堅実と言われる日本人にとって、これまで金融資産といえば「貯蓄」が中心でした。しかしながら、少子高齢化や国の財政難などの問題が取り沙汰されるようになり、資産形成のかたちも変化しつつあります。日本政府は「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げ、資産運用の必要性をアピールしています。

今回は世界に目を向け、米国・英国・フランス・ドイツ・カナダの資産形成スタイルを比較し、各国のスタイルとその背景について考えてみましょう。

日本における資産形成スタイルは「貯蓄」

資産形成スタイル
(画像=Shutterstock)

日本の家計における金融資産の構成は、日本銀行によると2015年の時点で現金・預金の割合が52%と半分以上となっています。この割合は他5ヵ国に比べると目立って多く、いわば日本は「今ある資産を守るスタイル」が主流であることが読み取れます。その背景には、投資などの資産形成に関する情報が他国に比べて不足していたこと、高金利によって資産を増やすことが可能だったことなどがあげられるでしょう。

ところが今や低金利時代となり、預金のメリットは大きく低下しました。雇用形態も多様化し、正社員以外は年齢階級が上がっても賃金の上昇はさほど見込めなくなりました。少子高齢化とともに公的年金などの社会保障制度にもほころびが見えはじめるなど、定年後の年金問題も深刻化しています。

米国では運用で資産を育てる

一方、米国は現金・預金の割合が13.2%と6ヵ国の中でも低く、株式や投資信託といった資産を中心に金融資産が構成されています。株式などの保有割合はリーマンショック時に一時的に落ち込んだものの、2013年には1990年代の株式保有割合まで回復し、今もなお緩やかな増加傾向にあります。

ではなぜ、日本との資産形成においてこれほどにも違いがあるのでしょうか。

その背景には、1974年にIRA(個人退職口座)、1981年に確定拠出型年金の401(k)制度などの法制度が整備されたことが大きいといえるでしょう。また資産運用に関する知識を学校で学んでいるなど、早い時期から資産形成に関する教育が進められているのも国民が積極的に資産運用に関わる基盤となっています。アメリカ人にとって資産とは、自ら積極的に関わり、育てていく対象なのです。

その他、各国の資産形成方法もチェック

英国やフランスでは、税制上の優遇が大きく影響したことで、金融資産の中で年金・貯蓄が大きな割合を占めています。特に英国では家計資産のうち金融資産が5割以上を占めており、2000年代に制度の整備が進められたことで、投資が家計に浸透しました。リーマンショック後もISA(個人貯蓄口座)や投資信託、英国国債などの資産割合も堅調に増加しています。

ドイツでも私的年金への加入は徐々に増えています。株式や投資信託の割合には1990年代から大きな変化はありませんが、2005年より家計における投資促進の活動が本格化し、全国に広がっています。

カナダでは、預貯金の割合が減少する一方で、株式や投資信託の割合が急スピードで増加しています。1990年と比較すると、2015年には株式は2.6倍、投資信託にいたっては6.7倍も増えています。その背景には、政府による金融リテラシーの向上を目的とした投資教育の影響が大きいようです。

自分に合った資産形成方法を見つめ直す

これまで日本人の老後を支えてきた社会保障制度の破綻が危ぶまれる今、自分の資産形成方法を見つめ直すべき時期が来ているといえます。

事実、昨今では日本でもNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)が普及しはじめるなど、個人の投資をサポートする制度が確立されてきています。自分の資産は自分の手で運用する、という姿勢が日本でも主流となる日もそう遠くないといえるでしょう。

(提供:フィデリティ投信