投資信託の運用成績が「運用を任せたプロの手腕によるものか」、それとも「相場が単に良かったからなのか」は、基準価額の推移だけでは判断できません。そのため、運用成績を測るものさしとして「ベンチマーク」を設定し、それと比較することでファンド独自の運用能力やパフォーマンスを判断するのが一般的です。

つまり、ファンドを選ぶときは、ベンチマークの理解がとても大切になってきます。ここでは「ベンチマーク」について学んでいきましょう。

日本株の代表的ベンチマークが「TOPIX」なのには理由がある

ベンチマーク
(画像=Shutterstock)

各ファンドの「ベンチマーク」は、投資信託説明書(交付目論見書)や運用報告書で確認することができます。そのベンチマークには、株や債券市場全体の値動きをとらえるために、国内外の金融機関や新聞社、証券取引所が作った指数(インデックス)などが使われていますが、数多くの日本株ファンドがベンチマークにしているのが、日本取引所グループが算出する東証株価指数「TOPIX(トピックス)」です。

TOPIXとは、東証1部に上場するすべての銘柄の時価総額を、市場に出回って実際に取引可能な浮動株の比率を加味したうえで指数化したものです。

ではなぜ、TOPIXより有名な「日経平均株価」がベンチマークになることが少ないのでしょうか?それは、日経平均株価は日本経済新聞社が日本を代表する企業に選定した225社の株価を実質、「単純平均」したものだからで、TOPIXは「時価総額加重平均」と呼ばれる計算方法を採用しているからです。

つまり、単純な平均では値がさ株(株価の高い銘柄)の影響を強く受けることになり、会社の大きさも加味した「時価総額加重平均」のほうが日本株全体の値動きをより正確に反映できるため、TOPIXがベンチマークとして重宝されているのです。

世界中の投資家が注目する株価のベンチマークとは?

TOPIX以外では、「Russell/Nomura日本株インデックス」もベンチマークとしてよく使われます。これは東証1部だけではなく、東証2部やマザーズ、JASDAQなど、全市場の浮動株調整時価総額上位98%の銘柄が指数算出の対象になっており、TOPIX以上に日本株全体の動きを幅広くとらえています。

中・小型の成長株や割安株などに投資するアクティブ型の日本株ファンドでは、同指数の中の「Russell/Nomura 中小型インデックス(配当込み)」をベンチマークに採用するケースが多い傾向です。また、海外の株式を対象にしたファンドでは、指数作成で世界的な影響力を持つモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)が算出する「MSCI コクサイ インデックス」などがベンチマークに採用されるケースが多くなっています。

MSCIでは、時価総額や流動性、浮動株比率を基準に年4回、2月、5月、8月、11月に指数構成銘柄の入れ替えを行っており、新たに採用される銘柄には世界的な注目が集まります。

債券やREITのベンチマークになる指数

一方、国内外の債券を投資対象にしたファンドでは、債券インデックス作成の権威といえる米国シティグループの「シティ世界国債インデックス」や、そのサブ指標である「シティ日本国債インデックス」がベンチマークになるケースが多くなっています。さらに不動産投資信託(REIT)の場合は、アメリカ系の格付け会社S&Pグローバル・レーティングの「S&PグローバルREIT指数」のベンチマーク採用例が目立ちます。

このようにファンドのベンチマークとなっている指数やサブ指数を見れば、そのファンドがどんな投資対象へ運用を行っているかがわかります。特にアクティブ型ファンドの場合、どんな金融商品に投資して、ベンチマークを上回るパフォーマンスを目指しているかが一目瞭然です。自分が保有しているファンドとベンチマークを調べてそのパフォーマンスを知れば、運用への意識が変わるに違いありません。

(提供:フィデリティ投信