世界経済が緩やかに成長し続けるなかでも、成長のけん引役は常に変化しています。そうしたなか、これまでの枠組みや考え方に基づいて運用していくことは得策ではありません。たとえば、インデックスの多くは、“かつて”経済をけん引した現在時価総額の大きい企業が上位に組み込まれていますが、これからの経済をけん引する企業なのか、高成長するビジネスモデルを有しているのか等を考えると、必ずしもそうでない場合もあります。目まぐるしい変化を遂げる今後の世界経済のなかで、新たな価値を創造する企業への投資していくことが運用の世界ではとても重要です。

アクティブがパッシブを創る

エンゲージメント
(画像=designer491/Shutterstock.com)

一般的に、投資信託をはじめとした運用方法は、大きく「パッシブ運用」と「アクティブ運用」の2つに分類されています。しかし、この分類方法に大きな疑問もあります。

パッシブ運用とは、運用する際に何かしらのベンチマークに連動するような運用成果を目指すタイプです。別名「インデックス運用」ともいわれます。インデックスは、おおむね時価総額が大きい企業が組み入れ上位に名を連ねています。しかし、そうした企業もかつては小さい企業でした。過去において業績が拡大し、それに伴い企業価値も大きくなり、結果としてインデックス上位に入っているのです。

そうした企業が小さかったときはインデックスでのウェイトが小さいため(ないしは採用されていないため)、インデックスへの投資をしてもそうした企業に資金はほとんどまわりません。そこでファンドマネージャー等の投資家が、インデックスに資金を投じるのでなく、そうした成長の潜在性が高い企業に投資し続けた結果、みごと成長し、大きな企業となってインデックスでのウェイトが高まっていったのです。

したがって、パッシブとアクティブは同列で比較される運用方法ではなく、アクティブをすることでパッシブ(インデックス)が生まれている、と考えるのが妥当です。

パッシブだけでは社会が代謝を起こさない

上述のように、インデックスの多くは“すでに”大きな企業のウェイトが高く、インデックス運用ばかりに資金が集まると、既存の大企業ばかりに資金が投じられることになります。

一方、これから成長しそうな、社会に必要な財・サービスを提供するような企業は総じてインデックスのウェイトが低く、ないしは組み入れられてないため、そうした企業に資金がまわりません。我々の社会を豊かなものにするためには、新たなアイデアを持つ企業、社会的課題にチャレンジする企業などに資金をより投じていくべきです。

そうした企業は既存の大企業でなく、おおむねベンチャーなど時価総額の小さな企業である場合が多いです。いつまでも“有名な”企業(成長鈍化している企業)に資金を投じていては、社会の発展が望めないどころか、経済的なリターン(業績拡大にともなう企業価値の増価)も期待できません。次世代によりよい社会を残そうと“投資・運用”を考えるのであれば、そうした“既存”の大企業に多めに資金を投じるよりも、企業の大小にかかわらず、これからの成長する(これからの社会に必要な財・サービスを提供する)企業により多くの資金を投じるべきです。

今、求められている“投資・運用”は、よりよい社会を創るため、社会的課題を解決しうる企業を見出し、そうした企業へ資金を“託し”、結果として経済的なリターンを享受する、といった好循環を生み出すことだと思います。

アクティブかパッシブかではなく、今後は“エンゲージメント”

アクティブは、パッシブ(インデックス)に対して、いかに銘柄選択をしてアルファ(超過収益)を獲得するか、という運用と表現されがちです。しかし、これに対しても違和感があります。そもそもインデックスは、上述のようにアクティブによって見出された企業が大きくなって、結果として上位に組み入れられて形成されています。

しかし、アクティブ運用がパッシブを意識してパッシブから極度にかい離しないような運用をしていると、結局、パッシブとさほど変わらない先に資金を投じていて、今後投資先が成長するかどうかという“絶対的な視点”よりも、パッシブに勝てるかどうかという“相対的な視点”で運用してしまいがちです。

そもそも“投資”とはよりよい社会を築く企業への資金をまわすことで、インデックスに勝ったか負けたかが目的ではありません。したがって、単にインデックスに対してアクティブに銘柄を選択するかどうかではなく、資金を託した先の企業が今後も成長するのかどうか、投資先の企業に対して机上の分析だけでなく、経営陣との建設的な対話、“エンゲージメント”によって、企業価値の“共創”をしていけるかどうかが、アクティブかどうか以上に非常に重要になると考えます。

未曽有の金融緩和によって世界経済はなんとか持ち直しました。しかし、一方で既存の社会システムが疲弊しているのも事実です。そうしたなか、新たな社会を創り出していくためには、新たなアイデアや社会的課題にチャレンジする企業により資金を投じて、社会の新陳代謝を促す必要があります。我々含めた投資家が、もっと“お金に意味を持たせて”よりよい社会の発展のために“投資・運用”し、結果として運用成果(リターン)を得ていけることを期待します。

(提供:フィデリティ投信