新しく事業などをはじめる際には、それ相応の資金が必要です。従来は自分で資金を用意する、または銀行からの融資によって準備していましたが、近年は「実現したいこと」に対して不特定多数の人から資金を集めるクラウドファンディングという新たな資金調達方法が広がりはじめ、企業だけでなく国立大学などの教育機関や、個人の夢の実現にも利用されています。
ここからは資金調達の新しい方法「クラウドファンディング」について紹介します。
アイデア次第のクラウドファンディング
クラウドファンディングとは、実現したいさまざまなアイデアやプロジェクトに対してインターネットを通じて不特定多数の出資者を募り、資金を集める方法を指します。
クラウドファンディング以前は、お寺や神社などで特定の建造物の修繕や改修、再建のためなどに地域住民から広く資金を集めるなど、同じような方法は存在していましたが、不特定多数から資金を集めるのは容易ではありませんでした。
それが現在ではクラウドファンディングという方法が登場し、インターネットを利用することで居住地域に関係なく広範囲に情報を伝え、資金を集めることが可能になったのです。
その波は外食産業や不動産、ファッション業界などさまざまな業界に広がり、資金調達の方法として活用されています。身近な例としては、第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞にも輝いた映画「この世界の片隅に(片渕須直監督・脚本)」がクラウドファンディングによって制作費を調達しているなど、アイデアや目的の内容次第で多くの資金を調達し、目的を果たしています。
リターンが異なるクラウドファンディングの種類
クラウドファンディングには種類があり、リターンの違いなどそれぞれに特徴があります。各々の違いや特徴をみていきましょう。
●寄付型
社会貢献活動、慈善活動を行なっている人や団体が多く利用している仕組みです。絶滅危惧種や文化財などの保護、災害後の支援などを目的としたものが多く、出資者は寄付金として資金提供し、リターンは発生しません。
●購入型
パトロンのようなかたちでプロジェクトやイベントに出資し、お返しとして商品やサービスなどを得ることができます。新しいタイプのジーンズの製造や地域活性化本の出版、地域イベントの開催、こだわりのカフェをつくるなど、ファッションやイベント、地域活性、飲食関連、ゲーム、IT、ビジネスなど幅広い業界で活用されています。
●融資型
海外では「ソーシャルレンディング」「P2Pレンディング」とも呼ばれている仕組みです。不動産関係が多く、少額から不動産投資が可能です。そのほかにも太陽光の再生可能エネルギーなどもあり、出資金を貸付して利子というかたちでリターンを受け取ります。
●事業投資型
地元の食材を使った特徴ある食品や希少価値のある技術を使った工業製品など、プロジェクトに対して出資し、成果に応じて利益から配当を受け取ります。
●株式型
AIやドローンを活用した最先端技術、予防医学の研究など、企業の中でも非上場企業に対して出資者を募り、出資分に応じた株式(非上場株)を発行する仕組みです。業績によっては配当を受け取れる可能性があります。2015年5月に改正金融商品取引法が施行されたことにより解禁となった、新しいクラウドファンディングです。
急成長するクラウドファンディング市場
国内クラウドファンディングの市場は、新規プロジェクト支援額ベースで2016年度には前年度比96.6%増(745億5,100万円)であり、2017年度には市場規模が前年度比で46.2%増(1,090億400万円)を見込むなど、市場規模は急激に拡大しており、まだまだ拡大基調と見られています。
アイデアがあっても資金難で実現が難しかったプロジェクトも、クラウドファンディングの活用によって資金調達が可能となっています。出資者は共感するプロジェクトや必要性を感じるプロジェクトなど、自分が納得する事業に対して気軽に出資することができるのです。個人投資家が増えることで、クラウドファンディング市場はまだしばらく拡大していくことでしょう。
(提供:フィデリティ投信)