消費税率引き上げに関する話題は尽きない。とくにコンビニで買った食品を持ち帰るのか、イートインコーナーで食べるのかによって適用される消費税率が変わる、軽減税率の導入は日夜メディアを騒がせている。

ところで、M&Aの手法も消費税の申告に大きな影響を与えるものなのだ。手法の違いで消費税にどのような影響が出るのか。本稿ではM&Aと消費税の関係に迫ってみる。

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(写真=PIXTA)

消費税は簡単な税金?

現行の消費税法では、消費税は8%の単一税率となっている。そのため、消費税とは、商品などの代金に8%を掛けるだけの簡単な税金というイメージが一般的だろう。ところが、実際に経理や税金の実務として消費税の処理をしてみると、これは、とても難しい税目であることが実感できる。

たとえば、収入印紙一つを取ってみても、法務局などで購入した場合、消費税は非課税となる。だが、金券ショップなどでこれを購入すると課税扱いになるのだ。また、売上や経費などの取引を課税、非課税、免税、不課税(課税対象外)に分類するといった処理も必要となる。

消費税が「間接税」と呼ばれる理由

スーパーで買い物をするとき、お客さんは商品の代金と併せて消費税を支払う。つまり、消費税を負担しているのは間違いなく消費者だ。しかし、消費者は税務署に対して消費税を納付している訳ではない。いったい誰が消費税を納付しているのだろう。

消費税は、実は商品を作っているメーカーや卸売業者、スーパーなどの小売業者が納付をしているのだ。このように税金を負担する者と納税する者が異なる税金を「間接税」と呼ぶ。そのため、消費税は典型的な間接税といえる。

●会社は「預かった消費税」から「預けた消費税」を差し引いて納税

それでは、各業者はどのように消費税を計算して納付しているのだろう。その答えは「差し引き計算」にある。たとえば、スーパーはお客さんから預かった消費税を税務署に納付しなければならないが、その際に仕入や経費にかかった消費税を差し引けることになっている。

スーパーが卸売業者から商品を54円(本体50円+消費税4円)で仕入れて108円(本体100円+消費税8円)で販売した場合、お客さんから預かった消費税8円と、卸売業者に対して支払った消費税4円との差額4円を税務署に納付するイメージだ。

消費税がM&Aに関係するわけ

消費税は売上だけでなく、一定の条件を満たす「資産の譲渡等」に課される。つまり、M&Aで現金や株式、事業用資産などの資産が移転した場合、それが課税対象となる「資産の譲渡等」に該当するのかどうかを見極めないといけないのである。

・株式譲渡、株式交換、株式移転
現金で対象会社の株式を購入する株式譲渡は典型的なM&Aの手法といえる。結論からいうと、こうした株式譲渡には消費税の負担は生じない。しかし、現金や株式はれっきとした資産である。そのため、本来であれば「資産の譲渡等」に該当してもおかしくない。

では、これらが非課税となる理由は何か。それは、現金などの支払手段や株式などの有価証券は「消費」という概念に馴染まないため、非課税資産という扱いになっている。したがって、株式譲渡でのM&Aには消費税がかからない。同様に、当事会社間で株式を受け渡しする株式交換や株式移転といった手法でも消費税の負担は生じない。

・合併、会社分割
それでは、合併や会社分割は消費税の対象となるだろうか。結論からいうと、これらも消費税の対象とはならない。合併や会社分割は事業を包括的に承継する組織法上の行為である。つまり、「資産の譲渡等」の取引行為とは一線を画するという訳だ。

上記の株式譲渡などは「資産の譲渡等」には該当するものの、現金や株式という性質上、非課税資産という扱いだったが、合併や会社分割はそもそも「資産の譲渡等」ではないということだ。

・事業譲渡、現物出資
最後に、事業譲渡や現物出資を見てみよう。これらの手法には消費税が課税される。事業譲渡も現物出資も個々の資産が譲渡されたと考えられるからだ。これは、たとえば不動産については個々に所有権移転登記などが必要となることとも整合している。

そのため、事業譲渡や現物出資の対象となる資産のうち、土地など、その性質上非課税となる資産には消費税がかからないが、課税対象となる資産については消費税の負担が生じる。

以上のように、M&Aと消費税との間には密接な関係がある。M&Aを計画する際には、思わぬ課税が生じないように消費税のことも気にとめておきたい。