局、掛金がどんどん目減りしてしまうことになります。せっかく「iDeCoで老後資金を」と思っていても、これではまったく意味がありません。

iDeCoに加入して大きな節税効果を得られるのは、年収が高く税金をたくさん払っている人です。専業主婦や所得が低くて所得税の節税効果が低い人こそ、運用益に一切税金がかからないという面をより積極的に活用すべきでしょう。

つまり、元本割れリスクはあるものの、運用次第では大きな利益を得ることができる投資信託での運用も選択肢の一つとして考えてみるのもよいでしょう。がベストといえるのです。

(提供:フィデリティ投信