「AIが仕事を奪う」という話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。ロボットやAIの急速な技術発展に伴い、最近ではこうした不安に関する議論が増えているようです。ここでは、議論のきっかけとなった論文の内容に触れながら、ロボットやAIと仕事の関係について解説します。

現実味を増した「AIが人間の雇用を奪う」未来

AI
(画像=Shutterstock)

オックスフォード大学の准教授であるマイケル・オズボーン氏が2013年に発表した「雇用の未来」は、世界的に話題となった論文です。その理由は、多くの人がばく然と感じていたAIに対する不安を具体化したからでした。

オズボーン氏が光をあてたのは、AIによって自動化される仕事の範囲です。米国の雇用者の47%が10年後にはAIに置き換えられると予測し、職業別に置き換えられる可能性も示しました。たとえば、テレマーケターや司書などが99%、簿記・会計・監査事務員や保険の審査担当などは98%置き換えられると予測しています。

このように、はっきりと「AIは人間の雇用を奪う」という予測を発表したことで、論文「雇用の未来」は世界的な反響を呼びました。

奪われるのはホワイトカラーの仕事

もう一つ、この論文が与えたインパクトは、「中間層の仕事がなくなる」と分析したことでした。

以前から、ブルーカラーの仕事はロボットに置き換えられつつありました。自動車やプラスチックなど、製造業の工場を見ればわかるとおり、以前、人間がやっていた作業の多くはロボットが担うようになっています。こうした変化は決して最近のものではなく、日本では高度経済成長期からロボットの導入と国産化が開始されていました。

産業用ロボットは主に工場で活用されていたことから、大半のオフィスワーカーにとって、ロボットが自分の仕事を奪うような未来は現実的ではなかったはずです。

しかし、ロボット開発の進展やAIの発達によって、知的能力でも人間を凌駕することが明らかになっており、囲碁のAIである「AlphaGo」が、2016年に囲碁の名人を打ち破ったことはその象徴的な出来事だったといえるでしょう。

オズボーン氏は、ホワイトカラーが担ってきた事務的な作業やルーティンワーク、さらには判断力を必要とする仕事までもがAIに置き換えられると考えています。その結果、中間層が減少し、多くの下流層と一部の上層とに二極化すると予測しました。

そして現在、この予測は少しずつ現実化しつつあります。2010年代に入って、定型業務を代替するソフトウェアロボットの技術「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」が、オフィスでも普及し始めたのです。これによりあるメガバンクは、RPAによる業務自動化で約200の業務、40万時間の業務量削減を実現したと2017年11月に発表しました。

ロボットやAIは、もはやビジネスを効率化する単なるパートナーではなく、多くのビジネスパートナーにとって、どんなライバルよりも強力な競合相手という存在になってきているのです。

「奪われない仕事」の見つけ方

それでは、ロボットやAIによって奪われない仕事とはどのようなものでしょうか。オズボーン氏は、前掲の論文で「レースに勝つために、労働者はクリエイティブなスキルや社会的なスキルを身につけなければならないだろう」と結んでいます。置き換えられる可能性の低い職業の例としては、セラピストやヘルスケアソーシャルワーカー、小学校教師、人事管理などを担うHRマネージャー、外科医などをあげています。

キーワードとしては、創造性や社会性、高い専門性、マネージメント能力ということになるでしょう。長く仕事を続けるためにも、こうした能力にフォーカスすることが今後、ビジネスパーソンにとっては重要となりそうです。

(提供:フィデリティ投信